舞台「パタリロ!」~ファントム~ 加藤 諒&宇野結也 インタビュー

原作コミックの再現力の高さに加え、2.5次元作品の強みを活かした奇想天外な演出の数々&一度聴いたら忘れられないキャッチーな楽曲なども人気の舞台「パタリロ!」。2021年上演の「霧のロンドンエアポート」に続き、原作でも人気の高いエピソード「ファントム」が9月1日より東京、大阪で上演される。当たり役といえる主人公・パタリロ・ド・マリネール8世(通称パタリロ)を演じる加藤 諒、美少年キラーの凄腕エージェント・バンコランを演じる宇野結也に、シリーズの魅力や新作の見どころについて語ってもらった。

 

――まず2021年の前作「霧のロンドンエアポート」を振り返っていただきたいのですが、共演された感想やお互いのお芝居の印象など、教えていただけますか?

 

宇野「前作では、座長の諒くんが引っ張っていってくれた印象が強いですね。諒くんはこの作品を背負う覚悟を持って、いろんな面に気を配っていてくれていたと思うんです。座長が気さくで優しい方だから座組の雰囲気も温かくて、若いキャストもみんなのびのびと演じられていたんですよね。なんだか家族とか親戚の集まりみたいな空気感があって……」

 

加藤「嬉しいー!稽古場では僕と歌姫役のあたちゃん(中村 中)、魔夜メンズのみっちー(小沢道成)の大人3人が若い子たちを見守っている感じでしたね。思い出したんですけど、前作では宇野ちんとマライヒ役の後藤 大くんは、他のメンバーよりちょっと遅れて稽古に参加したんですよね。でも2人は完璧にセリフを入れてきていて、他のみんなが“僕らも頑張らないとマズい!”って焦っちゃって」

 

宇野「それは申し訳なかったです(笑)」

 

加藤「宇野ちんは真面目にきっちりお芝居をするので、ギャグ満載のシーンでも”面白い“を狙ってやるというより、全部に真面目に取り組んでくれるのが逆にすごく面白かったんですよね」

 

 

――舞台「パタリロ!」という作品そのもののカラーでもあると思うんですけど、前作での宇野バンコランのお芝居の振り切り具合はすごかったですね。歌ももちろんお上手なんですが

 

加藤「シーズン2になってパタリロ以外のキャストが変わりましたけど、それぞれの良さがあるんですよ。スタイリッシュでかっこいいけど、真面目で全力投球で……というのが宇野ちんのバンコランで、そこが僕は面白いなと思っていました。あとシーズン2のバンコランとマライヒは、すごく自然なカップル感がありましたね。『霧のロンドンエアポート』はシリアスなシーンもあったので、そこでは繊細なお芝居をしていてドラマチックにも感じました」

 

宇野「僕と後藤くんも、意識してそういうお芝居に持っていった感じがありました。原作の中でも名作と言われているエピソードなので、シリアスなシーンは繊細に持っていきつつ、ふざけるところは振り切って!みたいな高低差を作ったほうが面白いかなって思って」

 

――マライヒ役の後藤さんと3人一緒のシーンが多かったと思うんですけど、どんな風にコミュニケーションを取られていたんですか?

 

宇野「僕と後藤くんはいろんな作品で共演しまくっているので、どの作品の思い出かわからないくらい、時間を共にしているんですけれども」

 

加藤「後藤くんとは「霧のロンドンエアポート」の直前の舞台も一緒だったんだよね?」

 

宇野「そうそう。だから一緒にいるのがあまりにも普通な感じなので、この僕らの空気感を「ファントム」にも活かせていけたらいいなと思っています」

 

加藤「キスシーンとかはしにくいご時世ですけど、それをしなくても愛し合っているっていうのがちゃんと伝わる関係性というかね?」

 

宇野「愛し合ってます、フフフ」

 

――シーズン2から加わった中村 中さんの立ち位置もユニークですよね。楽曲面で重要な部分を担いつつも、いろんなキャラクターとして作品を盛り上げてくださっていました

 

加藤「あたちゃんはその名の通り歌姫役から木の役までやっていたんですけど、木の役は自分から“やりたい!”って直訴して、演出の小林顕作さんが作ってくださった役だったんですよ。タマネギ部隊とかの子とかが稽古に参加できない時にあたちゃんが代わりに入ってくれたこともあって、熱量がすごかったです。タマネギ部隊が“アタル劇団”って呼ばれてました」

 

宇野「あたちゃんがお芝居への情熱を背中で見せてくれたおかげで、タマネギ部隊の面々もかなり触発されていたと思います」

 

 

――少し話が変わりますが、前作から舞台「パタリロ!」に参加された宇野さんは、この作品について率直にどう思われたんでしょうか?

 

宇野「最高だな!と思いましたね。こんなに伸び伸びと楽しくお芝居ができる環境があるのかという新鮮な驚きがありました。顕作さんと諒くんの2本柱で作ってくれる世界に、僕たちはひたすら乗っかっていった感じでした。自分たちのアイデアを稽古場に持っていってそれが採用されたりもしたんですけど、振り返ってみると僕たちが“やってやった”というより、顕作さんが言いやすい空気を作ってくれて、その手のひらの上で転がされていたんじゃないかな?って思うようなところもありました」

 

加藤「顕作さんがキャストの考えを受け入れてくださる方で、本当に自由な舞台なので、これまでに出てくれた子たちもみんな、楽しいって言ってくれますね。結構俳優さんが見に来てくれて“自分も出たい”って言ってくださるんですよ。この現場は稽古場からエンターテイメントみたいな感じで、僕も本当に楽しいです」

 

――舞台「パタリロ!」の魅力の1つにキャッチーな楽曲もあると思うんですけど、前作での某人気メタルバンドを彷彿とさせるようなマライヒの持ち歌で、宇野さんの小道具のギターをちゃんとオマージュしていたのにも、つい笑ってしまいました

 

宇野「僕は稽古期間中にそのギタリストさんの動画を何度もリピートで見て研究してました。絶対誰も見てないだろうな……って思いながら、メタル風の弾き方を意識したりして」

 

加藤「そういうところにもクオリティを求めるのが宇野ちんなんですよね。そして「パタリロ!」を観に来ている方々は、そういうディテールへのこだわりもしっかり見てくださっているんじゃないかと思います。僕は顕作さんに『相棒』の水谷 豊さんの物真似をムチャぶりされてやったけど、あれはお客さんに絶対伝わってなかったと思うし」

 

宇野「いや、あれにはホントに笑っちゃいました」

 

――今回の「ファントム」にはCIA諜報員・ヒューイット役の丘山晴己さんや占い師・ザカーリ役の佐藤永典さん、魔術師・ミスターフー役の井阪郁巳さんなど、新たに濃いキャストが加わりますね

 

加藤「初演の時に、原作者の魔夜峰央先生が“この作品でブロードウェイに行こう”と言って下さって“そのために英語とバレエをやっておきなさい”みたいに言われたんですけど、実際にブロードウェイに立った方(丘山)が出てくれるというミラクルが起きまして。僕は初共演ですけど、本当に楽しみなんです」

 

宇野「丘山さんは諒くんのことをいろんな作品で見ていて、すごく好きだって言っていましたよ」

 

加藤「ホントに!? 大人のキャストも増えるのも心強いです。あといくみん(井阪)は同じ事務所の後輩で、昔はオールで人狼ゲームをやったりしていたので、これまた嬉しいですね。彼が演じるミスターフーは超能力を操る魔術師で、原作ではバンコランと脳内だけでやり取りをするシーンもあるので、それをどう表現するのかも気になります」

 

――今回は色男のバンコランを巡ってマライヒ、ザカーリ、ミスターフーが三つ巴の争いを繰り広げるというウワサですが

 

宇野「ザカーリは原作でも人気のキャラクターなんですけどこれまた結構、クセのあるキャラクターなんですよね」

 

加藤「サトちゃん(佐藤)は結構前ですけどオーディションで一緒になったことがあって、その作品には2人ともご縁がなかったんですけど、その時に喫茶店でめっちゃお話ししたんですよ。だから仲良しだって僕は勝手に思ってるんですけど、そんなサトちゃんと今回本格的にご一緒にできるので、嬉しいなと思いますね」

 

――今回は原作の連載45周年を記念した作品ということもあるので、お祭り感みたいなものもテーマとしてあるんでしょうか?

 

加藤「今回は歴代のキャストが日替わりゲストとして来てくれるのと、あと作品の中でレビューショーをやるんですよ。ファン投票も参考にしながら、歴代の舞台「パタリロ!」の楽曲でセットリストを組んだショーになるので、今まで応援してきてくれた方々とも一緒に楽しめる内容になっていると思います」

 

――特に楽しみにしている日替わりゲストはどなたでしょう?

 

加藤「やっぱり、ミーちゃん(魔夜峰央)先生じゃないかな? 宇野ちんはコロナの関係で、魔夜先生にはあんまりお会いできてないもんね。前回の千秋楽にファミリーで来て下さったんですけど、僕と顕作さんでお客さんに最後のご挨拶をしていたらミーちゃん先生が“仲間に入れてよ~”みたいな感じで参加されて、最終的に3人のトークショーみたいになったんです」

 

宇野「先生は誰よりも理解がありますからね、この作品に(笑)。ゲストの方々には知っている人も多いんですけど、マライヒ役だった佐奈宏紀くんは突き抜けた演技ができる役者さんなので、最高に楽しみです」

 

――新旧マライヒが揃うのは胸熱ですね

 

加藤「できれば佐奈くんにはマライヒの衣裳で出てもらって、後藤くんとキャットファイトとかしてほしい……!」

 

宇野「“僕が本物のマライヒよ!”ってやりあって欲しいですね」

 

――日替わりゲストの方もいらっしゃるし、できれば何回かリピートして楽しんでいただきたいですよね

 

加藤「この舞台ではタマネギ部隊のコーナーっていうのがあるんですけど、アドリブでどんどん尺が伸びてくるんですよ。そのベースを作ったのが、初演でタマネギ部隊を演じた今回の日替わりゲストの1人・石田 隼くんだったので……タマネギ部隊は初出演の面々はどこか初々しさがあるんですけど、初演の面々に至ってはちょっと熟されたような味わいがあるんですよね(笑)。日替わりでそんな魅力もお楽しみいただけるんじゃないかと思います」

 

――ワクワク感が膨らんできたところで、今作への意気込みをお願いします

 

加藤「今回の「ファントム」のストーリーにはミステリー要素があったり、バンコランとマライヒを巡る恋愛模様もより複雑になってきます。そして超能力使いのミスターフーが活躍するシーンを舞台でどう表現するのか?というのも見どころの1つになってくるんじゃないかと思います。あと今回はバレエが得意な丘山さんが入ってくださいますし、今K-POPにハマっているあたちゃんと“ダンスのクオリティを上げたいね”とも話しているところです」

 

宇野「ダンス、頑張りましょう! やっぱり前作を超えていける作品にしたいと僕は思っていますし、それができる強力な面々が揃ったなと思っています」

 

加藤「今回、大阪公演があるのも嬉しいんですよね。笑いに厳しい街だと言われていますけど……」

 

宇野「でも、大丈夫じゃないですか? パタリロだから(笑)。みんな、諒くんのパタリロに全幅の信頼を置いているので!」

 

(取材・文/古知屋ジュン)

撮影:篠塚ようこ

ヘアメイク:大西智雄

スタイリスト(加藤 諒):久保田 姫月