成長、進化する中村獅童と初音ミクのコラボレーション!
2016年に始まった『超歌舞伎』も、今年で7年目。歌舞伎俳優・中村獅童とバーチャルシンガー・初音ミクという次元を超えたコラボレーションも公演を重ねるにつれてますます技術が進化、内容も深化してきている。この夏は、いよいよ東京・新橋演舞場に初お目見得! 本公演の演目としては、まず『超歌舞伎のみかた』で楽しみ方やその魅力を紹介し、新作舞踊『萬代春歌舞伎踊(つきせぬはるかぶきおどり)』を華やかに、『永遠花誉功(とわのはなほまれのいさおし)』をドラマティックに披露する。歌舞伎の未来を力強く見据える獅童の、超歌舞伎最新作への想いは、ますます熱い。
獅童「超歌舞伎は歌舞伎を知らなくてもとにかく理屈なしに楽しめますし、歌舞伎をご存知の方なら、たとえば今回でいうと、この場面は『妹背山婦女庭訓』が下敷きになっているなということが自然とわかったりする面白さもあり。これぞ歌舞伎!という見せ場もたっぷり盛り込んでいます」
誕生時はデジタル技術と古典歌舞伎を融合させるために苦労も多かったというが、この7年で技術は向上し、さまざまな問題がクリアになったという。
獅童「最初は舞台上では隣にいるミクさんの姿が僕からはよく見えなかったり、セリフもエコーがかかって聞こえたり。でも公演を重ねるごとにデジタルチームも古典歌舞伎チームも意思疎通がスムーズになり、技術面も向上し、この最新作からは新しい機材も導入してさらにバーチャル部分も見応えが増幅しました。当然ミクさんの美しいお姿も見えますし、セリフもハッキリ聞こえるようになりました。それにね、ミクさんがまた努力家だから。踊りに関してもどんどん上達しているんですよ。他の古典歌舞伎にミクさんが出演する日も来るかもしれませんね」
さらに「初音ミクさんのファンの方々の勉強熱心さ、反応の素晴らしさには僕らも毎回感動しています」と、超歌舞伎の観客たちの舞台への熱心かつ真面目な向き合い方に感激しきりの獅童。
獅童「当初の舞台を映像で確認すると、カーテンコールで泣いている方がすごく多くて。あれは嬉しかったな。彼らには、俺たちのバーチャルの世界に歌舞伎が来た!という想いがあったみたい。幕が閉まった後も、みんなで声を揃えて『スタッフさんありがとう!』『超歌舞伎ありがとう‼』って叫んでくれていたんです。そうやって純粋に泣いたり笑ったり、僕らもお客様に泣かされちゃったり、毎度そこまで熱い気持ちにさせてもらえるのは本当に超歌舞伎ならでは。もともとミクさんファンの方たちは歌舞伎を観たことがない方たちが大半だったんですが、歌舞伎をたくさん勉強してくださるんです。初演では『今昔饗宴千本桜』という演目をやりましたが、数カ月後に歌舞伎座で古典の『義経千本桜』の通し上演があったら、僕は出ていないのに(笑)、ミクさんファンが大勢観に来てくださった。『千本桜』を勉強しに来てくれていたんです。大向うは今回はかけられないけど、皆さんいつも一生懸命、本気で声をかけてくれるから年々上手になってきて。この春の幕張公演の生配信では、僕の屋号は“萬屋(よろずや)”なのに“ちちお屋!”とか、息子の陽喜には“ジュニ屋!”とか、うまいことチャットで大向うをかけてくれていました。超歌舞伎ファンの人たちって、洒落が効いててホント面白いんですよ」
インタビュー・文/田中里津子 Photo/篠塚ようこ
【プロフィール】
ナカムラ シドウ
■’81年、二代目中村獅童を名乗り、8歳で初舞台。歌舞伎役者として活躍しながら、映画やテレビドラマと幅広く活躍。
※構成/月刊ローチケ編集部 8月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布