音楽座ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』│岡崎かのん&梁 世姫 インタビュー

写真左から)岡崎かのん&梁 世姫

音楽座ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』が、2026年5月より18年ぶりに上演される。福山庸治氏の同名コミックスを原作に、女性が作曲家になれなかった時代に髪を切り落とし、作曲家として生きた女性の物語で、1991年に初演が行われて以来、再演や東宝製作によるライセンス上演も行われてきた。
公演に向けてオーディションと稽古が進む中、モーツァルト役の岡崎かのんと梁 世姫(やん せひ)にインタビューを行った。

――お稽古の手応えはいかがでしょう?

岡崎 まだまだといったところですかね。お稽古が始まったばかりですし、『マドモアゼル・モーツァルト』に携わるのが初めてのカンパニーメンバーがほとんどなので、それぞれが課題に直面しながら作り始めているところです。

 すごく貴重な経験をさせていただいています。できているものをなぞるのではなく、作っては壊しての繰り返し。工作みたいな感じで、すごく新しくてユニークなものが出来上がるんじゃないかと楽しみです。

――梁さんは大学を休学してオーディションに挑まれています。大きな決断だったと思いますが、参加を決めた理由というのは?

 舞台に立つチャンスを逃すわけにはいかないと思ったのが決め手です。大学は何歳になっても行けますし、神様が「今だ!」と言ってくれているんだと思いました。

――台本を読んでどんな印象を受けましたか?

岡崎 モーツァルトの衣装のように、青い光で包まれたような印象を最初に受けました。音楽座が伝えたいメッセージ、私たちが作品に込めている想いが、音楽や物語と共に爽やかな風となって届いたというのが、台本を読んだ時の率直な感想です。

 モーツァルトという人物にすごく共感できる部分もあるし、私もこう生きたいと思う部分もある。すごく深い作品ですし、代表の相川タローさんが何度も脚本を書き直していらっしゃるので、読むたびに受け取り方が変わっていくのが面白いです。

――お二人が本作に感じる魅力を教えてください

岡崎 モーツァルトはこれでもかというくらい自分勝手で、良い言い方をすると今を生きていると思っています。それがモーツァルトの一番の魅力。その中でいろいろな壁にぶつかって成長していく姿を作品の中で見せられたら良いんじゃないかと思っています。

 同じ意見ですが、“自分が好き”というところですよね。モーツァルトはすごくポジティブで、自分の選択に誇りを持っているし、自分を信じている。それが人として良いなと思いますし、自分勝手なところにつながっている部分でもある。その明るさや奔放さをうまく表現したいです。

――本読みで大切にしていることはなんですか?

 最初は「ちゃんとやらなきゃ」という思いが強かったんです。やっぱり、大学を休学して日本に来て、最初の本読みはすごく緊張していて。でも、読み進めたり、かのんさんに色々お話を聞いたりする中で、「自由にやろう」という思いが強くなりました。

岡崎 私にとってモーツァルトという役は大きな挑戦です。ありのままの私で本読みをした時に、あまりにも成立しないという壁にぶち当たりました。なので、今は相手役とのコミュニケーションを信じてぶつかり、モーツァルトがどんな人物なのかを掴んでいきたいと思っています。

――現段階で、刺激を受けていることやお互いの魅力はいかがでしょう?

岡崎 世姫は本当に私と真逆の人間で、私が想像するモーツァルト像にピッタリなんです。普段喋っている時も、「かのんさん、これはこう考えるべき。今日も私は可愛いって言ってごらん!」とか言ってくれて(笑)。今までの私にはなかった新しい感性とポジティブマインドを引き立ててくれます。お芝居を見ていて「こうやって自由にできたらいいな」と羨ましくなる部分もありますし、「私ならこれを参考にどう表現するかな」と日々学ぶことができています。

 真逆と言っていますが、かのんさんも結構おどけていると思います(笑)。初対面の時はすごく真面目なお姉さんだと思ったけど、仲良くなってみたらすごく気さくに接してくれる。かのんさんのモーツァルトはすごく自由だけど、私とは違う視点から切り込んでいくのですごく勉強になります。かのんさんのモーツァルトを見ると、「そういうやり方があったか!」って悔しくなる。色々な引き出しを開けてもらっていて、ありがたいです。

――『リトルプリンス』に引き続き、振付家・KAORIaliveさんとのタッグです

岡崎 時間を重ねれば重ねるほど、KAORIaliveさんと音楽座のコラボレーションって最強だなと感じています。私たちの表現したい世界観、代表の言葉の一つひとつがKAORIさんの解釈で振付された時の高揚感が本当に素晴らしくて。今回は『リトルプリンス』とはまた違うテイストになっているので、早く皆さんにご覧いただきたいなと思っています。

 メッセージがビジュアルで見えるというのが新鮮です。ダンスは上手いか下手か・綺麗かどうかみたいなイメージで、頂いた振付を正確に踊るものだと思っていたんです。でも、KAORIさんは振り入れのあとで「じゃあこれを膨らませてきてね」とおっしゃる。それにすごくハッとしました。KAORIさんが正解なんじゃなく、そこに自分の解釈を入れて新しいものを作っていく。それが音楽座と融合して、大きな創造ができるのがすごく面白いです。

――音楽は小室哲哉さんです。聞いた印象と実際に歌った印象はいかがでしょうか?

岡崎 新しいですが、初めて聞いた時から違和感なく体に入ってきました。最初とラストで同じテーマが使われているんですが、初めて触れる音楽という感じがしました。ミュージカル的でもあり、現代的でもあり、クラシカルな印象もあることに感動しました。

 アートな感じがして、中毒性がありますよね。歌っていても新しいです。色々なジャンルが混ざっているからこそ、歌い上げることもできるし、しっとり歌うのもポップに歌うのも成立する。どう歌うか模索しているところです。

岡崎 ミュージカルって楽曲をちゃんと歌い上げるイメージがあったんですが、歌っていることに自分が気づかないくらい自然に歌える感覚があります。それが新鮮で楽しいです。

――お二人のお気に入りのシーンを教えてください

岡崎 モーツァルトが女性であることを妻のコンスタンツェに打ち明けて、コンスタンツェはショックを受けて逃げてしまうけど、戻るという選択をしてくれる。このシーンが物語の一番の核になるんじゃないかと思っていて。ここから本当に始まっていく感じがするんです。一連のシーンがどうなるのか、自分でもまだわからなくてワクワクしています。

 作曲シーンが何回か出てくるんですが、作曲中のモーツァルトの様子がそのまま音に現れています。音とモーツァルトとセリフが全て連動している感じがするので、シーンごとに区切ったときと全体を通してみたときに違う表現ができる気がしていて。作曲という工程の中での変化も面白くなりそうだと思っています。

――ライセンス公演をきっかけに、オリジナルを見てみようと思っている方もいると思います。音楽座ならではの魅力、オリジナル作品を手がける強みはどう感じますか?

岡崎 今回はKAORIaliveさんが振付を担当してくださっています。そこも含めて、18年ぶりに全く新しい作品になるのがオリジナルで作っている一番の強みだと思っています。東宝さんでご覧いただいた『マドモアゼル・モーツァルト』ともまた違う作品になると思いますし、今上演するからこそ、今伝えたいメッセージをみんなで考えて作品に込めたいと思っています。

 音楽座は本当に自由度が高くて、カンパニーの皆さんも本当に個性豊かではちゃめちゃです(笑)。だから、キャストの組み合わせによって全く違う化学反応が起きるし、キャラクターや作品から受ける印象も全然違うものになると思います。色々なキャストのパターンをぜひ見ていただきたいです。

――個性豊かということですが、カンパニーのエピソードなどはありますか?

岡崎 基本、全員変わっています(笑)。もちろん仕事をする上ではちゃんとしているんですが、自分も含めてめちゃくちゃなもののぶつかり合いという印象で、そこに魅力を感じます。『マドモアゼル・モーツァルト』の登場人物もそうですが、みんな良い意味でちゃんと自分を生きている。だからこそオリジナル作品を作れるんだと思います。

 一人ひとりがすごく芯を持っていて強いです。皆さん本当に正直ものなので、なんでも言うんです(笑)。音楽座は、絵の具を混ぜて綺麗にすると言うよりは、全部ぶつけて花火みたいな彩りを作っている感じ。普段の稽古場でも、線香花火みたいな感じで小さな爆発がいくつも起きているのが面白いし、私も遠慮なくガツガツいこうと思えます。

――現時点で、この作品を通してお客様に一番伝えたいメッセージはなんですか?

 「自由に生きよう」と言いたいです。この作品には色々なテーマがありますが、私が一番共感して、伝えたいと思うのは、「生きるのはどう言うことか」という、ちょっと哲学的な部分です。例えば、お客様が帰る時に「ダイエットしてるけど、食べたいから今日はラーメンを食べて帰っちゃおう」とか(笑)、自分の人生を楽しんで、自由に生きていこうと思えるような作品にしたいと思います。

岡崎 ご覧いただいた皆さんの中に残ったものがメッセージとして伝わったら良いなと思いますが、私が一番共感している・惹かれている部分は、「自分の人生を選択していく」こと。人生をまっとうしていくことで、本当の意味で自分自身の人生を生きられるんじゃないかと思っています。

――最後に、皆様へのメッセージをお願いします

岡崎 音楽座ミュージカルにちょっとでも興味があったら、本当に見ていただきたいです。オリジナルだからこそ変化していくというお話をしたように、この『マドモアゼル・モーツァルト』は今回だけのものですし、見ていただいた後で心に残るものが何かあるはず。そこは私が保証します。みんなで覚悟とプライドを持って作り上げるので、「ちょっと迷っているな」という方も、私の言葉を信じて音楽座ミュージカルの作品を見にきていただきたいです!

 「見にきてください!」が一番です。キャストによってもコンディションによっても、毎公演全然違うものになるので、ぜひ何度も見ていただきたいですね。見ていただいたら、きっとあなたの人生が豊かになると思います。この作品を通して生き方が変わると思うので、ぜひ足をお運びください。

取材・文・撮影/吉田沙奈