劇団☆新感線としては見事なほどにお馴染み感の強い顔ぶれが揃う、『髑髏城の七人』 Season鳥。そんなメインキャストの中で唯一の初参加となるのが、沙霧を演じる清水葉月だ。
本格的な稽古が始まる前に“Season花”を観に行ったという彼女、「次のシーズンで自分が出るということもあっていろいろと想像しながら観ていたんですが、途中からはただひたすら観客として楽しんでしまいました!」と笑う。
清水「客席が360°回転するというのはあまりに謎ですよね(笑)。もしかしたらアトラクション気分で回ること自体が楽しくなっちゃわないかな、ちゃんとお芝居を観てもらえるのかなという不安もちょっとはあったんですけど、実際に自分が座ってみたら全然そんなことはありませんでした。はじめ、ふわ~んって静かに動き出すので「あれ? 私回ってる?」くらいなんですけど、シーンが重なっていくと中盤にはもう回ってることが気にならなくなるというか。あの演出と映像の効果で、どっぷり物語の世界観に引き込まれてしまっていました。観終わった時は、すごく興奮していましたね。クライマックスには、もっと回りたい、登場人物たちを一緒に追いかけていきたいという気持ちにもなって。「面白かったなあ!」って思いながら、家に帰りました」
──そして、帰宅後にちょうどその日に手渡された“Season鳥”の台本を読んだのだという。
清水「台本を開くと、いきなり最初から展開が違うのでビックリしました。“花”では、冒頭から沙霧のアクションシーンがあったので「ここはたぶん変わるんだろうな……」なんて思ってはいましたけど(笑)、ここまで見せ方が変わるとは。だけど“花”でもっと知りたいなと思っていたことが、“鳥”でより深まっているようにも思いましたし、そこにプラス歌と踊りが入ってくるわけなので。相当イメージの違う作品になるんだろうなと思います」
──百戦錬磨の濃いキャラクターのキャスト陣の中に加わるのは、なかなか勇気がいりそうにも思えるが、意外に肝が据わっていそうなところも沙霧役に抜擢されたポイントなのかもしれない。
清水「みなさん、既に空気が出来上がっているような中で、私だけ完全に全員と初めましてという状態なんですよ。でもそこで「初めてです」って空気はなるべく出さないようにして、しれっと紛れ込んでいようと思って(笑)。それでも、みなさんと初めて顔を合わせた時に「緊張します」って言ったら、松雪(泰子)さんに「大丈夫よ」って優しくしていただいて、もうそれだけで何も心配ないのかもって思えるようになりました」
──この作品に参加することで相当さまざまな経験が積めるはずで、本人も「夏が終わる頃には、ふたまわりくらい大きくなっていたらいいですよね。走り回っていっぱい鍛えて、さらに成長したいなと思います!」と力強く宣言。
清水「いろいろな先輩たちからアドバイスをいただくんですが、みなさん口を揃えて「何も考えなくていい、とにかく鍛えて体力をつけておくことがまず大事だよ」っておっしゃるので、ひたすら走って、筋トレして準備しておきました。あと、いのうえ(ひでのり)さんとも初めてなので、事前にあまり作り込んでいかずにとにかく柔軟でいられるように、頭を柔らかくして稽古に臨んでいます」
──そんな清水が演じる沙霧はある意味、物語を回していく重要なキャラクターだが、どう演じようと思っているのだろうか。
清水「台本の段階で、今回の“鳥”では捨之介との関係性もこれまでとは違う印象がありました。交わす言葉が対等な感じもして、相棒感がすごく強いようにも思えたんですよね。ただ守ってもらうだけじゃない、一本芯の通った強さもありつつ、でも脆いところもあるような。そういう危うさも自分なりに出せていけたらいいなと思っています。それになにしろ“鳥”ですし、殺陣もあれば踊りもあるわけなので、いい軽やかさに注目していただけたらと思います。先輩方はみなさんすごい方ばかりで、きっと笑いから何もかも全部もっていかれてしまうと思うので、私はとにかく今回は軽やかさで勝負です。そこは譲れないなと思いました。って今、自らハードルを上げちゃいましたね(笑)。とにかく、しっかりやろうと思います!!」
■プロフィール■
清水葉月 シミズハヅキ
1990年8月11日生まれ。愛知県出身。2008年高校在学中に受けたオーディションに合格し『黒猫』で初舞台を踏み女優デビュー。近年は舞台だけでなく、映像作品でも活躍中。劇団☆新感線には本作が初参加となる。
インタビュー・文/田中里津子
Photo /村上宗一郎