劇団スポーツ・田島実紘による個人企画「満広場」始動!
傷口から溢れ出したのは血でなくリズムだった。新たな切り口で強迫観念との向き合い方を描く
『溢れるリズム』は、人と人とを隔たるものをリズムというものを用いて表現し、そこから社会を描こうという試みの演劇作品である。人の歩く歩調、会話のスピード、料理、セックス、経済、あらゆる人間の活動・労働にはリズムがあり、そうした各々のもつペースをリズムという言葉で定義することで、そのすれ違いを描く。
またここでのリズムは、自分の傷を知覚すること、すなわち自分自身を知覚することとしても繋がる。リズムというのは矯正できるものでもあり、大縄跳びのように回っている社会にえいっと、自分のリズムを矯正して入れる人ばかりが重要視され、それ以外の人はこの社会から弾き出されていく。実際には口語以外にも、肉体言語やあらゆるコミュニケーションが存在しているにも関わらずそれらは無視され、また矯正された人たちの中ですら時に無自覚に歪みが入っていく。
『溢れるリズム』では、あらゆる角度からの社会的抑圧を受けた主人公が突然自分の中で一つのリズム(音楽)が聞こえてきて、これまで平然とできていた生活や仕事がたち行かなくなることから始まる。自分のリズムが矯正されていたことを自覚し、受けてきた傷が表層化していくことが、リズムが聞こえてくるように表現していく。
コメント
作・演出/田島実紘
信頼している制作に、今から僕の言うことに絶対にノーと言ってはいけません、というパワハラ上司も青ざめる一言を添えて、この団体名は満広場(みつひろば)にしますと決めました。満たされない人達が集まって、満たされる広場になる、みたいな大義名分はありますが、自分のみつひろという名前を文字りました。演劇をやって長くなりますが、本当に恵まれていることに、始めた当初から仲間がたくさんいました。一人になることは無かったです。だからこそと言いますか、そろそろ自分の言葉で語らなくてはいけないと切実に感じ、自分の名前を冠につけたのですが、本当に怖いしすでに後悔しています。これまた信頼している俳優に、みつひろばに出るって発語したくないって言われました。本当にそう、名前がダサすぎる。
自分の言葉で語るということは、誰かを傷つけるということだとも思っていて、だからこそ自分だけでも納得できるものを作りたいです。そしてそれが、他でもないあなたの心に届くことを願っています。
あらすじ
会社員の新田は大阪出張の夜、上司に連れられて繁華街へと繰り出す。激安で話題の風俗に連れていかれそうになり、パートナーがいる新田は一度は断るものの、数時間の押し問答の末に入店してしまう。
新田はパートナーと結婚をするために新居を探していた。出張から帰った日、パートナーとの夜の最中、風俗店で流れていた音楽が頭の中で鳴り響いてしまう。
その日以来、新田はキーボードを叩いている時も、社内で話している時も、その音楽が鳴りやまない。
セックス、ホモソーシャル、資本主義、全てのものから逃げ続けながらもついてくるそのリズムと、どう向き合うのか。

