ダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 21st STAGE『ラヴ・オール!!』が東京・大阪・愛知の3都市で上演される。
J-POPにダンスとストーリーをのせた舞台を創り上げ、近年は「EXPO2025大阪・関西万博」、「嵐」や「GRe4N BOYZ」といったアーティストのライブ、宝塚歌劇団や2.5次元など様々な演劇作品、TV・映画など、幅広く活躍している梅棒が、2021年に上演した『ラヴ・ミー・ドゥー!!』をベースに再構築した本作は、ガールズグループオーディションに参加する姉妹を中心に、そこで繰り広げられる競争や、彼女たちを応援するファン、そして姉妹の両親のすれ違いなど、様々な人間模様を描き出す。
出演者は梅棒メンバー8人に加え、モーニング娘。OGの石田亜佑美、AKB48のOG・村山彩希をはじめ、多彩なゲストが顔をそろえる。本番迫る稽古場にて通し稽古を取材した。


物語は、アイドルに憧れる姉・紅莉(村山彩希)と、そんな姉を全力で応援してきた妹・瑠花(石田亜佑美)が軸になっている。両親の事情で離れて暮らしていたふたりが、とあるガールズグループオーディション番組で再会する。デビューを目指して競い合うライバルたちは、インフルエンサー、歌劇団出身者、元柔道選手、日本文化を愛するアメリカ出身者など個性豊かだ。オーディションの合格を目指して火花を散らし合う候補者たちの中で、姉妹が互いを思いやり励まし合うシスターフッドの物語に心和まされる。石田は、気弱で優しくて姉のことを全力で推している瑠花をみずみずしく健気に演じ、村山は妹思いで活発な紅莉を安定感のある演技で頼もしく見せる。
姉妹の父・桔平(梅澤裕介)が、推し活について学ぼうとアイドルショップを訪れ、そこの店員たちと意気投合して推し活のことを知っていったり、それぞれ応援しているメンバーが違っても共通の話題で盛り上がり、仲間意識が芽生えていったりする過程もほほ笑ましい。推しのことを話しているときの彼らはキラキラしていて、推し活をすることで幸福感や活力を得られることが伝わってくる。不器用な桔平が最初は戸惑いながらも娘のために未知の世界へ一歩踏み出す姿は、思わず応援したくなる。アイドル側からの視点だけでなく、ファン側の視点を描くことで、作品と観客の距離がぐっと近くなると感じられた。
一方で、姉妹の母・椿(多和田任益)と桔平は、娘たちを応援したいという目的は同じはずなのに、気持ちがすれ違い素直になれず、顔を合わせればケンカになってしまう。バリキャリの椿は他を圧倒するパワフルさがあるが、娘をまっすぐに愛していることが伝わってくる。桔平と椿、それぞれが娘の推し活をする中で、夫婦の距離は近づくのか、それともさらに離れてしまうのか。夫婦関係、親子関係といった「家族」の物語からも目が離せない。
終盤にオーディション参加者が披露するパフォーマンスは、ガールズグループのコンサートを見に来た気分になれるくらい魅力的だ。それぞれ個性がありながらも、グループで息の合ったところも見せ、アイドルの輝きを放ってまぶしく感じられる。そこで圧倒的な存在感を放つのが、やはりアイドル経験者の石田と村山だ。観客に自分を見せる技術が身についているのだろう、何か特別な動きや表情をしているわけではないのに、微妙な顔の角度や視線の置き所ひとつで、自然と注目を集めるオーラが出ている。使用される楽曲も、キラキラ王道アイドルポップス系からヒップホップ系、ミクスチャー系など幅広いジャンルで、アイドルの表現する世界の奥深さを物語っている。アイドル物ということもあって衣裳やウイッグのチェンジもかなり多い。ストーリーを彩る様々なビジュアルも見どころのひとつとなっている。
もうひとつ、話の肝となるのが“AI”だ。オーディションにはAI審査システムが導入され、オーディションを主催するBREED(滝澤諒)と並んでAIロボットが登場する。もはや現代人とは切り離せない関係となりつつあるAIは、エンターテインメントの世界でも取り入れられ始めているが、どこまでAIを使用するのか、という線引きについてはまだまだこれから議論が必要になってくる。AIが介入する深度によっては、クリエイターや俳優といったエンターテインメント従事者のアイデンティティにも関わってくるし、人間の心を動かすエンターテインメントのあり方の是非が問われる。このAIロボットが物語にどう関わってくるのかにもぜひ注目してもらいたい。
「アイドル」という華やかなテーマで、全体的にキラキラとした楽しい空気感に包まれているが、その中には嫉妬やわがまま、エゴなど、人間の欲望も渦巻いている。決してキレイなだけではない厳しい世界の中で、人が人を思う心や信頼や絆といった、AIにはないものを武器にして姉妹たちがどのように乗り越えていくのか。「梅棒流ハートウォーミングコメディ」と銘打たれた本作、人間のハートの部分を強く感じられる作品であることは間違いない。そして、今回もバラエティ豊かで濃いキャラクターがずらりと居並ぶ“梅棒ワールド”の中で、自分の推しを見つけて、推し活をするような気分で作品を楽しんでもらいたい。
取材・文/久田絢子
撮影/角田大樹








