室龍太が主演、劇団PEOPLE PURPLE主宰の宇田学が書き下ろす、舞台「ON AIR~この音をキミに~」が、7月28日から新国立劇場 小劇場で上演される。2020年に上演を予定していた本作だが、コロナ禍により全公演上演中止に。今回、脚本を改訂して新たに公演することとなった。
物語の舞台は、とある地方のラジオ局。主人公の音響効果を行う音効マン・桜木真を中心に、混沌とした現代で懸命に生きる人々の姿を映し出す。
桜木真がやってきた町の高校生で、真との関係を深めていく上島明人を演じるのは小西成弥。ミュージカル『刀剣乱舞』の水心子正秀役や、『ダイヤのA』The LIVEの成宮鳴役など、2.5次元作品をはじめ、舞台、ミュージカルで活躍する小西に、本作に挑む思いを聞いた。
――「音」や「ラジオ」を通して人間のあたたかさを描く本作ですが、舞台作品で「音」や「ラジオ」をテーマにしているのはとても興味深いですね。
そうですよね。僕も面白いなと思いました。
――出演が決まった時は、まずどんなことを感じましたか?
小さい頃から、家の中や車に乗っている時にラジオを聞いていた思い出があって、僕にとっては身近なものだったので、ラジオを題材にしてどんな作品ができあがるんだろうとすごく楽しみでした。
――今回、小西さんが演じるのは、思春期まっただ中の高校生の明人というキャラクターです。小西さんからみた明人はどんな人物ですか?
幼少期に母親の再婚で舞台となる町にやってきたという、少し複雑な家庭事情を抱えている青年です。あることがきっかけに、心を閉ざしてしまい、人とは積極的に関わらないようにしていました。ですが、室さんが演じる真と出会い、変わっていきます。真の相棒的な役どころです。
――思春期の高校生という点では、共感できる部分もある役柄ではないですか?
僕は高1の秋には上京して一人暮らしを始めたので、あまり親に反抗した記憶もないですし、思春期で悩んでいたということもなかったので似ているところが多いわけではないですね。ただ、僕の両親も小学生の頃に離婚して、母子家庭で育ったということもあり、明人の親への思いというのは理解することはできるので、彼の家庭環境がどう影響して彼を作っていったのかを考えながら演じたいと思っています。
――小西さんは2.5次元作品でもご活躍されていますが、原作がある作品のキャラクターを演じるときの役作りと、オリジナルストーリーでオリジナルキャラを演じるときの役作りでは何か違いはありますか?
原作がアニメだったりすると、すでに声優さんが声でお芝居をされているので、そのイメージを踏襲しながら演じるようにしています。ですが、今作のようにオリジナルの作品は、台本からイメージや想像を膨らませていき、役を作っていきます。自分の中から湧いてきたもので役を形作っていくことが多いので、そういう意味ではやりがいもあります。(今作で演じる)明人は、複雑な環境の中で育ったという、自分が経験していないことを経験してきた人物なので、そうしたところまで当事者意識を持って彼のことを考えて作っていきたいと思います。
――脚本・演出の宇田さんや共演者の方とはもうすでにお会いしましたか?
いえ、まだお会いできていないので、稽古が始まるのが楽しみです。室さんは、相方となる役どころですし、今作の共演者の中で一番年齢も近く同じ関西出身なので、仲良くさせていただけたら嬉しいです。僕は人見知りなんで、ちょっと頑張ってお声かけさせていただこうかな、と。
――初対面の方と距離を縮める秘策はあるんですか?
これがないんですよ(笑)。
――普段は、話しかけられるのを待つタイプ?
どちらかといえばそうです。ですが、今回は、できるだけ自分から話しかけていきたいと思います!
――今回は、室さんはじめ、初共演の方が多いですね。そういう意味でも学ぶことが多い現場になるのでは?
そうですね。僕の知らない世界を知っている方も多いので、すごく楽しみです。
――演出の宇田さんの作品はご覧になったことはありますか?
はい! 『ORANGE』を映像で観させていただきました。昨年、ミュージカル『刀剣乱舞』-東京心覚-でご一緒させていただいた三上市朗さんが(『ORANGE』に)出演されていらっしゃったんですが、とても素敵な作品でした。要所要所に笑いが入っていながらも感動する作品で。なので、宇田さんの演出を受けるのも楽しみです。
――ところで、主人公の真は音響効果を行う音効さんという設定ですが、小西さんは「音」に対するこだわりはありますか?
移動中には音楽を聴くことが多いのですが、あまり音に対するこだわりはないですね…。でも、一昨年、バイノーラルマイクを買ったんですよ。ASMR用のもので、咀嚼音だったり耳元で話しているような声が録音できるんです。マイクに両耳がついていて、話す場所によって聞こえ方も変わるというものを買ったんですが…1回しか使ってないです(笑)。
――配信をしようと思って買ったんですか?
コロナ禍になって、自粛生活が続いていたので、何かしたいなと思って…。とりあえず買ってみたんですが…使わなかったんですよねぇ(笑)。配信も、今のところやる予定もなくて…(笑)。
――いつか聞けることを期待しています(笑)。幼い頃からラジオをよく聞いていたということですが、このお仕事をするようになって、ラジオに出演する機会もできて、ラジオがより身近な存在になったのではないですか?
ニッポン放送の「刀剣乱舞2.5ラジオ」も出演させてもらいましたし、別の放送局でもマンスリーで出演させてもらったりしたので身近ではあると思いますが、ラジオはすごく難しいなと思いました。僕はこれまでラジオ番組では自由に喋って良いと言われることが多かったので、大丈夫だったのかなって。
――ラジオに出演するときには、何か意識していることはあったんですか?
落ち着いて話すようにはしてました。普段、笑い声が出過ぎてしまうので、少し落ち着いて話すように、と。はたして何が正解だったのかは分かりませんが(笑)。
――では、「音には人を救う力がある」と信じて突き進んでいく真の姿を描いた本作にちなんで、小西さんは「音」や「音楽」の力を感じることはありますか?
もちろんです。音楽はその一瞬で人の心を揺さぶる力を持っていると思います。僕も辛いときには楽しい音楽を聞いて元気をもらったり、寄り添ってもらったりしてきたので、小さい頃から音楽とともに生きてきたと思っています。それから、ミュージカルを観るのも好きなのですが、やはりミュージカルの歌の力もすごく感じます。
――普段は、どんな音楽を聞かれるんですか?
子供の頃からMr.Childrenが好きでずっと聞いています。小さい頃に聞いていた曲はいつ発売されたんだろうと調べると、僕が生まれた年だったり、生まれる前だったりするのですが、色褪せない歌ばかりですごいなと思います。
――今年は年初から舞台出演が続いていますが、小西さんにとって舞台に出演することの魅力はどんなところにありますか?
やはり観に来てくださったお客さまがカーテンコールですごく楽しそうな表情をされているのを見たり、SNSなどで感想をいただけたり、直接お客さまが喜んでくださっているのを感じられるのが舞台の魅力だと思います。もちろん、僕自身も舞台でお芝居をするということ自体が楽しいですが、お客さまに喜んでいただけると、よりやっていて良かったなと思えるんです。
――最後に、改めて本作への意気込みをお願いします。
今回、初めて共演する方ばかりなので、人見知りではありますが、皆さんと早く打ち解けられるように頑張ります(笑)。ラジオの魅力や真を中心とした人間ドラマをしっかりとお客さまにお届けしたいと思っております。ぜひ劇場にお越しください!
取材・文/嶋田真己