野村萬斎芸術監督により、古典芸能という枠にとどまらず「“舞台芸術=パフォーミングアーツ”としての狂言」というコンセプトに基づき、2004年にスタートしたシリーズ『狂言劇場』。
今回は、狂言劇場には初登場となる古典狂言『武悪』『舟渡聟』に加え、『法螺侍』と『鮎』という現代狂言2作品が、あらたな配役、あらたな演出で世田谷パブリックシアターに立ち上がった。
開幕コメント 野村萬斎(総合演出・出演)
《Aプログラム》
『武悪』は劇場で上演したことで、作品のもつドラマ性がよりはっきりしたのではないでしょうか。一人一人のキャラクターの浮き上がり方や対峙する役者の緊張感が際立ち、よりスリリングな人間ドラマとなりました。常々ドラマとは「生きることを考えること」だと言っていますが、今回の舞台セットを含めた演出でも、「生と死」「生の地続きに死があること」が見えてくるのではないかと思います。
『法螺侍』は(洞田助右衛門は野村万作から野村萬斎へ、太郎冠者は野村萬斎から野村裕基へと)代替わりして、パワフルな作品へと“アップデート”しました。シェイクスピアと狂言のもつ古典的な手法はそのままでも、劇場で演じることで現代性を獲得するという不思議さは、まさに役者によって作品がアップデートされるからだと実感しています。新旧の時空の超え方と東西の文化の越え方を是非目撃していただきたいです。
《Bプログラム》
『舟渡聟』は狂言の名作ですが、舞台後方に琵琶湖の風景を出現させたことで、雄大な世界の中で頑張って生きていく人間を描きました。この作品では最年長(野村万作・90歳)と最年少(野村裕基・21歳)が船頭と聟を演じていますので、今回の「狂言三代」ならではの面白みを感じていただければと思います。
『鮎』は、劇場という現代的な空間へ移ったことで、原作の小説から感じた「都会と田舎論」を、より具体的且つ象徴的に描くことができ、これもある種の“アップデート”ができたのではないかと思います。狂言の衣装を着て世田谷パブリックシアターという現代の劇場に立つことで、古典と現代が地続きになっていることを自分でも感じることができました。
コロナ禍の現在、都会はある意味抑圧された場所、抑圧されればされるほど魅力的に感じる「毒」のような場所と捉え、非常に複雑な我々の現状を背負いながら、いま『鮎』を上演する意義を感じています。「読後感」のようなものを感じてもらえたなら、現代劇の劇場での狂言の在り方として、一つの手ごたえになると思っています。
ポストトーク開催決定!
26日の公演終演後にポストトークの開催が決定いたしました。
6月26日(土)12:00 Aプログラム
出演:野村萬斎 野村太一郎 高野和憲 中村修一 内藤連 野村裕基
6月26日(土)17:00 Bプログラム ※手話通訳あり
出演:野村萬斎 石田幸雄 深田博治 野村裕基
※各回の終演後に実施。開催回のチケットをお持ちの方がご参加いただけます。