★9月21日より発売開始★『平成中村座小倉城公演』中村勘九郎 取材会 in 小倉 レポート

11月1日からの上演までいよいよ3ヶ月を切った8月。九州初上陸となる『平成中村座小倉城公演』の取材会が、ご当地・小倉城の天守閣にて開かれた。その模様をお伝えする。

―天守閣での会見は初めてですか?

「≪平成中村座≫では初めてです。小倉城は外からは見たことはありましたが、天守閣へ登ったのは初めてですね」

―≪平成中村座≫では、初の九州です。改めて思いをお聞かせください。

「父が常々いっていたのは、歌舞伎をご覧になったことがない方におもしろい芝居をみせたい、ということでした。『≪平成中村座≫は特設劇場だから、どこにでも行けるってのが強みだね』といっていました。九州のお客様にも来ていただきたいという、父の気持ちを果たせることがうれしいですね」

―19年が経ちました。今のお気持ちはいかがでしょうか?

「父が19歳の時に唐十郎さんのテント芝居を目にして、『これこそが歌舞伎だ、これがやりたい』と思った。そして2000年に浅草にテントを建てることができました。その時の本当にうれしそうな父の横顔は今でも忘れません。できたからにはおもしろいもの、喜んでいただけるものを作らなくてはなりません。その時から闘いが始まりました。実は≪平成中村座≫はどんどん進化をしていっています。最初のころは空調もきかなくて、ものすごく暑かったり、寒かったり。テントも薄くて雨が降ればセリフが聞こえない。椅子席や、平場席、お客様の座布団の厚みまで試行錯誤してきて、みんなで作り上げてきました。その景色、父の夢、それが≪平成中村座≫です」

―続いている理由は何だと思いますか?

「足を踏み入れたときに江戸時代にタイムトリップできる、靴を脱いで芝居小屋の中で芝居を見物するということでしょうか。舞台と客の間には壁ができてしまいがちですが、その壁が一切ないのが≪平成中村座≫です。楽屋にきてくれた知人が古典の演目に対して『≪平成中村座≫用にわかりやすく演出を変えたの?』とよく聞かれますけど、そんなことはないんです。ご覧になる方がリラックスして楽しんでいただいているからか、感じ方が違うのかも知れません」

―≪平成中村座≫には、常設の劇場とは違って、いろんな種類の席がありますね。

「“平場”といって、床に座って見る席があります。少し窮屈なんですけどお客様同士が密着するせいか、笑いとか心を揺さぶることだとかが伝線しやすいようですね。舞台から見ていると、小屋全体が揺れている感じがするときもあるぐらいです。桜席は舞台の上、幕内に席があるんです。当然、正面から見られませんし、見切れもありますが、舞台裏の展開などが、見られるお得な席です」

取材会では小倉城を背に笑顔でポーズをとってみせる中村勘九郎

 

―小屋には十八世勘三郎にちなんだ工夫があるそうですね。

「父に中村座をやはり見守っていてほしいと、父の目の絵を18箇所、中村座内にちりばめました。隠れミッキーならぬ、隠れ勘三郎(笑)。父がディズニーランドが大好きだったんです。それを探していただくのも小屋を楽しんでいただけるひとつになるんだろうな、と思います」

―小屋の外に設けられる長屋も名物です。

「今回は20軒が並びます。今までは公演のチケットがないと入れなかったんですけど、今回は開放して自由に入れます。前回までは5軒だったんですが、今回は一気に20軒に増えました。テントは音漏れがすごいんですよ(笑)。長屋では芝居中の音が聞こえるかも知れませんね」

―演目のお話をお伺いします。まず昼の部は『神霊矢口渡』。

「古典的な舞台ですけれど、女の情念、激しいうちにある魂の炎というか、典型的な歌舞伎の女方です。意外なんですけど七之助は初役です」

―そして『お祭り』。

「『お祭り』は踊りのようで踊りじゃない。難しいものなんですけど。祖父(十七世勘三郎)の得意としていた演目です。清元との掛け合いで夢の世界へ連れていってくれるような作品です。父は「祖父のようにはできない、できないってずうっといっていたんです。しかし何年か前に『ほら、雅之(勘九郎さんの本名)見てごらん、汗を一滴もかいてないだろう、これができるようになったんだよ』って言ってました。それが50歳を過ぎてからのことです。私は今回、37歳でやるわけですが、今できる僕の『お祭り』というのを見ていただければと思います」

―昼の部の最後は『封印切』です。

「(中村)獅童さんが『封印切』を演りたいといったのは意外でした。第二回の≪平成中村座≫で、本興行とは別の若手で行う試演会をした時、すごく大変でした。でもまたこのメンバーでやりたいねという思いがあり、今回『封印切』を三人できることになりました。感慨深いですね」

―そして夜の部は、通し狂言『小笠原騒動』のですね。

「小倉で中村座が決まったときに、一発目にこれしかないと思いました。『小笠原騒動』ファンなので、好きな演目のひとつがご当地でできるのはとてもうれしいです。上方で初演された芝居なので、上方歌舞伎の濃い・・・というかこってりした演出があります。お家で騒動があって、狐が出てくるファンタジーのような面もあり、本水を使った水車小屋の立ち回りもあります。岡田良助は物語の核となる人物。上の人間たちに振り回されます。親子の愛情も描かれていて刺激的な場面なんですけど、こういうふうにしか生きられなかったんだ、というようなお客様の心をつかめる舞台にしていきたいです。家をのっとろうとする役ですから、大きさと不気味さと内に秘めた隠のパワーをお見せできたらなと思います」

―≪平成中村座≫といえば演出が楽しみです。小倉城を使った演出は考えられていますか?

「今回はせっかく小倉城が後ろに見えますから、特設劇場の後ろを開ける演出もあると思います。夜の部の『小笠原騒動』では、何日間か花火を使った演出もあります。すごいでしょう?こういうとき出てる役者って損なんですよ。花火は後ろだから見られないんです。どうにか見られるような演出にしていただきたいと(笑)」

―そういえば、今日は(NHK大河ドラマ『いだてん』で演じている)金栗四三さんのお墓参りにいらっしゃったとか?

「今日(8月20日)は金栗さんの128回目のお誕生日なんです。プライベートで行ってまいりました。駐車場のおじさんがびっくりしてましたね。あれぇ?って(笑)。それで命日も伺いたいなと思ったら≪平成中村座≫のある11月なんですよ。行けるなって(笑)」

―最後にメッセージをお願いします

「2018年の2月に博多座さんに出演させてもらったのですが、その時は4月からクランクインする『いだてん』の前だったので食事制限をしていました。ホテルとジム、博多座。終わったらジム、ホテルという暮らしでおいしいものを食べられなかったので、小倉ではいっぱい食べたいと思います(笑)。≪平成中村座≫は本当に楽しんでいただきたいと思います。10年程まえからずっといってますが家にいたらなんでもできる時代で、役者としてずっと危機感を覚えていました。そして今、ますますそういう時代になってきた気がします。だからこそ生で見にきてくださる以上は絶対に後悔させたくないという思いでいますので、生の魅力、舞台の魅力、歌舞伎の魅力というのを伝えるために一生懸命やります。楽しんでいただきたいです」

本公演のチケットは今週末、9月24日(土)10時より発売開始!チケットの詳細は下記よりご確認ください。

平成中村座が、あなたを江戸時代にタイムトリップさせる!?

 

 

 

◆◆ ≪平成中村座≫ とは◆◆
十八世中村勘三郎の長年の想いを実現した、特設劇場で公演のこと。
2000年(平成12年)の第一回公演以来、東京、大阪のほか、海外でも公演を行ってきた。
江戸の芝居見物を体験できるエンターテインメントとして、従来の歌舞伎ファン以外からも毎回注目を集めている。