本格的な稽古も始まり、ますます期待は高まる一方の『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』。2017年3月にIHIステージアラウンド東京のこけら落とし公演として“花・鳥・風・月”と各Seasonごとにキャストはもちろん、脚本と演出も大幅に変えつつ約1年にわたって上演し続けてきた劇団☆新感線『髑髏城の七人』、そのシリーズラストを飾る舞台となる。これまでのメインキャラクターである<捨之介>と<蘭兵衛>が登場しない新たなる『髑髏城』であり、“完全新作”ということもあって内容としてはまだ多くがベールに包まれたままの『修羅天魔』だが、その製作発表記者会見が2018年1月中旬、マイナビBLITZ赤坂にて、華々しく賑やかに行われた。
会場には厳正なる抽選に当選したファンの方々も多数参加されていて、そのドキドキワクワク感が自然と伝わってくる。今回は会見中にTBSの情報番組『ひるおび!』の生中継が入るためか、多少緊張感も漂っている様子だ。まずは漆黒の甲冑に身を包んだ髑髏党の鉄機兵たちがドラマティックなBGMと共に氷上を滑りくるくると回るVTRが流れたかと思うと、その映像からそのまま飛び出てきたかのように8名の髑髏党員が舞台上に現れ、アクションを披露。
そして爆発が起き、その煙の向こうのステージ後方に天海祐希、古田新太らメインキャスト8人のシルエットが浮かび上がった。大きな拍手に包まれて登場したキャスト陣は、黒を基調にした衣装がスタイリッシュかつ個性的ないでたち。その登場の模様から生中継されていた番組とのやりとりが終わると、通常の製作発表会見がいよいよスタート。天海祐希、福士誠治、竜星涼、清水くるみ、三宅弘城、山本亨、梶原善、そして古田新太、各自の紹介が一通り終わると公演の成功を願って、年明け早々に相応しく鏡開きが行われた。
続いてIHIステージアラウンド東京の劇場機構を紹介するVTRが流れ、今度はキャストに、脚本の中島かずき、演出のいのうえひでのりも加わってまだまだ謎の多い『修羅天魔』について、それぞれにヒントや意気込みなどを語った。各自のコメントは、以下の通り。
いのうえひでのり<演出>
「新作ということで、また新たな演出、仕掛けをいろいろと企んでいます。やはり見てびっくりしてほしいので、今の時点で話せる事はありませんが(笑)。ただ、観客席を回すということ自体には慣れてはきていることと、あの劇場は広い絵を見せたほうがいいんだとも思えてきたので、今回は今まで以上にステージを広く使いたいなとは思っています。また今回は同じフォーマットを持つ別の『髑髏城』の話なので、Season“花・鳥・風・月”をたとえ観ていなくても関係ないと言えば関係ない。きっと新たな気持ちで、観ていただけると思います」
中島かずき<作>
「“悪いことをしていた天魔王がやっつけられる話”という部分は、これまでと変わりないです(笑)。でも悪いことをしていた意味とか、周りの人間関係が少し違ってきますし、大きくは主役の天海さんに演じていただく<極楽太夫>が凄腕のスナイパー、狙撃手で、過去に織田信長と天魔王と因縁があって……という話になるので。今までの<捨之介>や<蘭兵衛>などのキャラクターは出ず、その代わりに天海さんを中心とする新しい人間関係が見えてくることになります。天海さんと古田に、がっつりとやってほしいなと思って構想した話です。二人が敵同士かって?ま、そこはいろいろあります。そのあたりは見てのお楽しみというところです」
天海祐希<極楽太夫>
「私もSeason“花・鳥・風・月”、全部観させていただきましたが、どの<極楽太夫>もみんな美しくて可愛らしくて、とても素敵で。でもあの愛らしさは私にはないなと思っているので(笑)、ぜひ違うものを醸し出せるようにできたらいいなと思っています。とにかく今回は古田さんとご一緒でき、そしてこの本当に素晴らしいキャストのみなさんと共に新作の『髑髏城の七人』を作ることができるので本当に楽しみです。その中で、自分の<極楽太夫>という役柄を掘り下げて行けたらいいなと思っています」
古田新太<天魔王>
「(天海さんが「古田先輩が出ていないとヤダ」と言うので今回出ることにしたということですが?と聞かれ)そうですね、やっぱり愛している人の頼みは断れないので(笑)。Season花で<贋鉄斎>をやり、その時も、それ以降もいろいろな人たちが<天魔王>を演じているのを見てきましたが、みんなすごくエキセントリックな天魔王だとかカッコイイ天魔王をやっていたので、僕はなるべく動かない<天魔王>をやろうと思っています。たとえ舞台を広く使っていても自分は動かずに、さっき出てきた兵隊たちに「行けぃ!」「やれぃ!」と言うだけにします(笑)」
福士誠治<兵庫>
「今回、僕が古田さんの代わりにいくらでも走るつもりです(笑)。<兵庫>という役は『髑髏城』という作品の中で歴史深いキャラクターと言えますが、新作ということですので僕にしかできない<兵庫>が出来上がればいいなと思っております。劇団☆新感線の本公演には初参加ですし、本当に長い期間の公演になるので健康に気をつけて最後まで舞台に立つということをまずでかい目標にしたほうがいいかもしれませんね。結構ハードな舞台なので無理することもたくさんあるはずですが、そこはちゃんと冷静にいかないとダメだなとも思っています」
竜星涼<夢三郎>
「<夢三郎>というのは遊女ではなくて、男なんですけれども太夫と呼ばれていて。無界の里で他のみなさんとどう絡んでいくかは、この新作で初めて登場する役どころなので僕自身も楽しみながら演じたいです。劇団☆新感線さん、そしてこの素晴らしい先輩達とご一緒すること、僕にとっては初めて尽くしのことばかりで、うれしいと同時にちょっと武者震いもしつつ、今は緊張でいっぱいです(笑)。アクションはそれなりにやってきましたが時代劇の殺陣をしっかりやるのは実は初めてなので、みなさんの背中を見ながらいろいろと吸収させていただきたいと思っています」
清水くるみ<沙霧>
「いのうえさんに「私、アクションの稽古にも通っているんです、がんばります!」と言ったら「(そこまでやらなくて)いい、いい」と言われてしまいました。それより、とりあえず体力をつけておくように、と。Season“花・鳥・風・月”の<沙霧(霧丸)>役がすごく運動神経の良い方ばかりだったということもあったんですが、従来の<沙霧>は頭脳派だったとのことなので、そこをうまく出して行けたらなと思っております。とはいえ走り回ることには変わりはないそうですし、殺陣はがんばりたいと思います!」
三宅弘城<カンテツ>
「<カンテツ>はSeason“花・鳥・風・月”にはない役ですが、2004年の『髑髏城の七人』いわゆる『アオドクロ』で<贋鉄斎>の弟子の役として、僕が一度やらせていただいている役なんです。まあ、いわゆるうつけものですね。身体能力が高いと言われておりますが、私先日生まれて半世紀が経ちまして、50歳になりまして。なのでそれなりにというか、いのうえさんに2004年の時の僕を期待されてもちょっとね(笑)。ともかく最後まで誰ひとり欠けずに駆け抜けることが目標ですから、そのへんはなんとかご考慮いただきたいなと思います」
山本亨<狸穴二郎衛門>
「(新ストーリーではかなり肝となる役柄だと伺っていますが?と言われ)僕はそうは思っていないです。そう思うと、稽古しながら緊張してしまうので。ただかずきさんが書かれた台本に従って稽古していきたいなと、気負わずにやっていきたいなと思います。2004年の『アカドクロ』の時に初めて新感線さんに参加させていただいたのですが、あの時は八百屋舞台で大変だったことをすごく覚えています。あれから14年たってもみなさん第一線でやられていてすごいなと思いますし、こうしてまたご一緒できるのは非常に嬉しいです」
梶原善<ぜん三>
「僕が今回演じる役どころは役名に役者の名前、それも苗字の頭を取っているので、本来なら“かじ三”が正しいんでしょうけれど。でもこの芝居には刀鍛冶が出てくるので、セリフで刀鍛冶なのかかじ三なのか、ちょっとカジカジしちゃうから(笑)、だったら下の名前でということになりました。僕、新感線に出る時はわりとちゃんとした偉い役が多くて。Season鳥でも<狸穴>でしたし、そうするとシーンを締めなきゃいけなかったりするんですが、今回はお百姓さんなのでそういう意味では気が楽。新感線でこういう庶民的な役は初めてなので、そこも見どころになるかと思います」
今回は新感線参加経験者の“準劇団員”、そして互いにも共演経験が多いこともあり、「舞台を広く使いたい」といういのうえのコメントに、天海が「うそでしょう?」と即ツッコミを入れたりするなど、早くもチームワーク満点のキャスト陣。古田から「前半はほぼ兵庫がペースメーカーになるのでがんばっていただきたい」と言われて福士が苦笑いし、以前ドラマで共演した時のエピソードを天海に語られ「すごい頑張り屋」と評されて竜星が照れ笑いし、清水に至ってはなぜか干し芋好きであること、実は天海の大ファンで初対面の時に鼻血を出してしまったことを告白。また、いのうえが「最高齢のカンパニーなので、みんなの身体をいたわりながらやるつもりです」と話すと、この劇場の経験者として古田が「だから全力でやってはダメ。7割くらいでやらないとね」とみなにアドバイス。さらにフォトセッション終了後には天海が率先してキャスト陣にさらに一言コメントを求めてマイクを向けるなど、終始和やかなムードでサービス精神も旺盛な会見となった。
『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』は3/17(土)にIHIステージアラウンド東京にて、開幕!どうぞお楽しみに!!
取材・文/田中里津子
Photo/村上宗一郎