人と比べてしまうのはなぜ?黒谷友香がカリスマ美容家を熱演
成功者が集う別荘地での“内見バトル”が描かれる舞台「あの子より、私。」で、主演を務める女優・黒谷友香。つかこうへい、宮本亞門など名だたる男性演出家の舞台に出演してきた彼女だが、今回は女性演出家の岸本鮎佳が脚本と演出を手掛ける。
黒谷「岸本さんの作品は以前から観ていましたし、女性の演出家さんとご一緒するのは初めて。そこも興味があって出演を決めました。岸本さんの作品は、どう繋がって、どうなっていくのかが見えてこないシチュエーションが多くて、見入っているうちに、いつの間にかこんな気持ちにさせられてしまった、という面白い感覚になる。映像ではなく、生の舞台で一緒に頑張れたら、きっと面白いものをお見せできるんじゃないか、と思ったんです」
物語では、内見に来た成功者らが、互いに幸せや価値観をつい比べてしまう姿が描かれていく。黒谷は、元モデルでカリスマ美容家として成功を収めているという主人公の兎谷夕美を演じる。
黒谷「いろいろと成功していて、みんなからみたらすごく幸せな女性…ですけど、絶対にそんなワケない。完璧な人なんていないから、どう演じたら面白くなるかな、と考えています。私が『あの子より、私。』って思ってしまうのは、すごく小さい事で言えば、車の運転。たとえば縦列駐車は、人が見ているときに限ってうまくできなかったりしません?それで“あの子のほうが上手いな”って思ってしまう(笑)。私自身は根に持つタイプではないけれど、でもその気持ちがお客さまと共有できる部分なので、しっかり表現したいです」
劇中で夕美は、かつての親友と再会を果たす。そんなとき、相手の変化に戸惑いを覚えることも少なくないが、黒谷自身ならどう振る舞うのだろうか。
黒谷「なんか自分の想像以上のところに行っちゃったな、いろいろあったんだなと思うかな(笑)。それで、また仲良くなれたら聞き出そう、なんて思います。久しぶりでも、きっとまたそういう関係にはなれるはずだし、そんな風に変われるんだ!って刺激ももらえると思う。人生いろいろだな、って最近よく感じます。20代30代は自分で精一杯だったけど、40代になって、人の人生のお話を聞きたいなと思うようになりました。……昔、仲良かった人とかは今の私をどう思っているんだろう?そっちも気になりますね(笑)。きっと見に来てくださった方も、“あの子どうしてるだろう?”と思い返したりするんじゃないかな?」
人と比べて羨む気持ちが生まれたり嫉妬を覚えたりする経験は、きっと誰にでもある。そんなとき、彼女はどのように気持ちを持っていくのだろうか。
黒谷「ちっちゃいなって認めること(笑)。どん底まで落としちゃう。これも私だと認めて、笑い飛ばすんです。でも、若いころは夢中すぎて、そんな気持ちにもなりませんでした。年齢を重ねてから、やっぱり若い子は肌もキレイだし、才能のある子はスゴイし……と思うことがあって。そんなときには、私ちっちゃい、私もイイところあるだろ、と(笑)。その気持ちをバネにもできるし、自分をかわいがってあげるきっかけにもなる。そんな気持ちも、いいんじゃないかなって思いますね」
映画やドラマでも活躍している彼女だが、今回は舞台だからこそできることを目指していく。
黒谷「空間も気持ちも一緒に感じていただける、お客さまの心の幅が広がっていくような感覚になるのは舞台ならでは。やっぱり、来ていただける方は女性が多いのかな? どんな方が来ていただけるのか、私も楽しみにしています」
インタビュー・文/宮崎新之
Photo/篠塚ようこ
※構成/月刊ローチケ編集部 12月15日号より転載
※写真は誌面とは異なります。
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【プロフィール】
黒谷友香
■クロタニ トモカ モデルとしてデビューした後、’95年に映画『BOXER JOE』のヒロイン役を務め女優に転身。以後、数多くのドラマや映画に出演している。