ついに開幕!フライングシアター自由劇場 第7回公演 バーレスク音楽劇『豪華客船タイクツニック号沈没』コメント、ゲネプロ舞台写真が到着!

2026.06.15

フライングシアター自由劇場 “串田和美” と 劇団「はえぎわ」 “ノゾエ征爾” が共作で挑む!
『豪華客船タイクツニック号沈没』が吉祥寺シアターで開幕!

串田和美が追い続けたバーレスク音楽劇がノゾエ征爾を迎えることで新たな形となって立ち上った!
異なるカンパニーを担い、演劇界を走り続ける二人が、ひとつの舞台を“共同”で立ち上げる。
さらにそこへ、JAZZ ピアニスト・小林創による作曲・編曲が加わり、豪華客船タイクツニック号は動き出す!
演じることも、歌うことも、音を鳴らすことも―すべてを俳優たち自身が引き受ける、演劇に様々な要素を取り入れた、ごちゃまぜの物語のオムニバスが吉祥寺シアターで開幕!

作品概要

フライングシアター自由劇場の第七作目となる本公演は、主宰・串田和美による、久しぶりのバーレスク音楽劇となる。
キャバレー、バリエテ、寄せ芸――それらとほとんど同義語として使われながら、19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパに広がった大衆芸能“バーレスク”。
それは単なる娯楽にとどまらず、既成の権威的芸術を壊そうと、多くの芸術家たちが参加した創造の運動でもあった。
この“バーレスク”は串田和美が長年にわたり追い続けてきた演劇表現のひとつでもある。
俳優自身による生演奏や歌、身体表現。
いくつかのオリジナルの物語を内包し、雑多で、奔放で、実験的な企みを詰め込んだ本企画は、串田が1990年代、シアターコクーンで毎年末に上演していた『ティンゲルタンゲル』のスタイルを踏襲しつつ、21世紀的新たな思考を込めた“バーレスク” 的演劇を目指している。

コメント

<串田和美>

『豪華客船タイクツニック号沈没』の初日をあけ、大喝采を頂いた。もう数え切れない程、舞台の初日をあけてきたが、毎回ドキドキし、この喝采に毎回感動して、新しい勇気が湧く。良かったー!
明日から又もっと良い芝居をしよう!!

劇評

生演奏と不条理演劇、バーレスク

別に三題噺じゃないが、観終わってふと三つの言葉が思い浮かんだ。もちろん脈絡はないのだが、不条理な匂いプンプン、ファンタスティックな世界でありながら、現実的でシリカルなシーンやセリフが満載、生演奏と相まって見事に三つが絡み合い、トータル・エンタテインメントとして、このバーレスク音楽劇の肉となり血となっているのである。
串田和美、ノゾエ征爾の作・演出&出演の2人による前説に続いて、登場したのは見覚えがあるブカブカのお揃いの黄色い燕尾服の「ペリカン党」の面々。奏でるは〈Over the Waves〉(波乗り越えて)、12人(+音楽の“はじめとおおじ”の2人)編成と小ぶりになったものの、アクターズバンド(ここ大事!)の演奏は明らかに自由劇場サウンド。何年ぶりだろうか、いきなりのクシダ・ワールドに引き込まれて舞台は展開する。
七回目となるフライングシアター自由劇場の今回の趣向は、串田とノゾエの協働作業で2人で3本の戯曲を書き、オムニバス形式で繋ぎ合わせた構成。表題の「豪華客船タイクツニック号」を舞台に、シアターコクーンで年末恒例だった《ティンゲルタンゲル》でも登場していた串田作の『怪盗ジゴマ』が怪盗乱魔(関係ないけど、これ78年の野田秀樹が書き「いとうらん〈伊藤蘭〉主演の作品名」)の活躍を描き、今作のために書き直したもの。加えて串田の書き下ろした不条理劇『混沌の部屋』。そして、ノゾエ作が自身の過去作に登場させていた「カモメたち」に新たな不条理臭
を加味した『シリーズ・カモメかもね』の3作を、不思議な懐かしさと詩情をミックス、生演奏とコント風のバラエティでまとめた構成のセンスが光り、自由劇場風の味付けはキッチュの魅力に尽きる。まさに豪華船の、また明日をも知れぬカモメの身を案じながら、演劇ならではのまがいものの不可思議なパワーが随所に展開される。
そして舞台に充満するのは「タイクツニック号」のネーミングにふさわしく、退屈という無意味とも思われていることのなかに潜んでいる豊かさが随所に顔を出す。今やスマホ全盛、スマホさえあれば、退屈なんて知らないよという時代に、その現実に敢えて挑戦し、退屈こその豊かな贅沢について考える芝居、と言ってはちと新劇的なアプローチかもしれないが、プログラムで「無駄とか退屈とか、意味がないと思われていることの中に残っている豊かなものを、芸術という言葉を使わずに伝えたいな」という気持ちが串田にあるようなので、容赦願いたい。
三本柱に登場してくる人たち(またはカモメたち)は互いに繋がりがありそうでいて、まったく無関係のようでもあり、ファンタジー世界の住人のようでもありつつ、妙に現実味のあるシニカルな言動をしたりもする。そんな物語が、役者たちの本格的な楽器演奏を交えた音楽で繋ぎ合わされていく、不可思議でかなり賑やかな音楽劇だ。
キャストはフライングシアター自由劇場にはお馴染み、これが4度目の出演となる大空ゆうひのコメディエンヌぶりにますます磨きがかかって歌声とともに魅力倍増。毎公演皆勤の串田十二夜のジゴマの早替わりに加え、イタに着いたヒーローぶり。元オンシアター自由劇場の大森博史と真那胡敬二、内田紳一郎に加え、初参加組では宮下今日子の涙ぐましいばかりのラッパ隊で放つぶっ飛んだ女優ぶりにも拍手。
串田の芝居は何年見続けても毎回必ず新しい発見がある。マンネリも新しい発見にしてしまう。今回はノゾエとの協働でさらなる発見があった。そのひとつが「アングラが伝統になった」ということだろうか。アングラというより、60年代に台頭した小劇場運動は日本の現代演劇の姿を大きく変えて、日本の土壌に根ざしたオリジナリティに富む日本の現代劇を作り出したが、半世紀以上経て、次代に繋げる伝統になったことを串田が証明した舞台が『豪華客船タイクツニック号沈没』ではないだろうか。
退屈を描いて、こんなにワクワクした演劇ってなかったよね。

(文・佐藤優)

ゲネプロの様子