菅井友香 インタビュー|「飛龍伝2020」

2020年は、劇作家つかこうへいの没後10年を迎える年。日本の演劇界にさまざまなムーブメントを起こした男を偲び、彼の魂が込められた作品群を連続上演していくことになった。その口開けとなる演目「飛龍伝2020」で、主人公の神林美智子を演じるのは欅坂46のキャプテン、菅井友香。初代の富田靖子をはじめ、牧瀬里穂、石田ひかり、内田有紀、広末涼子、黒木メイサ、桐谷美玲と、名だたる女優たちが演じてきたこの役に、菅井はどのように挑むのか。その胸中を語る。


――自分が「飛龍伝」の神林美智子を演じると聞いたときはどんな気持ちでしたか?

すごくびっくりして…でも、こんな素敵な機会ってあるんだな、っていうありがたい気持ちになりました。そして、本当に頑張らなければ、って思いました。自分の実力に対する不安な気持ちもありました。でも嬉しい気持ちが大きくて、選んでくださった皆さんに感謝しています。本当に歴史ある名作で、演じてこられた方も錚々たる方々ばかり。そこに私が名を連ねさせていただくことはすごく恐縮なんですけど、とにかくこの作品を少しでも伝えられるように、私もしっかりやり切ってバトンタッチできるよう、繋いでいけるように、バトンを受け取って、全力で頑張りたいと思います。


――「飛龍伝」にはどんなイメージをお持ちですか?

すごくエネルギッシュな作品だと思いました。ちょうど、ニュースでデモ活動などの報道があった時に、家族でその話をしていたんです。昔は東大で安保闘争があって、デモ活動をしていたことがあったんだよ、という話を父から教わったその日に、このお話を聞いたんです。それで、もっとこのことを調べて、この主人公の気持ちを伝えられたらいいなという気持ちがこみ上げてきました。もっと調べて、この役のことを考えていきたいです。


――どんな気持ちで演じていきたいですか?

あまり政治的なこととか、わからないことも多いんですけど…今の私たちの世代は自分の意見を押し殺して、あまり主張しないこともあるんじゃないかと思うんです。自分もその一人じゃないか、って。この作品を通して、伝えるべきことを世代を超えて伝えていけたらいいなと思っています。欅坂46としても、デビュー曲の「サイレントマジョリティー」の歌詞を見たときから、変わらなきゃいけない、勇気をもって伝えていかなければいけない、これが使命なのかな、と、ちょっと思っていたので、このありがたいチャンスで同世代にも伝えていきたいです。


――「飛龍伝」は、主人公の恋の物語でもありますが、その部分についてはいかがですか

美智子の恋、ですか…そういう役をやったこともないので、初挑戦でソワソワしています。美智子もきっと、いろんな人に影響されて変わっていったんだと思うんです。自分も今、そういう意味ではまだフレッシュな部分があると思うので、そこを素直に、いろんな感情を受け止めて、そのまま表現できるようにしていければと思います。美智子はカッコいいイメージがあるので、私はまだまだですね。表情とかも、まだまだ足りない部分があるので、もっともっと勉強して頑張りたいです。


――今日は、美智子をイメージした衣装での撮影でしたが、感想はいかがですか。実は、作中では登場したことのない衣装ですが、本日の衣装は30年前のポスターで漫画家のかわぐちかいじさんが描いたイラストのコスチュームなんだそうですよ

そうなんですか! 汚したりとか、切ったりとかして、すごく戦っているような気持ちになりました。心が熱くなるような撮影で、衣装を着たときから身が引き締まるような感じがしました。自分の持っている気持ちと表情を写真に乗せる難しさも感じました。不満を爆発させて撮るときに、変わってやる!っていう気持ちを混ぜたり…。あと、大事な人を思って叫んでみたら、と言っていただけたんですが、パッと思い浮かばなくて家族が倒れていると考えて叫んだりしてみました。


――つかこうへいさんの没後10年の企画のひとつですが、つかこうへい作品のイメージは?

前に欅坂46で同じメンバーだった今泉佑唯ちゃんが「熱海殺人事件」に出演すると聞いて、すごくカッコいいなと思っていたんです。つかさんの作品には伝えたいことがたくさんあると思うので、私ももっともっと読んだり観ていきたいです。


――欅坂46のメンバーからは出演にあたってどんな声をもらった?

私が「飛龍伝」に出演することが、発表されたときに、すぐ尾関梨香から連絡が来て「舞台やるんだ、頑張ってね!」って言ってくれました。今日もメンバーと会ったんですけど「すごいね、絶対見に行くから頑張ってね」って言ってもらえました。まだ詳しい内容までは分かっていないと思うんですけど、とても心強いですね。みんなそれぞれで頑張って、個人の仕事もしているし、メンバーのことを尊敬しているので、自分も何かグループに持ち帰れるように、ここで精一杯吸収して行けたらと思います。


――今回で3作目の舞台ですが、舞台で演技することについてはどんな印象ですか?

まだまだ未熟で、経験も浅いんですけど、いろいろなものに挑戦させていただく中で、舞台もすごく楽しくて。お稽古から含めて、全員で協力して作品を作って一体になってみんなで伝えていく、その積み重ねがとてもやりがいがあって、好きです。いろいろな素晴らしい俳優さん、女優さんがいらっしゃって、こんなに身近でお勉強させていただける、見させていただける機会もなかなかないので、みなさんとの交流も楽しみです。


――演技がお好きなんですね。昔から演じることに興味はあった?

あまりそういうふうに意識したことは無かったですけど…。欅坂46の楽曲やミュージックビデオにはすごくストーリー性があって、こういう設定でお願いします、って説明されることも多かったんです。そういう時に、自分でどう伝えるかを考える機会は多かったので、自然と好きになっていったように思います。


――欅坂46の活動に稽古にと、これからどんどん忙しくなってくると思いますが、息抜きになる瞬間はどんなときですか?

やっぱりお家ですね。家がすごく好きなので。飼っている猫がいて、耳が垂れているスコティッシュフォールドのトムっていう名前なんですけど、その子を見ているとホッとします。かわいくてしょうがないですね。いつもちょっと不機嫌な表情で(笑)、でも表情がわかりやすいんです。お腹に顔を埋めると「なんだよ~」って顔しながら、受け入れてくれます(笑)


――最後に、この作品は伝統的にキャストでは女性1人という座組になります。そういう中で、どんなふうに神林美智子を演じていきたいですか?

自分でも、自分がどうなってしまうのか分からないんです。私は大学まで女子校育ちで、欅坂46でも女子ばかりの環境にいたので、今回のように男性ばかりの環境に入っていくのも初めて。まだイメージができないですが、そういう環境の中で、お芝居の中で恋をしていく姿とかもお見せしていくのかと思うと、少し恥ずかしい気もしますが、精一杯、神林美智子を責任をもってお伝えできるように頑張りますので、ぜひ観に来てください!

 

取材・文/宮崎新之