2007年トニー賞で、主演のデビッド・ハイド・ピアーズが主演男優賞を受賞したほか、作品賞、脚本賞、作詞作曲賞、演出賞、主演女優賞、助演女優賞の計8部門でノミネートされたのがミュージカル『カーテンズ』。日本カンパニーの公演は2010年以来、約12年ぶりに、まったくの新演出・新キャストで生まれ変わる。
作品の舞台、1959年のボストン・コロニアル劇場。新作ミュージカル「ロビン・フッド」のトライアウト公演中、舞台上で出演者が何者かに殺害されるところから物語が始まる。
「ロビン・フッド」主役もつとめる看板役者・ボビー役は、今回がミュージカル初出演の三浦翔平だ。
――まず、この作品のお話が来た時のお気持ちと、出演を決めた理由を教えてください。
(本作品の演出・出演)城田優さんと個人的に仲が良くて、彼や三浦春馬さんとよくミュージカルや演劇の話をしてたんです。ぼく自身、ミュージカルを見るのは好きなので、彼らが出ている公演を見に行った後、ご飯を食べた時に「やってみればいいじゃん」って話があったんですよ。個人的にもやりたい気持ちはあるんだけれども、タイミングとかいろんな条件が合わないとできないんだよねと話をしていたら、(城田さんから)「いつか演出するときに、声かけるよ」と。
しばらくして実際に城田さんが演出をする作品の話があったときは、タイミングが合わなくて。「じゃあ、次、『カーテンズ』っていうのやるんだけど出てみない?」って言われて、出たいと言いました。正式に出演が決まったので、気合い入れてやんないとなっていうところが現段階ですね。
ミュージカル(出演)が初めてなので、ノウハウも知らないですし、自分の力量も知らない。ストレートプレイと違ってどうやって作っていくかも知らないので、初めてのことだらけ。稽古にも入ってないし、正直、まだ本当に何もわかんないんですよ。手探りでこれからどうなっていくんだろうというところです。
――ミュージカルを観るのがお好きとのことですが、ミュージカルの魅力とは。
ミュージカルだけじゃなく舞台が好きで、勉強目線で見ちゃうんです。あの人うまいな、ああいう感じも出来るのか、とか。(ミュージカルでも)歌と芝居が急にカーン!て変わるのは好きじゃないんですよ。そこに気づかないような作品がすごく好きです。
ミュージカルってやっぱり最終的に「ショー」ですよね。演劇だと「しーん」と暗転して終わるパターンもありますが、ミュージカルは、じゃあ終わりです!ってなって、みんな出てきて(にぎやかなカーテンコールがある)…あの感じ、好きです。ブロードウェイの感じも好きですし。気持ちが晴れるというか、あー楽しかったなと帰れるのがミュージカルの良いところかな。作品にもよると思うんですけどね。
――三浦さんは映像作品に出演されている印象が強いですが、映像作品とは異なる、「舞台」の魅力・楽しみとは。
映像は、編集というもので、尖っていたものをきれいなまん丸に整える。舞台は、その(尖っていたものが)きれいに取れてないところが面白いかな。そこが味で、魅力。(セリフの)間だったり、共演者との関係性だったり、完璧に編集されてない状態で出されてる素材が舞台の面白さだと思うので。ハプニングも起きるしセリフが飛んじゃう時もあって、そこをどうリカバリーして、幕を下ろすまでつなげるか。
(映像作品のように)テイク撮って終わったらスパッとおしまいではなく、本番が終わって次の日が休みでも、あれ、なんかちょっとまだ余韻あるな…舞台ならではのぬめぬめした感じっていうんですか。なんか好きなんですよね。
絶対的に違うのは、舞台は幕が開いたら演者のもの。映像は撮り切ったら監督や、編集者のもの。まったく勝手が違うというか、別物ですね。ただ、今回は演出家も(出演者として)出てますからね。勝手なことやったら見つかっちゃうな(笑)。
――出演が決まってから、城田さんと、作品についてお話しされましたか。
ぼくの役、振付師なんですよ。「翔平、ダンスできるのか?」と聞かれて、やったこともないしわからないと言ったら、ダンスのレッスンに行こう!となって城田さんも来て「まあ大丈夫か!じゃ、ソロ(のシーン)増やしとくね」って。そりゃ話し違うよ(笑)っていう、そんなノリです。
――ダンスをやってみて、いかがですか。
ちょこちょこ合間を見つけてレッスンへ行って、基本的な形は練習してます。先生に話を聞くと、ダンスにもいろいろな種類がある。クラシックなのかロックなのかポップなのかジャズなのか。(今回は)どれをやるのか聞いてもいなくて(笑)とりあえず使えそうなやつをやっていきましょうとやり始めています。
――城田さんが演出をされることについてはどのようにお考えですか。
楽しみです、純粋に。非常にクリエイティブな人間なので。
ぼくは新人だし彼はベテラン。お仕事として一緒にやるわけなので厳しい面もあると思うし、歌のお芝居については言われた通りにやります。もちろん思ったことは言いますけど、言われた通りにやっておけば間違いないかなと思ってます。リスペクトの心をもって一緒にやることが大事だと思うので。
――演出家・城田優へのリクエストはありますか。
彼の目指す「セリフと歌の境目をいかになくすか」「役の歌をどうやって出すか」は詳しく追求したいところかな。彼が今回、目指しているところらしく「役の声で、役の歌で」というのを強く言っていて。芝居の時はふつうに芝居をしてるんだけど、歌になるとこーうやって(全然違う声を作って)歌うのはナンセンスだっていうのが彼のこだわりらしいので、そこはちょっと時間かけてやってこうかなって思ってます。
――城田さん以外のみなさんとは初共演ですか。
全員、初めましてなんですよ。他の作品で観てるはずなんですけどね。
(ニキ役の)菅井さん、『飛龍伝2020』出てましたよね。観ました。『飛龍伝2020』はエネルギッシュで、熱量を全面に出す作品だったので、今回はどうなるのかなって楽しみです。
――ミュージカルに多数ご出演の方も多いです。
逆に安心でしかないです、僕は。でっかい箱に乗せてもらえるって。
――かなり入り組んでいる物語ですが、台本を読んでみていかがですか。
基本的にはコメディなんですけど、サスペンスコメディっていうんですか、サスペンスの部分も強いし、でもコメディでもある。初めて観る人も楽しめるし、2回目観るとなぜ(ストーリーが)そうなってるか楽しめる。楽しく見られる作品かなと思います。
――城田さん演じるチョーフィー警部補は、仕事で犯人を探さないといけないのに、ミュージカル好きが高じて舞台の内容に口を出してしまう役どころ。三浦さんは、本筋でやらなければいけないことがあるのに手を出してしまうことは何かありますか。
いま連続ドラマを撮ってて、(並行して、ミュージカルの)台本も読まなきゃいけないし練習もしなくちゃいけない。年末じゃないですか。仕事がいっぱいあって…小パニック状態に陥ると現実逃避したくなるので、趣味のサーフィンに逃げがちです。
――ということは、チョーフィーの気持ちはわかる。
わかります。好きなことについつい行ってしまう。
――ご自身の役、ボビーの気持ちは。
あまり共感出来ないです。(ボビーのように)そんなにいい人じゃないんで(笑)。
――いい人じゃないとみせて、実は、というところがあったりして。
(戯曲には)ボビーのバックボーンがあまり描かれていなくて。過去にこういうことがあって、実はこういう人間でという部分がわからないので、作っていかなきゃいけないんですけど、(戯曲のボビーは)単にいい人じゃないですか。ただ、城田さんいわく(今回は)とにかくキザにクールにやってくれと。なのであまりおふざけは出せないのかなと、ちょっと残念なところがあります。
――ボビーの役作りをするうえで、大事なことは。
まだ全然役作りできてないんですよ。まだ脳が向いていないです。
まず楽曲を聞いて、慣れるしかないなあ。ダンスは体を動かさないと何ともならないし、とにかく楽曲だけ全部入れちゃわないと、それこそセリフのように歌を歌うって無理だと思うので、曲は流し聞きでずっと入れとこうかな。そこから何か湧いて出てくる、ボビーらしさって何だろうっていうふうに考えていけば、本番までには間に合うかな?最悪、間に合わなかったら、歌えない・踊れない「カッコ 看板俳優」になるかもしれないです(笑)。
――今はダンスレッスンを積まれているとのことですが、焦りや緊張よりも、プロとしてやる!という感じですか。
稽古に1月から入って公演が2月26日開幕だから(ドラマ撮影終了から、公演開幕まで)1か月半くらいしかないんですよ…焦ってます。できるのかな?芝居部分は何とか形にできると思うんですけど、歌とダンスは…これはもう、できなかったらできない役に変えるしかないですね(笑)。
――コメディーをやることについてはいかがですか。
ボビーはあんまりコメディじゃないのですが、作品全体としては非常にコメディなので、城田さんのコメディセンスにかかってくるんじゃないですか。ウケるかコケるか全部城田さん次第だと思います!…冗談です(笑)。
――それだけ城田さんを信頼していらっしゃる。
信頼はもちろんしてます!
コメディって結構難しいじゃないですか。ブロードウェイ作品の笑いを翻訳した時に、こっちの笑いに果たしてなるのか。向こうの笑いとこっちの笑いのツボが全然違うから、いかに地ならしするかが稽古での課題になってくると思います。基本的には楽しいエンタメ作品になるんじゃないかと思ってます。
――最後に、公演を楽しみに待っているお客様へ、お誘いの言葉をいただけますか。
この間、城田さんと米倉涼子さんが出演した(『SHOWTIME』)を見に行ったんですけど、その時に感じたのが、いま、世界が暗い気持ちになりやすい時だと思うんですけど、ミュージカルやエンタメを通して、Show must go onの精神で、どんな時でもあきらめないで楽しい心で進んでいってくださいという願いを込めて、この作品を作ります。
見てくれたお客さんの心を震わす、元気になってもらえる作品になると思いますので、楽しみにしている方も、ちょっと疲れてる方、元気がない方ももちろん大歓迎です。2月26日、東京国際フォーラムでお待ちしています!
取材・文/ローチケ演劇部