ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」~うずまきナルト物語~が12月4日に開幕する。
2015年から始まった舞台シリーズで、4年ぶりの新章となる本作では、原作の「ペイン来襲編」「五影編」を中心として、師を亡くしたうずまきナルトが仇であるペインに立ち向かっていく場面や、兄であるうちはイタチの真実を知ったうちはサスケが、木ノ葉隠れの里への復讐に突き進む様子など、物語が大きく展開していく。
今作からうずまきナルトを演じる中尾暢樹と、長門(ナガト)を演じる玉城裕規に話を聞いた。
「中尾くんには光がある。ナルトとしても、座長としても、素敵な人です」(玉城)
――お稽古が始まって2週間ほどだそうですが、今はどのような状況ですか?
中尾 今はあまり全体のお芝居というよりは、一つひとつのパーツを作っている感じです。だからまだ全貌は見えていないですね。
玉城 そうですね。だからこれから稽古が進んで、今までこのシリーズを経験してこられたキャストの皆さんが本息でお芝居をした時にどうなるのか。そこは初めて参戦する僕らとしては基準にもなりますし、その時に「やべえ!」なのか「楽しい!」なのか、どういう感情が出てくるかも楽しみにしています。今は準備段階という感じですが、それでもきちんといろんなものを意識しておかないと、手遅れになる可能性がありそうで、気が抜けないです。
――ピリッとした空気感という感じですか?
中尾 いえ、演出の児玉(明子)さんもほんわかとした方ですし、シリーズの先輩方は温かい目で見てくださっているなと感じます。これまでのシリーズで積み重ねてきた安定感もありつつ、一緒に新しいものを作っている感覚がすごくある稽古場です。
――新鮮な体験はされていますか?
中尾 初めてアクションでカウントを取りました。
玉城 ははは!そうだよね。
中尾 映像と一緒に動かないといけないから、カウントが必要になるんですよ。
玉城 やっぱりダンス、アクション、映像と盛りだくさんなので。そういう意味で、僕もとても新鮮です。ただ僕自身は今回、一歩も動かないんですよ。
――長門役だから、ということですか?
玉城 そうです。これは初めてなので、新鮮な体験ですね(笑)。
中尾 僕も一歩も動かない相手と芝居するのは初めてです(笑)。
――ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」シリーズって熱量が大事なイメージがあるのですが、そこで一歩も動かずになにかを表現するってすごく難しそうです。
玉城 ただやってみると、思っていたよりはいけそうです。言葉にどう思いを乗せていくかは、これからですが。
――ちょうど今日、ナルトが長門のアジトに来るシーンのお稽古だったそうですね。おふたりは対峙してみていかがでしたか?
中尾 長門でした!
玉城 (笑)。
中尾 一緒にお芝居をしたのは今日が初めてだったのですが、玉城さんの目が闇を抱えていてすごかったです。それに長台詞がよどみなく出てくるんですよ。
玉城 でも僕がその長台詞を喋っている奥で、回想のお芝居が始まるんですよ。だから僕が喋っている間、お客さんは回想シーンのほうを観るんじゃないかなと思うと、2ミリくらい切ないです。
中尾 (笑)。
――それぞれの役の話もうかがえればと思います。まずは中尾さんのうずまきナルト役についてお聞かせください。
中尾 僕は子供の頃から『NARUTO』をずっと観てきましたし、ストーリーも全部知っているので、ナルトのキャラクター像は自分の中で確立しているものがあります。仲間を大切にしていて、真っ直ぐで、自分の信念を持っている、『ジャンプ』の王道の主人公、というような。ただ今作では、ナルトの“正義”が長門と出会って揺れ動いたり、サスケに対する複雑な感情があったりして、ナルトが大人になる瞬間が描かれているんじゃないかと思うので、そこは大事にしていきたいです。
――玉城さんの長門役はいかがですか?
玉城 長門の“平和”のつくり方はナルトとは違ったのですが、でもそれが間違いというわけではないと思っています。その中で諦めていた選択肢をナルトに託すっていうようなところが描かれているので。舞台ではストーリーがギュッと濃縮されているので、舞台ならではの感情の流れも生まれると思うんですよ。長門がナルトにどのタイミングで惹きつけられたかも、舞台上でのタイミングがあるでしょうし。そういうところがこれから通してやってみた時にどうなるのか楽しみですね。でも、長門が「平和でありたい」と思った気持ちは大事にして演じたいと思います。
――既に中尾さんのナルトを見て惹きつけられる部分はありましたか?
中尾 それ、「ない」とか言えなくないですか!?(笑)
玉城 (笑)。でも、稽古場でくたくたになるまでやっている姿や、それでもしんどさを見せずにやっている姿は、ナルトとしても、座長としても、素敵だなとすごく惹きつけられますよ。“光”がある方だと思うので。
――そういう強さはナルトを演じているからそうなのですか?
中尾 いえ、僕は普段から明るいヤツです(笑)。あまりため込まないし、気にしないので、くたくたになったとしても、マイナスの気持ちにはならないですね。よく「誰にも嫌われない人」と言われます。
玉城 ははは!
「愛され続けてきた舞台だということは、僕も随所で感じている」(中尾)
――共演者の皆さんはどんな印象ですか?
中尾 今作ではナルトとサスケは別ストーリーで進行していますが、僕は(佐藤)流司くんのサスケを見て刺激をもらっています。流司くんご本人は兄貴気質ですよ。僕が稽古をしていると、パッとあらわれて、「こうしたらいいと思うよ」とか「こうすると少しラクだよ」とか教えてくれて、どこかに帰っていきます。
――どこに(笑)。でも、ずっとやってきたキャストがそうやって教えてくれると安心しますね。アクションがたっぷりなぶん、大変なところもありますよね。
中尾 大変です!(笑)でもペイン役の輝馬さんが毎日練習に付き合ってくださるんですよ。アドバイスもたくさんいただいています。ほんと、いろんな人に助けてもらってますよ。
――演出の児玉さんともお話しされるのですか?
玉城 はい。こういう時代なのであまり雑談はできないのですが、稽古の中でコミュニケーションを取ってくださいます。ダメ出しが的確で明確でわかりやすいよね。
中尾 そうですね。台詞の中でもどこを立てるか、その理由も言ってくださるので、すごく勉強になります。児玉さんは舞台シリーズでナルトのことをずっと考えられてきた方なので、僕は負けないようにしないとなという気持ちです。
――そういうプレッシャーはありますよね。
中尾 そうですね。ナルトですからね……ナルト、ナルトっすよ?
玉城 (笑)。
中尾 でもだからといって背伸びしても仕方ないので、やるべきことをやるという気持ちでいます。必死で稽古するしかないなって。
玉城 この長く続いてきたシリーズでナルト役が変わるって大きなタイミングだと思うのですが、中尾くんは本当に「背伸びせずにやる」ということができているので、その姿は、同じように途中参加する僕らのプレッシャーも和らげてくれるし、かつ「よしやろう!」という気持ちにしてくれます。「よし、このシリーズをさらにいい作品にしていこう」というモチベーションを引き出してくれるというか。中尾くんの姿勢は『NARUTO』の世界観にもピッタリだし、ナルトらしさもあるなって思うし、とても安心感が生まれます。
――素敵ですね。
中尾 みんないい人たちなんですよ。
――今、稽古場で楽しく感じているのはどういうことですか?
中尾 まだパーツを作っている段階ですが、それでも、アクションをやったり、台詞を言ったりしている時に、「あ、今のめっちゃナルトだった」となる瞬間があるんですよ。そういう瞬間はやっぱり楽しいです。
――その「ナルトだった」というのは、中尾さんが子供の頃から読んだり観たりしてきたナルトのイメージと重なったということですか?
中尾 そうです。「あの感じ!」っていうのがあるので。
――玉城さんはどうですか?
玉城 今はパーツの稽古をしているからこそ、それが組み合わさっていく瞬間が楽しいです。キャストも(感染症対策で)なかなか揃わないので、皆さんが揃うタイミングには、何かが膨れ上がる感じがして楽しいですね。
――ストーリーに対してはどんな風に感じられていますか?
中尾 今作は、いろんな正義のぶつかり合いだと思っています。だからこそ、“敵”“味方”ではなく、登場する人みんなを魅力的に感じる舞台だなと思いますし、感動します。個人的には、終盤に僕にとって憧れだったシーンがあるので、それができるのも楽しみです。
玉城 今、中尾くんと言っていたことにも重なりますが、僕もいろんな登場人物の想いに共感できます。ちょっと重いし考えさせられる内容ですが、最終的には「前を向いてちゃんと歩いていこう」と思ってもらえると思う。だから今の時代にも、人生にも、プラスになるような作品にきっとなりますし、そういうふうにしたいです。
――今作では、前作までの公演イメージソング「光追いかけて」でもお馴染みのFLOWさんによる「燈(ともしび)」が新たなイメージソングになるそうですね。
中尾 そうなんですよ。この舞台のために書き下ろしてくださいました。FLOWさんのアニメ版『NARUTO』のオープニングテーマ曲は、僕もカラオケで歌っていたくらいなので、今回また新曲を提供していただけることがただただ光栄ですよね。
――どんな楽曲ですか?
中尾 熱いです。ナルトががむしゃらに生きる姿や、戦う姿、苦悩も思わせる音楽で、メローな中に希望が感じられます。ぜひ楽しみにしていてほしいです。
――開幕も見えてきましたが、今はどんなお気持ちですか?
玉城 この舞台版は原作の内容を凝縮した脚本になっているのですが、そこでちゃんと“濃くする”ということをしないと、単純なダイジェストになっちゃう危険性があると思うんです。だけど、“削った”ではなくて“凝縮した”というものになれば、胸焼けするほどの見応えが生まれると思うので、胸焼けさせましょう!という気持ちです。でも今の段階でもとても魅力的な光が見えているので、その光をこれから更に大きくして、皆様に素敵なものを与えられるような作品にしたいです。期待大で来てくださっても、それを超えたものをお届けできると思います。ぜひ期待大でお越しください。
中尾 観に来てくださった方に「『NARUTO』の世界が現実にある」と思ってほしいです。リアルの世界で出来るの!?というようなものも、どうにか表現しようとがんばっているので、お客様には『NARUTO』が観られた!という気持ちで帰ってほしいです。ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」が愛され続けてきた舞台だということは、僕も随所で感じていますが、それを作ってこられた皆さんに囲まれている今作もいいものになるとしか思っていないです。僕らの熱を間近で感じていただいて、しあわせになってほしいです!
ライター 中川實穗
©岸本斉史 スコット/集英社
©ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」製作委員会2021