――「志村魂」も今回で13回目となりますが、初回からずっと意識していらっしゃることはありますか?
志村「「志村魂」は始める前からコント、三味線の演奏、松竹新喜劇のお芝居という構成にしたいと決めていました。最初から松竹新喜劇だと僕のイメージがないと思いますので、まずはコントの連続で笑わせておいて、三味線で素の志村けんを見せた後、ガラッと変わる長編のお芝居になる。長編のお芝居は舞台でしかやっていませんので、そこはこだわっていますね」
――志村さんにとって、「志村魂」は毎年のライフワークのひとつだと思いますが、今回とくに楽しみにしていることはありますか?
志村「コントもそうですけど芝居はやりこんでいくと、どんどん変わっていきます。反省会じゃないですけど、みんなと飲みながら、「こうしてみない?」とか「ああしてみようか?」とか、そういう話をするんです。試しにやってみて、いいと残っていく。だから最初の年と今回、初日と千穐楽でもずいぶん違うんじゃないですかね。テレビは一過性で終わってしまうけれど、舞台はやればやるほど分かってくるところがある。だから舞台は楽しいですね」
――バカ殿様は何十年も変わらず愛され続けているキャラクターです。どんなところが愛されるポイントだとご自身では考えていらっしゃいますか?
志村「バカ殿様はバカなふりをしているけれど、実はちゃんとしていますからね。家来の様子もよく見ていますし。でも心は子供ですから。そういうところがいいのかもしれないな」
――バカ殿様やコントライブと老若男女問わず、みんなが大笑いしてしまう「志村魂」ですが、小さな子供からおじいちゃんおばあちゃん世代まで一緒になって笑える空間づくりの秘訣はなんでしょうか。
志村「秘訣というか、嘘がないようにしていますね。たとえば“ひとみ婆さん”というキャラクターにはモデルがいます。新宿の飲み屋のおばあちゃんだったのですが、床山さんを店に連れて行って、本人を見てもらって「ああいうカツラを作ってくれる?」ってお願いしました。周りの人を見ていて、アイデアが生まれることは多いかもしれませんね」
――今回ももちろん、ダチョウ倶楽部さんや桑野信義さんといったおなじみの面々も揃います。改めて、彼らの魅力や志村さんが感じていらっしゃる居心地の良さなどのお気持ちをお聞かせください。
志村「もう長いですから息は合っていますね。困った時はみんなで助け合っているから、誰かひとりいなくなっちゃうとだめという感じはしますね。(ダチョウ倶楽部の)リーダーはアドリブにも何かしら返してくる。逆に上島竜兵は困っちゃうタイプ。そして桑野はすぐ泣いちゃうんですよ(笑)。ちょっとこっちが違うことをやると、次に言うべきセリフがスコーンと飛んじゃうんです。あとは泣いてごまかしている(笑)」
――今回も恒例となりました三味線の演奏もあります。三味線の魅力についてお聞かせください。
志村「三味線はドリフターズ時代に一度やったことがあるのですが、音がすごく好きで、ある時、上妻君(津軽三味線奏者の上妻宏光氏)と知り合って「弟子にしてくれませんか」って頼んだんです。1回目は冗談だと思ったらしくて、2回目に会った時にまた言ったら「分かりました」って。津軽三味線は普通の三味線と違って叩きながら弾きます。打楽器のようにリズムも自分で決めなければならないのが面白いですね。三味線を弾く時はいつも緊張します。これまで1カ所もミスがなく弾けたということはないんじゃないかな。お客様に分かるようなミスではないと思うのですが、自分の中では「ああ違うな」と。三味線は本当に奥深いです」
――こちらも恒例の演目となっていますが「一姫二太郎三かぼちゃ」の上演もあります。こちらの演目についての印象もお聞かせください。
志村「昔からある松竹新喜劇の演目ですが、ワガママなきょうだいがいたりして、現代にも通じる話です。「人ってそんなに変わらねえなあ」って思います。今回のお芝居は一幕ものでセットも変わらないからお子さんでも見やすいのではないでしょうか」
――リピーターだけでなく、今回初めて興味を持った方もたくさんいると思います。初めての方にどんなお気持ちで会場に来てほしいか、ぜひメッセージをお願いします。
志村「「志村魂」は幅広い年齢層の方に見ていただきたいと願って始めました。お子さんが見ても笑って楽しんでくれると思います。実際、舞台の上からお子さんたちが最初にバカ殿を見た時のリアクションがすっごく面白いんです。ぜひ、生の志村けんを見に来て、楽しんでください!」
インタビュー/ペリー荻野