記憶を失った少女と童話をモチーフにした男性キャラクターたちとの交流を描く人気ゲームを舞台化した「OZMAFIA!! Sink into oblivion」。2017年に初演され、好評を博した本作がキャストを一新、新たなファミリーを迎えて再演されることが決定した。新たに名を連ねることになった、川﨑優作、大薮丘、安東秀大郎の3人は、どのような気持ちで本作に挑むのだろうか。その意気込みなどをたっぷりと語ってもらった。
――出演が決まった時の気持ちは？
安東「シーザー役なんですが、こんなにカッコいい役を演じるということで少し緊張しましたね。強めの口調のイメージで、僕自身とは違うな、と思いましたし、どうしようか、って感じでした」
川﨑「今回のお話があって、初めて「OZMAFIA!!」という作品を知りました。調べてみたら恋愛シミュレーションゲームということで、ビックリしましたね。女の子をキュンキュンさせるような役を演じなければならないワケじゃないですか。…（オファーしてくださった方は）俺のこと、良く知らないのかな？なんて思いました（笑）。いや、頑張りますよ！ でも自分は、ワイワイガヤガヤやる方で、割とかけ離れているので…。新たな挑戦なので、みなさんをキュンキュンさせられるような新しい自分を発見したいと思います！」
大薮「もう、まずはめちゃくちゃ嬉しかったですね。やった～！って。前作の台本を読ませていただいて、お話もすごく面白くて。ミュージカル「オズの魔法使い」と似ている部分もあって、みなさんが入り込みやすい作品だと思います。そういう作品の中に自分も入っていけることが、とても嬉しかったですね。ソウは面白くてやりがいのある役どころなので、楽しみですね」
――それぞれ、役どころについてはいかがでしょうか。
川﨑「僕はグリムのボスのハーメルンを演じるんですが、まずはキャラクターのビジュアルを見るじゃないですか。そしたら、襟足ながっ！って（笑）。ロン毛の役はやったことがあるんですが、今回はそれ以上に長くて、普段とのギャップも激しいので、早くキャラクターを自分のものにしたいです。ストーリー上では、表でのラスボスにあたる人物。対立するチームのボスで、いわば悪役なので戸惑いも多いです。自分にはあまりない部分なので…。でも、実は…という部分もあって、そのギャップや切なさ、悲しさはしっかり原作を踏襲したいと思いますし、それ以上に2.5次元らしく自分の体で表現したいと思います」
安東「まだ原作のプレイの途中なんですが、ゲームの主人公・フーカちゃんが目覚めたときに僕が演じるシーザーが現れて「お前は俺の獲物だ」って感じの台詞があるんです。僕が演じるキャラクターだけど、僕じゃない！って思って（笑）。でも、まっすぐに追いかける姿とか、シーザーという男の信念はしっかり表現していきたいですね。ソウが僕のお世話をしてくれるんですが、ということはソウがしっかりしていて僕はしっかりしてないんじゃないかと思うんです。自分の意見を通すためにワガママなイメージですね。だから、しっかりお世話をしてもらおうと思います（笑）。僕自身も普段ちょっと斜め上の言動をしちゃうっぽいので、そこも丘ちゃんに…」
大薮「そこからサポートするの！？（笑）。ソウは、最初はかわいらしくて、誰に対しても無邪気に接するキャラ。けど、最後の最後で中身があるところを見せるというか…深いものをもっている。今回の台本がどうなるかはわかりませんが、主人公のことも2回ほど騙すんです。ずる賢い性格だけど、芯のあるキャラだと思いますね。自分が演じるから、そう思いたいのかも知れませんが（笑）。でも、第一印象のソウと、本当はこういう人間だったんだよっていうソウの違いをしっかり見せていきたいですね」
――原作は恋愛シミュレーションゲームですが、物語の世界観などについてはどのように思われますか？
安東「ゲームをプレイする時に、どこかのファミリーに入っていなきゃいけないんですが、自分がもしどこかのファミリーに入ったら、どう行動するだろうかとか、想像してみるのがすごく面白かったんです。だから、お客さんにも自分だったら…というのを感じてもらって、その中を移動しているような感覚になってほしいですね」
大薮「観に来てくれたお客さんがゲームに入り込んでしまったような、そういう世界観になるんじゃないかと思います。いろいろな登場人物が出てきて、それぞれが毎回、仕掛けてくるわけですよ。僕だったら可愛らしくとか、シーザーやハーメルンなら大胆に、とか。そういう仕掛けから、どんどん陥っていくんじゃないかと思います」
川﨑「恋愛シミュレーションゲームって、主人公がプレイしている自分自身。自分視点でストーリーが進んでいくので、それを舞台化するっていうのがひとつ難しいところですよね。フーカ役は大変ですよね。お客さんはフーカになるわけで、僕らもフーカを惑わせているんですけど、フーカを通してお客さんを惑わせている。ストーリーはもちろん面白いから、どうやったらお客さんが没入できるかをしっかり考えて行きたいですね」
大薮「そう考えると、俺らがけっこう重要なんだよね。俺らがちょっとでもコケたら、お客さんが入り込めなくなっちゃう」
川﨑「主人公が暴れるようなタイプの作品じゃないもんね。主人公を軸として、俺らがいろいろ暴れる作品だからね」
――みなさんはミュージカル「テニスの王子様」シリーズで共演中です。今回のように別の作品で共演することについてはどのようなお気持ちですか？
川﨑「丘とは同じ時期にテニスに入って、同じチームで、ペアで。ずっと2人で関係性とかを3年くらい作ってきました。時にはお互いの考えをバチバチとぶつけあったりして。でも、他の作品で共演するのは初めてなんですよ。もうそれが面白くて。役どころの上でもなかなか面白い関係らしくて…それをとにかく楽しみたいですね。で、秀は…ほんとに変なコなんですよ（笑）。本当にぶっ飛んでて、稽古場でもいろんな人に支えられて…超魅力的なんです。テニスでは原作できっちり描かれていない部分を、自分で作り上げてきていたので、今回のように原作がきっちりとあるものを、秀がどうやって作ってくるのかが楽しみですね。ちょっとムズムズと気恥ずかしい気もしつつ、楽しみます」
安東「僕は…優作さんが言うように、みんなと趣向が違うというか…ズレてるみたいで。ね、優作さん？」
川﨑「だって、「OZMAFIA!!」の出演が決まって、ゲームを買ったらしいんだけど、プレイできるのってPS Vitaじゃないですか。でも、買ったのが…」
安東「PSPを買ってしまって。なんかカセット入んないんだけどって、調べたら…」
川﨑「間違えてPSP買う人ってすごくないですか？（笑）」
安東「よっしゃ、やるぞー！と思ったのに、全然できなくて（笑）。まぁ、今の仲間とこうやって新しい作品で一緒にできて、新しい仲間とも一緒にできるので、こうやって先輩たちにも支えてもらいながら、成長できればいいなと思います」
大薮「僕にとっては優作や秀ちゃんは、よき仲間でもあり、ライバルでもある。だから、現場の中でどう関わっていこうかとか、俺の方がやってやるぞ、みたいな気持ちは、もしかしたら他の共演者よりも強いかもしれないです。一緒にやってきたからこそのライバル意識はすごく持っているので」
川﨑「もう、顔合わせからバチバチでね（笑）」
大薮「この3人に何があったの？って他の人が戸惑っちゃう（笑）。あとは、この3人だけで話さないようにしたいですね。もうこの2人と話さずに、他の人とばかり話します！」
安東「極端！ ほどよくやってよ（笑）」
川﨑「僕は他の作品で共演したことのある人も結構いて、発表になってから「優作じゃん！」って連絡もらったりもしているので、そこも楽しみですね」
――今後やってみたい役や、役者としてこうなりたいというビジョンは？
大薮「僕はお芝居がすごく大好きで。これからも大好きなお芝居がずっと続けられたらいいな、と思います。最終的な目標があったり、特にこの役がやりたい、というのがあったりするわけじゃないんですが、知的な役から大胆な役、大雑把な役…ずっと挑戦していきたいです。ずっと役者でありたいと思いますね」
川﨑「役者としては、自分に無いものを研究して、いろんな役を演じられるようになりたいですね。いろいろな役を通じて、結局はお客さんの心を動かしたい、感動させたい。なかなかそういう仕事って無いと思うんですよ。直接自分の体、声を使って、お客さんを感動させる、価値観を変えるようなことって。なるべくたくさんの作品に携わりたいです。それで、最終的な目標は…軽井沢の森の奥で髭を蓄えて、無口な喫茶店のマスターになりたいです。そこに向かって、まずは目の前の仕事を、役者を頑張ります！」
大薮「役者、関係ある！？ それ（笑）」
川﨑「今は、先のことを考えるよりも、目の前の仕事をがむしゃらにやっていくだけ、というのが正直な気持ちですね」
安東「僕は三浦春馬さんがメチャクチャ好きで、業界を目指したきっかけ。中学の頃からずっと好きで、感情があふれ出すような表情も凄いし、とにかく魅力的。三浦さんに憧れているからこそ、自分もそういう表現ができるようになりたいと思っていて、でも、それにはまだまだで。いろいろな先輩の手を借りながら、優作さんと同じでまずはがむしゃらに自分のできることをやっていきたいです」
――舞台では女性の心をつかむキャラクターを演じられるわけですが、男性として女性をキュンキュンさせるには、どんなことが必要だと思う？
安東「一緒に居るときの気遣いですかね。プレゼントをボーン！とあげるとかじゃなくて、さり気ない小さな気遣い。そういう小さなことが、結果として大きな印象になるんじゃないかな、と思いますね。道とかでも男性が道路側を歩くとか…恥ずかしいな、これ（笑）」
川﨑「なんか古い、昭和っぽい（笑）。でも、秀と似てるんですけど、気遣いとかを自然にできることがカッコいいと思うんですよ。車の運転でバックするときに、助手席に手をやる仕草とか…古いですか？（笑）。自分だったら“やってるぜ～”ってなるかも知れないけど、本当に自然にやれたらカッコいいですよね。花火大会で女性の下駄の鼻緒が切れてしまって、自然におんぶできるような男になりたいです。女の子も自然に下駄を両手にもってこう…」
大薮「何を言ってるんだ…？（笑）」
川﨑「にじみでる優しさだよ！ 男も女もね」
――ベタベタなことなんだけど、自然にできちゃうことがキュンとする、って感じですかね？
川﨑「そうです！ ブラッド・ピットが映画でナチョスを食べたときに、指を舐めるんですね。普通だったらちょっと気持ち悪い仕草じゃないですか。ブラピはそうじゃない、すごくカッコよくて、やりなれてるんですよ、多分。それですよ、それ！」
大薮「んー、もう優作に持ってかれて、何を言っても…（笑）。あんまり考えてきたことなかったんで、この作品をやる中で見つけていきたいと思います」
――逆に女性の気になる仕草やキュンとするポイントは？
安東「見せつけてくるような感じじゃなくて、にじみ出るような優しさが見えてきたときですね。お水とかを注ぐにしても、仕草が慣れているというか。潔癖なワケじゃないけど、キレイに生活しているとか、悪口を言わないとか、そういうきちんとしている人が素敵ですね」
川﨑「自分が沢山食べるので、たくさん食べる人が好きですね。あとは…ネイルをしてきてるんだけど、ちょっとヘタなところを発見したりすると、キュンってきます（笑）。ただネイルをしているだけではならないんですけど。可愛くなりたいっていう頑張り、でもちょっと不器用っていう。その人間臭さが、抱きしめたくなっちゃいます」
大薮「僕はどんなことでもいいんですけど、頑張り屋さんがいいですね。スポーツでも何でも。学生時代は陸上をやっていて。だからか、頑張っている人が好きですね」
――最後に、楽しみにしているファンに意気込みをお願いします。
安東「キャラクターの味をしっかり出していきたい。見ていて、今、このカラーとこのカラーがあるからこそ面白い！というような気持ちになってもらえるように、しっかりとコントラストを付けて演じたいですね」
大薮「作品として良い作品をみんなで一致団結してお届けしたいというのがまず目標です。その上で、ソウ役がかわいいだけじゃなくて何かひっかかるな、という印象になるように、しっかり自分の中で細かく作っていきたいと思います」
川﨑「いろんなファミリーが出てきて、みんな魅力的。お客さんも十人十色で、推したいファミリーがあると思います。そこは自分に正直に楽しんでもらいたい。そうやって目移りする中でも、僕を推してもらいたいです！！ そのためにも、乙女心をもっと理解して、物語の軸を理解して…自分自分ってならないように、周りの皆さんと自分の役をしっかり考えながらも…やっぱり推してもらいたいです（笑）」
大薮「結局はそこね（笑）。皆さん、絶対見に来てくださいね！」
――（笑）。楽しい作品になる予感がします、本日はありがとうございました。
インタビュー・文／宮崎新之
