舞台『波濤を越えて』│中村壱太郎、影山拓也(IMPACTors/ジャニーズJr.)、嶋崎斗亜(Lilかんさい/関西ジャニーズJr.)取材会レポート

2022.10.26

「波濤を越えて」は日本で最も知られる軍記物語である「平家物語」を基に、古典芸能と現代演劇の演出を融合させ、現代の観点から戦乱の運命に翻弄される源氏と平家の物語を描く新作。
11月、京都・広島での公演に先駆けて、京都・八坂神社にて取材会が行われ、中村壱太郎、影山拓也(IMPACTors/ジャニーズJr.)、嶋崎斗亜(Lilかんさい/関西ジャニーズJr.)が登壇した。

※ 嶋崎斗亜の「崎」は、(たつさき)が正式表記

――どんな作品なのか簡単に教えてください

壱太郎 「『波濤を越えて』ということで、それぞれの試練を乗り越えるという意味もございますし、やはりバックグラウンドにありますのは源平の戦いの時代です。影山さんの演じる知盛、そして嶋崎さんの演じる義経が源氏と平家で対立している関係ですが、それぞれ抱えているもの、また直面する家族関係ですとか、そういったものからこの乱世の世をどう生き抜いていくのかというのが一つのテーマになっているのではないかなと思います。
私はその中で平家の清盛の女である祇王、そして義経の恋人である静御前、この二つを演じさせていただきます。今回この祇王というのがキーパーソンとなっておりまして、恨みの魂を呼び起こ、これが世を越え、時を越えてずっとこの乱世を終わらせないものにしていこうという企みの中、ストーリーが展開されていくというのが、今までにはない設定になっているのではないかなと思います」

影山 「古典芸能と現代演劇の融合が『波濤を越えて』ならではのすごい大きなことなのかなと。演じさせていただく知盛は、すごく真面目で、一生懸命で、筋を通す、僕が理想とする男性像に近いと思っていまして、お芝居を通して知盛として生きられるという楽しみもあります。共演の皆さんと一緒に稽古をして発見できる知盛の新たな一面も楽しみにしております」

嶋崎 「僕が思うに知盛と義経は少し共通点があるような役で。知盛は父のために動きたいけど、父は自分をいいように扱ってくれない、義経は兄に本当の兄弟と認められたいけど、兄は兄弟とは認めてくれない。この二人が出会って一つの目的に向かって立ち向かうところは、個人的にすごく好きで、結構胸アツだと思っています。僕たちのファンの皆さんは現代演劇は、よく見ると思うんですけど、古典芸能には触れたことのない方も多いと思うので、融合する舞台をすることによって、たくさんの人に古典芸能の良さや現代演劇の良さなど、いろいろなものの良さに気付いてもらえたらなと思います」

――お二人で殺陣を合わせてみていかがでしょうか?

影山 「すごく難しいですね。僕は『滝沢歌舞伎』という舞台で殺陣をやらせていただくことがあったんですけれども、今回の殺陣の稽古で、薙刀の持ち方はこうだったんだとか、こういう足の開き方なんだとか、深いところを知っていけるのが今すごく楽しいですね」

嶋崎 「僕は殺陣自体が初めての経験です。学校でプリントを丸めてチャンバラみたいなことは友達としてたんですけど、そんなのとは全く違っていて。今回の稽古の中で、実は戦っているようで殺陣は息の使い方で合図を出してやっているんだとか、まだまだ知らないことばかりなんですけど、これから稽古を重ねて、どんどん上手になっていけたらと思います」

――古典芸能と現代劇といったジャンルを超えた融合でどういうことが生まれると思いますか?

影山 「まず僕たちは白塗りをしていない、という目で見てわかるというものや、台詞の言い回しが違うんですよね。今まで出演した舞台だと、台詞を発するときに音を意識することがそこまでなかったんですけど、今回は息継ぎのタイミングとか、台詞を発するときの“音”を指導していただいています。そこに、僕と斗亜くんが今まで培ってきた、ジャニーズならではの色は出していきたいという思いはあります。(脚本・演出の)今井さんも歌舞伎色になりすぎず、僕が持っているもの、斗亜くんが持っている魅力を出して欲しいと言ってくださっているので、自分に自信をもって作り上げていきたいと思っています」

嶋崎 「台詞の読み合わせではいつも通りに読んで、徐々に古典芸能の色を少しずつ足していっていただいています。古典芸能の色が少し加わるだけで、幅広く表現できる部分が出たりします。殺陣は、動けば動くほど良い、と思ってたんですけど、いかに動かなくても動いているように見せるかとか、そういう見せ方もこれまでの舞台とは違って、今まで僕たちになかった部分や、僕たち自身が出せないものとのギャップを楽しめるのではないかなと思っています」

壱太郎 「影山くんと嶋崎くんが言ってくれた通りだと思っています。大阪松竹座で上演していたJホラー歌舞伎もそうですけれど、○○歌舞伎とつくと、どうしても歌舞伎に寄せていただくことが多く。今回『波濤を越えて』というのはジャンルの融合ということで、歌舞伎の『波濤を越えて』でも、現代劇の『波濤を越えて』でもない、この何も肩書のない作品というのがひとつ新しい大きな企画だと思います。これは企画・プロデュースをされている田中傳次郎さんも、脚本・演出をされている今井豊茂先生も思っていらっしゃることなんじゃないかなと感じています。なので、僕も歌舞伎のスタイルで舞台には立ちますし、この二人も今まで培ってこられたものがありながら立たれますし、ほかの皆様もそれぞれの分野で臨まれることになるのだと思います。ここをどう繋ぎ合わせていくのか、というのが、本稽古に入ってからの面白いところでもありますし、逆にどっちかに寄り添っていくというよりは、それぞれが出してきたものがそのお皿の中でどう料理になっていくかというこの面白さは今までにはない経験だなと感じています」

――これまで古典芸能を観たことがないというお二人と、壱太郎さんが一緒に作品を作るというのは、違ったアプローチがあり、生で感じて、生で受け止めて作られる気がします

壱太郎 「本当にその新鮮さだと思います。今日会見での二人の話を聞いていてもすごくそれは思うし、僕も10代、20代だったらそうだろうなと思うこともあるし、僕の今の立場ではそれを考えつつも自分でどうやっていくかっていうことも考えなければならないし、このゼロからの関係で作る舞台が面白いものになるという気がしています」

――『波濤を越えて』のタイトルに込められた意味を、物語やそれぞれの役を通してどう考えているか教えてください

壱太郎 「これは自分の演じる祇王の中で感じることですが、大きなテーマとして“乱世の世の中、戦乱の世という中を生き抜くそれぞれの人間観”があると思うのですが、僕は台本を最初に読ませていただいたときに、(現在の)落ち着きのない、不安な世の中と何か似たものを感じるところがありました。“希望の種”だとか“花”という言葉がすごく使われている台本で、自分たちがどんな花を咲かせるのか、またどんな人間として魂を浄化させたり、魂を生み出していくのか、その結果の答えが『波濤を越える』、その先に行くということになるんじゃないかなと僕は思っています」

影山 「僕はジャニーズに11年所属しており、悔しい思いや辛いこととかいろいろあったんですけれども、今グループをやっと組ませていただいて、このように素敵な作品に出させていただいています。その時に感じたのが、何もなく、ただとんとん拍子に今ここに来られていたら、何も感じないんだろうなって。それまでに悔しい思いだとか辛い思いをしたからこそ、一つ一つの仕事がありがたく思いますし、今ここに立たせていただいているのも夢のような時間です。辛い思いをするというのは“最終的に人が幸せになる切符”でもあるのかなと僕は感じているので、『波濤を越えて』というのは“辛いものを越えて幸せを手に入れる”というように解釈しています」

嶋崎 「壱太郎さんがおっしゃった通り、舞台の中と現代の世の中と少しリンクする部分があるので、舞台の中だけでおさまらず、舞台を観に来てくださった方の私生活にも少し関わってくるような気付きを与えられるような舞台にできたらなと思っています。“舞台上を越えてお客様に伝える”ということが僕の個人の解釈ですね」

――南座が初めての嶋崎さんに、壱太郎さんと影山さんから南座がどんなところか教えてあげてください

壱太郎 「歌舞伎的なことを言うと、南座の前の河原で出雲阿国がかぶき踊りを踊ったという銅像があり、歌舞伎発祥の地としても僕はとても大事にしている劇場です。僕らが使う楽屋の屋上にはお社があって、神様がいて、お参りができます。劇場というとビルの中などが多いので、(お社があることで)京都を感じて舞台ができるのですごく素敵な劇場だと思います。影山さんいかがですか?」

影山 「そうですね。さっき斗亜くんにもちらっと言ったんですけど、本当にとてもきれいで、迷路みたいで楽しいよって言いました。すごい落ち着くサイズ感で天井の高さと楽屋に入るまでの迷路みたいな感じが男の子心をくすぐるじゃないですけど、すごく僕は毎回楽しいですね」

嶋崎 「楽しそうですね。迷路は大好きなので、時間があれば影山くんや壱太郎さんとスタートとゴール作って迷路したいなと思います」

壱太郎 「毎日楽屋を変えてね」

――今井先生から作品のポイントをお伺いできますでしょうか?

今井 「ひとつの舞台で歌舞伎も観られ、お能も観られ、そして現代劇も観られて、平家琵琶といったなかなか普段触れることができないものをひとつの舞台でご覧いただけるというのもポイントにさせていただいています。影山くんや嶋﨑くんのファンの方たちは、歌舞伎やお能とか平家琵琶とかそういうものに触れる機会がなかなかないと思いますので、そういうものを若い方たちに触れていただけるのも見どころのひとつです。その辺も踏まえて、ご観劇いただければと思います」

――最後に一言ずつお願いします

壱太郎 「今井先生も仰ってましたけど、僕もやはりすごくそこは意識をするところであり、未来に繋がっていってほしいなと思います。古典芸能というものに触れてもらうというのももちろんなんですけれど、触れただけでなく、終わったあとに面白かったな、楽しかったなと思ってもらえて、またそれぞれの方面の舞台を観に行ってみたいと思ってもらえることが、僕の今回のひとつの目標だなと思っております。そのためにも11月12日までまだまだ時間もありますし、いろいろな形で稽古を積み重ねていい作品にできたらなと思っております」

影山 「こんなに大きくポスターに載るのが初めてなんですね。それが本当に今でも夢のようで、すごく嬉しい気持ちと同時に、ファンの方も喜んでくれているのではないかなと思います。貴重な時間を過ごさせていただくので、観に来てくださる方に「あ、この子がジャニーズだったんだ!」って思われたいというのはありまして。少しでも壱太郎さんや、他の共演者の方たちに馴染みたいなって思いはあります。なので、一生懸命じっくり時間をかけて知盛という役と向き合って、無事に初日幕を開けられるように頑張ります」

嶋崎 「この取材会で、一緒にこれから舞台に立つ影山くんや壱太郎さんと舞台に対する解釈の仕方とか思いとか、そういったものを聞くことができました。型にはまりすぎてない初々しさも、義経を演じさせていただくにあたり良い方向に出せれば。寄せすぎず、自分を持ったまま、でも寄せてはいくみたいな。難しくなってくると思うんですけど、そういう化学反応みたいなものを魅せていけたらと思っております」

まだ見ぬ化学反応に期待が高まる、演劇界の未来を担う新世代が初共演の舞台「波濤を越えて」は、11月12日(土)から22日(火)京都・南座で上演後、11月25日(金)・26日(土)には広島・広島文化学園HBGホールにて上演される。