フランスに実在した難民キャンプでの出来事を描いた作品『ジャングル』上演決定!

2026.06.24

撮影/宮川舞子

KAAT×阿佐ヶ谷スパイダース×神奈川県民で創る、長塚圭史演出『ジャングル』

実在した難民キャンプ『ジャングル』での出来事を描き、世界各地で話題になった作品

本作品は、フランス北部の港町・カレーに実在した難民キャンプ「ジャングル」での出来事をもとに、ヨーロッパ諸国で大きな社会問題となっている移民・難民問題を描いた、ジョー・マーフィー&ジョー・ロバートソンによる作品である。
ロンドン・Young Vicでの初演時(2017年)には、多国籍なキャスティングと臨場感のある舞台美術で大きな話題となり、その後世界各地で上演されている。

「ジャングル」とは…
ドーヴァー海峡に面したフランス北部の港町・カレーで、2015年初頭から2016年10月まで実在した難民キャンプ。一度難民申請を出してしまうと他の国では申請ができないため、より待遇のよい国であるイギリスへの渡航を目指す移民・難民が一時的に滞在していた。8,000人もの人々が生活を送っていたが、治安・衛生・人道上の理由から、フランス政府が2016年10月にキャンプを完全撤去した。しかし、現在もカレー周辺には数千人規模の移民・難民が点在的に滞在している。

多様な人種が集う「ジャングル」を、阿佐ヶ谷スパイダースと神奈川県民が表現

難民キャンプ「ジャングル」にはさまざまな国から、異なる言語、文化、宗教を持つ人々が集まり、共に生活を送っていた。難民・移民問題に対して身近に感じることが難しい日本人にとっても、作品に描かれる「分断」や「不寛容」は誰もが直面しうる課題である。今回、この多様な人種の物語を、長塚圭史が主宰を務める劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」と、公募で集まった神奈川県民で上演する。難民キャンプという多様な個が集まった環境を、年齢や職種などバックボーンが異なるメンバーで構成された劇団・阿佐ヶ谷スパイダースと神奈川県民が共に創作することで表現。舞台上に登場する俳優たちと共に、観客も「ジャングル」を体感することで、遠い世界での出来事として捉えるのではなく、身近な課題として向き合い、県民やお客様をはじめこの作品に関わるすべての人たちと共有することを目指す。

『ジャングル』の世界観を体感できる会場設計

多様な使い方ができる当劇場大スタジオの特長を生かし、臨場感のある舞台装置と特殊な客席形状を予定。キャストとの距離感も近く、『ジャングル』の世界に入り込んだような感覚で観劇いただける。
また、実際のキャンプの中にも飲食店があり、本作中にも登場人物が作り上げたレストランが登場。本公演でも、より世界観に入り込んでいただくために会場内で飲食物などの物品販売を行う。
客席での飲食とあわせて、登場人物の一人になったような気分で、お芝居をお楽しみください。

コメント

演出/長塚圭史

「人はなぜ線を引くのか?」
KAAT神奈川芸術劇場、2026年度のテーマ作品です。
昨今、日本でも難民については大きく問われています。2015年、欧州で大きく注目された、フランス北部のドーヴァー海峡に面するカレーという街に、渡英を切望する数千人の難民が集まりました。ここはやがて難民キャンプとなり、「ジャングル」と呼ばれるようになります。2年ほどで、フランス政府によりこのキャンプが強制的に解体されたという出来事をご存じの方もいらっしゃるかと思います。
中東、アフリカからやってきた難民たちの祖国は、どこもかつて英仏あるいはその他の欧州列強国に占領・統治された歴史を持つ国々ばかりというのはあまりにもシニカルです。本作の劇作家ジョー・マーフィーとジョー・ロバートソンもまた、大国イギリスの本音と建前に鋭く迫ります。
今尚世界中で戦争は続き、世界で増え続ける難民は我々の問題でもあります。本作はこうした世界の難民・移民問題の現状の深刻さを語るだけではありません。限りなく現実に近いフィクションであり、人間が果たして如何に生きるか、我々の善意とはどこにあるのか、あるいは悪意はどこまで歯止めが効かないのかを問います。
そしてKAAT神奈川芸術劇場の大スタジオが大胆に普段と様相の異なる劇場となります。
ぜひ劇場でご体感ください。

あらすじ

フランス北部の港町・カレー。ここには、中東、アフリカ、アジアなど世界各地から逃れてきた移民や難民が集まり、難民キャンプがつくられている。通称「ジャングル」。
難民たちはみな、よりよい環境を求めてドーヴァー海峡を渡り、イギリスにたどり着くことを目指している。異なる言語、文化、宗教を持つ人々が共に生活をする中で、イギリス渡航への希望を抱きながらも、劣悪な環境や政治的な無関心、暴力、差別などの現実に直面する。
カレーでの出会いや交流を通じて生まれる葛藤、連帯、そして分断。
登場人物たちは、互いに言葉が通じない中でも助け合い、時には衝突しながらも、共通の目的に向かって生き抜こうとする。それぞれの居場所を求め続け、行きつく先は―――
希望と絶望が交錯する日々の中で、「人間らしさとは何か」「共生とは何か」を問い直される、彼らの、そして私たちの物語。