新年の祝典『ニューイヤー・ミュージカル・コンサート2018』では、世界で活躍する第一線のミュージカルスター5名が一期一会のステージを作り上げる。そのリハーサルに潜入、オーケストラと合わせる様子を見学した。
歌姫ローラ・ミシェル・ケリーは、妥協をしない。初挑戦のソロ「ブエノスアイレス」では、2回歌ってまだしっくりこないらしく、もう1回!とリクエスト。かと思えば、5人で歌う「パレードが過ぎる前に」の冒頭、突然マイクを外して歌い出し、みんなで大笑いする場面も。「どうして私マイク忘れたのかしら?」と不思議がるローラに、ロベール・マリアンが「普段はヘッドマイクだからね」とナイスフォロー!
初登場のジュヌヴィエーヴ・レクラークは、堂々たる素晴らしい歌声。「夢やぶれて」では途中からマイクを手に持って熱唱。他のキャストが歌っている時も、立って聴き、時には一緒に身体を揺らしたり、踊ったり、リハーサルを楽しんでいる様子だ。
このコンサート常連のロベール・マリアンは、さすがの貫禄。自分の中のイメージが明確で、そのための努力を惜しまない。十八番の「ヴァルジャンの独白」では、指揮の若林に「ここのパーカッションは、シュトーン!バン!シュトーン!バン!シュトーン!ブーーーン!で」と具体的。今回はこの名曲をフランス語で聴ける貴重な機会となる。
マイケル・アーデンは悠々とした張りのある美声とロングトーンで魅了した。特に、「アウト・ゼア」はさすがオリジナルキャストの迫力。リハーサルでも落ち着いていて、時折ニコニコと人懐っこい笑みを見せた。
アンディ・ミエンタスは立ち姿からして愛らしさ満開。しかし「カフェソング」では一転してシリアスになり、壮絶な叫び、痛みがリアルに伝わって来るのに驚いた。全員で歌う曲では更新したり、ステップを踏んだり、ノリノリなのもまた素敵!
その後、楽曲披露。「アイ・ガット・リズム」「サンライズ・サンセット」と素晴らしいハーモニーを聴かせてくれた。まだ出会って数日の人たちもいるのが信じられないほど、心地よい響き。ひたすら本番が楽しみだ。
【会見レポート】
――自己紹介をお願いします。
マイケル「初めまして。マイケル・アーデンです。皆さまの美しい国である日本に来られたこと、あたたかく迎えてくださったことを嬉しく思っています。かねてから、音楽と芸術は文化の架け橋になると思っています。このような交流ができることが嬉しいです。」
ジュヌヴィエーヴ「ジュヌヴィエーヴ・レクラークです。カナダのモントリオールから来ました。日本は2回目で、かつてクルーズ船の仕事をしていた際、札幌に4時間だけ滞在したことがあります。再び戻ってこられてワクワクしています。日本の方は情が深く、素晴らしい人たち。そんな日本に来られて嬉しいです。」
ローラ「ローラ・ミシェル・ケリーです。日本は『シネマ・ミュージカル・コンサート』に出演して以来、2回目。日本のお客様の前に戻って来られたことが嬉しいです。日本の方々はお互いを尊重し合い、そんな皆さまの前で芸術を分かち合えることが嬉しいです。」
ロベール「コンバンワ!7回目の来日で、仕事に来るというより日本のあたたかい友達に会いに来る感覚です。この素晴らしい劇場に戻って来られて嬉しいです。私と皆さまを繋げてくれる音楽に感謝したいです。「音楽、バンザイ!(日本語で)」」
アンディ「アンディ・ミエンタスです。ずっと日本に来たいと思っていましたので、初来日が叶って嬉しいです。音楽が大好きで、歌うことが大好き。僕が小さい頃から慣れ親しんだ曲もこのコンサートにはたくさん含まれています。ニンテンドーのゲームやファイナルファンタジー、ポケモンなど日本の文化も大好き!そういうものでスーツケースを一杯にして持ち帰りたいです。」
――今回のコンサートで最もお気に入りの曲と理由を教えてください。
マイケル「『ノートルダムの鐘』の「アウト・ゼア」。カジモド役としてオリジナルキャストとして出演したこと、また誰しも何らかのアウトサイダーになった経験があるのでは?その意味で、共感していただける曲だと思います。ミュージカル本編でカジモドはせむし男なので背中を丸めて歌いますが、今回は背筋をピンと伸ばしたまま歌えるのが嬉しいです。」
ジュヌヴィエーヴ「『レ・ミゼラブル』の曲です。私がアメリカデビューを果たした作品ですし、私が歌う「夢やぶれて」はもちろん、他の披露される曲も全て好きです。」
ローラ「『アナと雪の女王』の「レット・イット・ゴー」。皆さまが映画でご存知の『アナと雪の女王』がブロードウェイで開幕しますので、いち早くお届けできることが嬉しいですね。またマイケルとアンディのデュエット『春のめざめ』の「レフト・ビハインド」も楽しみ。『春のめざめ』はマイケルが演出し、アンディが出演。その2人ならではの空気感が大好きです。」
ロベール「一曲選ぶのは本当に難しい。どの曲も素晴らしいから。あえてあげるなら、『レ・ミゼラブル』の曲ですね。私の歌の教え子であるジュヌヴィエーヴがファンテーヌ役でデビューしたこともありますし、私は『レ・ミゼラブル』の曲のおかげで世界中のいろんな方々にお会いできた。多くを与えてくれた作品です。」
アンディ「『レント』の「シーズンズ・オブ・ラブ」です。大好きな作品で、ずっと聴いて育ちましたし、初めて観たブロードウェイ作品でもある。『レント』を観て、舞台の仕事をしたいと思いました。特別なナンバーで、最初にコードがいくつか鳴ったら、身体の中に何かが花開くような、自分の中の多くを覚醒させてくれる感覚になります。「愛とは何」というテーマは今とてもタイムリーなテーマだしね。」
――初めて5人で一緒に歌った時の感想を教えてください。
マイケル「僕はアンディと結婚しているから、会ったことがあって(笑)。ローラとは仕事したことがあります。ジュヌヴィエーヴとロベール、美しい2人には今回初めてお会いしました。舞台は一瞬で集中して作り、短期間で仕上げて、つながらなければいけません。この素晴らしい方々とこの素晴らしい場所でできるのが嬉しく、他の舞台と同じようにこの体験も素晴らしいと感じています。」
ジュヌヴィエーヴ「シーズンズ・オブ・ラブ」を歌った時に、声が溶け合う!と感じました。皆さん、生まれ育ちや舞台経験が異なりますが、舞台を作り上げていくメソッドではみんな同じ気持ちを持ち合っていると感じています。マイケルが言ったように、一瞬で力を合わせて作らなければいけない。それができて嬉しいです。」
ロベール「音楽に感謝!音楽が良い媒体となって、みんなをつなげてくれるのは嬉しいことです。」
ローラ「マイケルとアンディがこのコンサートに出演すると聞いて、ドキドキしました。2人のことは昔から知っていますし、アンディとは『ラグタイム』に出た時、姉弟役でした。2人がニューヨークで家具を貸してくれたこともあり、家族のような2人と共演できること、またジュヌヴィエーヴとロベールと出会えて嬉しいです。」
アンディ「国際的なカンパニーで、アメリカ人2人、イギリス人1人、フランス系カナダ人2人、しかも日本の制作により日本で上演されます。稽古場では3ヶ国語が飛び交っていて、この先、もっと分かち合えるようになるでしょうし、最後には同じジョークで笑えるようになるのではないかな。今、アメリカでは芸術に対する経済的支援が厳しくなっていますが、このコンサートは音楽によって人々がポジティブにつながることができる良い例だと思います。」
インタビュー・文/演劇ライター 三浦真紀