『宝塚BOYS』良知真次&永田崇人 対談レポート

左・良知真次 右・永田崇人

 

宝塚歌劇団の中にかつて存在した「男子部」を描いた舞台『宝塚BOYS』が、2018年夏に5度目の上演を迎える。「team SEA」「team SKY」の2チームのNEW BOYSが、時代と可憐な女性達に翻弄された男たちの青春物語を紡ぐ。
2013年の同作に出演しており今回2度目となる良知真次と、初出演となる永田崇人が、本作にかける意気込みを語った。

 

宝塚歌劇団の「男子部」にスポットをあてたドキュメンタリー本、辻則彦著「男たちの宝塚~夢を追った研究生の半世紀」(神戸新聞総合出版センター刊)を原案に、彼らの夢と奮闘を笑いと切なさを交えて描いた舞台『宝塚BOYS』。

2014年に創立100周年を迎え、“女性だけのレビュー劇団”として、いまや日本のみならず、世界でも知られる存在である宝塚歌劇団だが、その歴史の中で「男子部」が存在していたことはほとんど知られていない。

第二次世界大戦が終わってまもない1945年(昭和20年)12月から1952年(昭和27年)の間にかけられた募集に応募してきた男子は25人。しかし、彼らは一度もメインステージである宝塚大劇場に立つことなく、1954年(昭和29年)3月に解散。
その10年にも満たない期間の中で、“宝塚のスター”になることを目指して、日々レッスンに明け暮れ、夢を見ていた“男子たち”が確かにいた。

良知「この歴史を知らない方々にもぜひ観ていただきたいです。上演することには使命があると思いますし、伝えていかなければいけないことだと思っています」

 

初演は2007年。柳家花緑や戸次重幸を始めとする話題の俳優たちが集って創り上げられた作品は、実際に「男子部」に在籍していた方々も観劇。大きな感動と話題を呼んだ。
その後も浦井健治や入野自由といった注目の若手実力派俳優たちが参加。2008年、2010年、2013年と上演を重ねてきた。
5度目の上演となる今回。若手俳優の中でも注目株である24歳の永田崇人は、本作を「歴史ある作品」と表現する。

永田「何度も上演されている素敵な舞台。出演が決まった時は本当に嬉しかったです。前回の公演をDVDで拝見したのですが、出てくる人たちが泥臭くて、でもその泥臭さが美しいなと思いました」

 

良知は2013年の公演を「前回の出演の時に全て出し切ったので、もうこれ以上出るものはないと思っていた」と振り返るが、去年の春に梅田芸術劇場シアタードラマシティとTBS赤坂ACTシアターにて上演された宝塚歌劇団のミュージカル『瑠璃色の刻(とき)』で、フィナーレの振付を担当。そこで新たに得た“宝塚”の経験を踏まえたいと意気込みを見せる。

良知「宝塚の振付に呼んでいただいた時、“『宝塚BOYS』に出る前にこの経験をできていたら、絶対違ったのに!”と話していたんです(笑)。なので、今回の上演にオファーをいただいた時、これも運命なのかなと思いました。振付師というスタッフの立場から男役さんの格好良さや娘役さんの美しさを見ていて“そりゃ(宝塚のスターを)目指すよな!”と実感しましたし、その感覚や宝塚の稽古場に入った時の緊張感を活かしていければと思います」

 

少年期にジャニーズJr.として活躍、劇団四季にも入団していた良知だからこその想いも熱い。

良知「“明日のスターを夢見る”という話は、自分の初心に似ているところもあります。今はこれまで見た夢が一つずつ叶えられている状態。芸能活動20周年になりますが、こうして全身全霊で取り組まないと太刀打ち出来ない作品に出会えたことが嬉しいです」

 

永田はそんな先輩に憧れの視線を送る。初日から中日までを担う「team SEA」と、後半から全国公演まで駆け抜ける「team SKY」。違うチームとなることに「できれば一緒にやらせていただきたかった!」と本音もポロリ。

永田「でも意味があって分けられているチームなのだと思います。プレッシャーは大きいですが、僕たちにしかできないことを探してやっていきたい。同じチームの塩田康平くんがすごいパワーの持ち主なので、引っ張られていきたいです(笑)」

 

「team SKY」は永田を始めとして全員が『宝塚BOYS』初参加。一方の「team SEA」は、藤岡正明、上山竜治、石井一彰、東山義久と、良知を含めた5人が出演経験者だ。

良知「経験者は多いですが、裕美さん(演出の鈴木裕美)からは“前回通りにしないで”と、絶対に言われると思います。顔ぶれで言うと個性が強いメンバーなので、出てくる度に強烈なことになるだろうなという予感はしますけどね。いずれにせよ“慣れない”方が良い作品になるのではと思います」

 

ちなみに前回は、キャスト一人ひとりと演出の鈴木が、綿密な面談を行ってから配役が決定したという。

良知「“どの役をやりたいか?”“この作品をどう思っているか?”から“どういう人生を歩んできたか?”まで。熱く熱く語って、面談の時は“この役だ!”っとなっていたハズなのですが……蓋を開けてみたら全然違う役がきた(笑)」

永田「そうだったんですか!」

良知「どういうことー!?って(笑)。でも演じてみたら“なるほどな”という納得があったんだよね。今回の配役はどうなるのか、今から楽しみです」

永田「僕たちも現時点ではまだ役が決まっていないんです。今は自分の中でキャスティングをして、楽しんでいます(笑)」ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』などでも鈴木の演出作品に参加している良知曰く、鈴木裕美の演出は「高層ビルを建てるような方法」。

良知「今あるこれを組み上げないと、次に絶対に行かない。3行のセリフに4時間かかったこともありました。僕も「おひとり様で芝居をなさっている」と散々言われましたね。ちゃんと相手と呼吸をあわせて、と。でも最後までとことん付き合ってくださる。本当に芝居を愛している。しっかり舵を握ってくださるので、この人が笑ってくれたら大丈夫だという絶対的なものがあります。ただ、“クエスチョンしていいですか?”って裕美さんに言われたら……長い時間がくるよ?」

永田「イヤーーだよぉおお!!」

良知「(笑)」

 

この取材が初対面だというふたりだが、撮影中もインタビューでも和気あいあい。永田から良知に対して「尋ねたいこと」を問うと、「ミュージカル『陰陽師』の中国公演を終えられたばかりなので、その感想を聞きたいです!」と無邪気に答えるひと幕も。

良知「え、近況!?(笑)。反応がすごかったよ。“キャー!”って歓声も上がっていた。宝塚も中国公演をされていたりもするし……。この作品に繋げていうのであれば、歴史を知っていただくという意味も含め、ぜひ海外でも公演したいね!」

永田「はい!」

 

宝塚歌劇団といえば『ベルサイユのばら』『オルフェウスの窓』などを始めとする作品も上演し、“2.5次元ミュージカル”の元祖ともいえる存在。
ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」や超歌劇(ウルトラミュージカル)『幕末Rock』などに出演してきた良知と、東京ワンピースタワー『ONE PIECE LIVE ATTRACTION』やハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』で注目を集めてきた永田にとっては、縁があるとも言えそうだ。

初日は8月4日(土)、東京芸術劇場 プレイハウスにて。
8月19日(日)まで東京公演。その後、8月22日(水)名古屋・日本特殊陶業市民会館、8月25日(土)~26日(日)久留米・久留米シティプラザ、8月31日(金)~9月2日(日)大阪・サンケイホールブリーゼにて上演予定。

 

インタビュー・文/片桐ユウ