「時光代理人-LINK CLICK- Game of Rules」THE MUSICAL|ゲネプロレポート

「時光代理人-LINK CLICK- Game of Rules」THE MUSICALが6月18日(木)に東京・IMM THEATERにて開幕。原作は中国発の2021年配信のオリジナルアニメーション。中国での舞台化を経て、日本版として上演される。本作では脚本・演出を鄭光誠が手掛け、主人公のトキ役を武子直輝、その相棒のヒカル役を佐奈宏紀が演じる。本記事では初日前に実施されたゲネプロ公演の様子をレポートする。

開幕前フォトセッションの様子

観劇後、改めて「Game of Rules」という副題を思い出し、思わず唸ってしまう。そんな衝撃と謎に満ちた物語が展開された。アニメ1期の持つ、不思議な能力で依頼を解決していくというオムニバスドラマ的な要素を散りばめながらも、物語の軸となる事件に焦点を絞り、サスペンスとしての持ち味を存分に発揮する作品に仕上がっていた。

美しい映像とそれを鮮やかに映し出すフュージョン幕を用いた冒頭の演出に、時間と空間を旅する不思議な写真館へと引き込まれる。幕が上がると、出迎えてくれたのは「時光写真館」の店主のトキ/程小時(武子直輝)と共同経営者のヒカル/陸光(佐奈宏紀)、大家の娘のリン/喬苓(小泉萌香)の3人。

リンが持ってきたのは、大手ゲーム会社の財務データを入手してほしいという依頼。この依頼を通じて、トキとヒカルがどうやって写真を介して過去の出来事を把握・干渉できるのか。その役割が分かりやすく示されるので、原作を知らないという人でも序盤でしっかり設定を把握できるだろう。

トキとヒカルの持つ能力は、互いを補完しあうもの。それだけ相棒としての関係性がカギとなるわけだが、8年前の共演以来、互いによく知る仲の武子と佐奈が演じるとあって、2人がそこに立つだけでバディとしての説得力が放たれる。

武子の持つ眼力と真っ直ぐさは、正義感の強いトキにぴたりとハマる。ヒカルから釘を刺されても、独断専行で行動してしまう。そんなトキの衝動性と身軽さが、軽やかな芝居からにじみ出る。かと思えば、本音を吐露する楽曲では自身の無力さに打ちひしがれる重さをまとい、主人公らしい多面性で作品の軸となっていた。

そんなトキとは対照的に冷静沈着なのが相棒のヒカルだ。佐奈は普段のニコニコとした陽気な笑顔を封じ、物静かにヒカルとして佇む。写真の中に“ダイブ”するトキにとってのオペレーターの役割を担うヒカルは、一見すると厳しい指揮官のようにも見える。だが、誰よりもトキの危険に敏感な様子も見てとれる。ふとした瞬間、トキを見守る視線に複雑な感情を織り交ぜた芝居は、アニメの先の展開を知る者ほど、その表情の意味を深く読み取れるはずだ。

小泉のリンは、トキの幼馴染として、ヒカルとはまた異なるベクトルからトキへの家族愛を感じさせる。スリリングな展開が続く中、写真館に置かれたソファを囲んで3人が和気あいあいと団らんする姿は、束の間のほっとできる瞬間だ。

本作の大きなキーワードとなる過去改変に大きく関わるエマ/呉麗華(ウー・リーホワ)は、石井陽菜がその数奇な運命をドラマチックに描き出す。どこか得体のしれない劉旻(リウ・ミン)役の上山航平とともに本作のサスペンスとしての側面を強固にするとともに、田舎の両親(加藤大騎浅見静江)とのやりとりでは人間ドラマとしての醍醐味もプラスしていた。朱叶(ズゥー・イエ)と劉晶(リウ・ジン)を兼ねる早乙女じょうじの、鮮やかな演じ分けにも注目したい。

後半では、トキたち3人の大学時代の友人の徐姍姍(シュー・シャンシャン)と董易(ドン・イー)の恋愛相談が写真館に持ち込まれる。陽高真白はシャンシャンの素直になれないもどかしい恋心をキュートに演じる。一方で、影山達也は生真面目なドン・イー像を立ち上げ、作品に甘酸っぱさをもたらした。2人の恋模様にリンクするように、衝突したトキとヒカルの素直になれない胸の内が滲む、4人の歌声が重なるナンバーは、ミュージカルという表現ならではだろう。

しがない町の写真館は、いつしか謎めいた事件の渦中へ。刑事の肖力(シャオ・リー)(倉貫匡弘)や陳彬(チェン・ビン)(飯田寅義)も登場。過去改変の裏に見え隠れする事件を追っていくクライマックスは、キャスト陣の熱演と、視覚的情報を補完する映像とが相まって、観客を一気に物語の核心へと引き込んでいく。ひりつくような緊張の果てに訪れる結末には、それでも前を向こうとする希望が宿っていた。

「悔いのない人生はない」――作中で響くその言葉が、観劇後も胸に残り続ける。過去を変える力を持つからこそ、何を選び、何を守るのか。時を刻む秒針の音とともに紡がれるトキとヒカルの物語の結末を、ぜひ劇場で体感してほしい。

取材・文・撮影:双海しお

※徐姍姍(シュー・シャンシャン)の「姍」は異体字