アニメやゲームなどでも人気のボーイズバンドプロジェクト「ARGONAVIS from BanG Dream!」を初めて舞台化する『ARGONAVIS the Live Stage』が、6 月に大阪・東京にて上演されます。脚本・演出の毛利亘宏さんにお話をうかがいました。
ボーイズバンドの奮闘を描く「ARGONAVIS from BanG Dream!」は、2020年に放映されたアニメ版、声優によるリアルライブ、今年配信がスタートしたスマートフォン向けリズム&アドベンチャーゲームなど、さまざまなメディアミックスを展開してきた作品です。舞台版はこれが初で、TV アニメ版のシリーズ構成・脚本、アプリゲーム版のシナリオ原案・監修を手掛ける毛利亘宏さんが脚本・演出を手掛けます。函館の大学に通う 5 人組バンド「Argonavis」と、札幌で活躍する 5 人組バンド「GYROAXIA」の物語が描かれ、各キャラクターを演じるのは、リアルライブでも演奏を行っている声優たち。果たしてどのような舞台になるのでしょうか。
――毛利さんはアニメ版もゲーム版も手掛けられていますが、舞台化をどのように思われていますか?
「僕はこのプロジェクトのスタートから関わらせてもらって、アニメをつくって、ゲームをつくってきました。畑違いの場から入ったのですが、今回、舞台という自分の畑のお仕事をいただけることがすごくうれしいです。本当にゼロから育ててきたプロジェクトなので」
――立ち上げから舞台版は見据えていたのですか?
「実はそれは全くないんですよ。リアルライブをやっているので、舞台化するとは言わないだろうと思っていました(笑)」
――どんな舞台になりますか?
「内容的にはアニメを追体験できる、というものです。でも、キャストが声優として演じていたキャラクターを、実際に本人たちが演じて、舞台として再現する。これは他にない演劇体験になるんじゃないかなという気がしています」
――ではアニメ版を観たことがある人もない人も楽しめるようなものになるのですね。
「そうですね。今まで作品に触れたことがない方でも絶対に楽しめます」
――バンド演奏もするのですか?
「もちろんです。お芝居をしながらライブもしますよ。演奏も本人たちがやります。演奏自体は昨年のリアルライブでもやっていることですが、今回は更に一歩進んで、芝居要素が加わって楽しんでいただけます。これまでの道のりの中で彼らもどんどん実力をつけているので、歌や演奏もかなり迫力のあるものになると思いますし、“演劇”という言葉ではくくりきれないようなものになると思いますよ」
――立ち上げから関わって「ARGONAVIS from BanG Dream!」という作品に、どのような面白さを感じてこられましたか?
「やっぱり“等身大”という部分でしょうか。例えば主人公の七星 蓮を演じている伊藤昌弘は、歌は経験があるけれどお芝居は未経験という状態でキャスティングされて、だんだんお芝居もできるようになっていきました。それこそ僕が脚色・演出を手掛けた舞台『モマの火星探検記』(’20年)にも出演してもらったんですよ。舞台をやってみない?って」
――ある意味、満を持しての舞台版なんですね。
「そう。だから僕も楽しみです。今回、2.5次元ではあるのですが、外見はキャラクターを完全再現するわけではないんですよ。2.5次元舞台はたくさん手掛けてきましたが、本人なのかキャラクターなのかのスレスレのところでやれるのは初めてで、スリリングだなと思っています」
――舞台版はアニメ版の追体験になるということですが、原点となるアニメ版の脚本はどのように考えて書かれましたか?
「この作品には、自分が演劇を始めて、夢を見て、仲間を集めてやってきた、という実際の体験がすごく反映されています。その中で感じた苦しみも喜びも全部込めています」
――普段は別の人がつくった作品を2.5次元舞台として脚本・演出を手掛けられると思うのですが、ご自身で脚本を書かれたアニメを2.5次元舞台化することは、自由度が増えるのですか?
「いえ、逆にこれは困ったぞと思いました(笑)。知らない方がつくった話なら、自分の解釈で壊して膨らませて、ということができるんですけどね。今回は素直にというか、もとの良さをそのままやることに力点を置いてつくることになると思います。つまり本来の2.5次元のやり方ではあります。ただ、さっきも言いましたが、自分が頭から関わらせてもらったプロジェクトを、自分のフィールドでやれるのはやっぱりうれしいんですよ。こんなに人に取られたくない演目、ないですもん」
――アニメ版との違いはどういうところになると思われますか?
「舞台なので、やっぱり生の感情が強く出るんじゃないかなと思います。それとシンプルに、アニメ版の収録から1年以上経っていますからね。当時よりも成長した彼らが今、アニメを追体験するストーリーでどういう芝居ができるのかというところも期待しています」
――芝居も深まりそうですね。
「はい。もちろんアニメの演出家の演出と僕の演出もまた違うと思いますしね。熱い青春ストーリーになると思いますよ。」
――ははは! 楽しみです。
「バンド演奏に関しても、劇中の曲はもちろんですが、効果音とかもその場で演奏してもらう予定です。2.5次元舞台としては異例なものになるんじゃないかなと思いますよ」
――待ちきれないですね。
「正直今、うまくいくイメージしかないですし、ファンの方は絶対に観たほうがいいよ!と言いたいです。僕自身も彼らのファンですからね。今回、一番のファンとしてお届けしたいなと思っています。」
インタビュー・文/中川實穂