S・S・ヴァン・ダインの最高傑作と呼び声高い『ビショップマーダーケース』が2026年4月、舞台化。脚本・演出を須貝英、総合演出を野坂実が務める。
主人公の素人探偵ファイロ・ヴァンスを演じるのは小南光司だ。ミステリーが大好きだと語る小南にとっては、初の探偵役となる。今回はそんな小南のインタビューをお届け。初の探偵役へかける意気込みや、総合演出・野坂との作品づくり、ミステリー愛を語ってもらった。
――初の探偵役に挑まれます。出演が決まっていかがでしたか?
ミステリー作品が好きなので、また(総合演出の)野坂さんのミステリー作品に出演できるということで「やった!」と。さらに今回は、初めての探偵役。やっぱり役者であれば一度は憧れを抱く役柄ですよね。かつ、S・S・ヴァン・ダイン原作作品で主演を任せていただけるということで、夢のような気持ちでした。
――作品の印象を教えてください。
原作小説はまだ読めていないんですが、脚本・演出の須貝英さんが以前上演された舞台版の映像や台本を拝見しました。やっぱり探偵役って魅力的だなと。ファイロも飄々としていてつかみどころがないのに、核心を捉えている。そこの緩急をつけて演じたいなと思いました。
――ファイロはご自身の中にある探偵のイメージ像のままでしたか? それとも違いましたか?
ミステリーの探偵といえば、やっぱりシャーロック・ホームズが最初に出てくる。その中でも、大好きなロバート・ダウニー・Jr.さんが演じたシャーロックが最初に思い浮かびます。もう1人、ミュージカル『憂国のモリアーティ』シリーズでシャーロック・ホームズを演じる平野良さんのイメージも強いですね。どちらも、飄々としていて気怠げだけど、スパッと決めるかっこよさがある。ファイロはそこをベースに、「なんだこいつ? 依頼はこなしてくれそうだけど、依頼したらめんどくさそうだな」という印象を受けました。実際にビジュアル撮影でも、「とにかくめんどくさそうな男」とオーダーがありました。黄色いコートに、トリコロールカラーのシャツを着ている男ですよ。絶対、普通じゃないじゃないですか(笑)! 自由度も高く演じがいのありそうな役だなと思うと同時に、それが見た目だけではなく、本質として表現できないといけないなと思いました。
――そういった探偵像は、小南さんご自身と重なる部分はありますか?
自分で言うのはあれですが(笑)、頭の回転は速い方だと思います。ファイロはさらに言葉遊びも楽しんでいるようなところがある。僕は先に結論を言いたいタイプで、言葉遊びをすることはあまりないので、そこはファイロが羨ましいです。内向的な僕からすると、誰に対してもズカズカ踏み込んでいけるのも羨ましい。稽古場でも人見知りしてしまって、話しかけにくいとよく言われるので(苦笑)。今回の座組はほぼ初対面で、相棒となるサイモン・ブレイ役の中本大賀くんもはじめましてです。どういう関係性が築けるかはまだ未知数ですが、僕がボケたら中本くんがツッコんでくれて……という関係になれるよう、稽古期間で頑張りたいと思います!
――初めての探偵役となりますが、ご自身で相性はいいと感じますか?
犯人側を演じるのはめっちゃ楽しいんですよね。僕が演じたのは、前述したミュージカル『憂国のモリアーティ』で人間狩りをする猟奇的な役で、これがもう気持ちよくて(笑)。犯人側の立場で、事件を推理するシャーロックを観ていたわけですが、平野良くんがすごいんですよ。例えば部屋を見てまわるときに、一つ一つセリフの伏線を貼っていく。それを見て、お客さんに丁寧に提示できる役者になりたいなと思ったので、今回は探偵役として、辻褄の合うお芝居ができたらいいなと思っています。相性は分かりませんが、好きな役柄なのですごく楽しみです。ただ、一体どれだけ喋るのか……。前回、須貝さんが手掛けた作品の台本を拝見したら、すごいセリフ量だったので、そこだけが心配です(苦笑)。
――総合演出の野坂さんとは過去2回、ご一緒されています。野坂さんの演出の印象を教えてください。
立ち位置や登場人物の内面の深堀りなど、緻密に一緒に作ってくださる方という印象です。セットや小道具、照明といった環境も含めて、野坂さんの中では最初から絵が見えているんでしょうね。そこにプラスして稽古での芝居を考えてくださるので、結果的にミステリーではあるけれど楽しい作品になるんじゃないのかなと。ミステリーってやっぱり難しいんですよね。視線一つがミスリードにもなり得ますし。もちろんどの作品でも動きに意味を持たせているとは思いますが、ミステリーではより意味を持ってしまう。さらに、最後の結末に向けての辻褄合わせみたいなものを細かく組み立てていかないと、事件解決に向かえなくなってしまうので、この作品はとくに意味のない動きはしちゃいけないなと思います。
――脚本・演出の須貝さんとは今回初めてご一緒するそうですね。どんなことが楽しみですか?
野坂さんが総合演出として入られている中で、須貝さんがどんな演出をつけてくださるのかすごく楽しみです。新しい作品や役に出会うのはもちろんなんですが、新しい演出家さんに出会うのもすごく好きなんですよね。まだじっくりお話する機会がないのですが、長くミステリー作品の演出をされている方ということで、どんな作品づくりになるのか、未知だからこそ楽しみです。
――お話を聞いていて、かなりのミステリー愛をお持ちだなと感じました。とくに好きなミステリー作品はありますか?
ミステリー愛と言われると恥ずかしいですね(照)。でも大好きです! ロバート・ダウニー・Jr.さんをきっかけに触れた『シャーロック・ホームズ』をはじめ、レオナルド・ディカプリオさんの『シャッターアイランド』、東野圭吾さんの小説、邦画では妻夫木聡さん主演の『愚行録』が一番好きです。めっちゃ面白いんですよ。ただ、ラストはすごくモヤモヤする。その感覚が大好きで。事件は解決するけど、人間関係のわだかまりだったり、登場人物の抱えているものだったり、そういった余韻が残っていてほしい。ワインも渋みが残る濃くて重いものが好きだし、絵画も気持ちが引きずられる暗いものが好きなんです。そういう暗くて重いテイストが好きなんですが、心は明るいので心配しないでください(笑)。
――座長として挑まれる本作、楽しみにしています。最後に、公演を楽しみにしている読者へのメッセージをお願いします。
ファイロ・ヴァンスはヴァン・ダインが自身をモデルにしているとも言われていて、それだけ思い入れのあるシリーズだと思います。そんなファイロを大切に演じつつ、初めて共演するカンパニーの皆さんと化学反応を起こしながら、また新しい『ビショップマーダーケース』をお届けしたいと思います。僕のおすすめとしては、まずは原作を読まずに舞台を観て、その後に小説を読んで、二度三度と作品を楽しんでもらえたら嬉しいです。新生活の始まる4月最初の作品が不穏な空気漂うミステリーとなりますが(笑)、心地よいファンタジーをお届けできたらなと思っているので、ぜひ博品館劇場までお越しください!
インタビュー・文/双海しお
