☆いよいよ開幕!☆舞台「日本昔ばなし」 貧乏神と福の神~つるの恩返し~│大倉空人インタビュー

1975年より50年近くにわたりテレビ放送されていた「まんが日本昔ばなし」のお話をもとに初舞台化。「貧乏神と福の神」「つるの恩返し」の2つの物語を合体、モトイキシゲキによる脚本・演出で、心あたたまる物語を紡ぎあげていく。本作に出演することになった大倉空人は、どのような想いで作品に挑むのか。話を聞いた。

――「日本昔ばなし」のお話をもとに舞台化した今回の作品にご出演されることになりましたが、印象はいかがですか?

最初は、「『日本昔ばなし』を舞台でやるんだ」という驚きが大きかったです。どんな世代の方でも知っている作品で、その温かさをどんなふうに演じればいいんだろう、と考えました。子どもの時とかに1度は見たことがある作品ですし、僕も、「桃太郎」や、今回の題材になっている「つるの恩返し」など、様々な作品が印象に残っています。中でも、「おむすびころりん」が特に記憶に残っていて、まずおむすびってそんなに転がるの?と思ったんです(笑)。おむすびが穴に落ちて、そこから別世界が広がって…という展開が、子ども心に響いたんだと思います。自分でも、おむすびを転がして穴に落としてみたい、と思いましたが、絶対に親に怒られるのがわかっていたのでできませんでした(笑)。

――もしかしたら自分にも不思議なことがおこるかも…って感じていたのかもしれないですね(笑)。今回、改めて作品の世界に触れて気づいたことなどはありましたか?

小さいころに見たときは、登場人物を、いわゆる“いい人”と“悪い人”という分け方だったんですが、改めて見てみると、悪い人側にも理由や目的がちゃんとあって、自分の正義がある中で動いているんですよね。そういう部分は、大人になって改めて感じられるようになったところです。悪い人とされる側にも、何か共感できるような部分があったりもします。

――今回の役どころについてはいかがですか?

役どころが町の豪商・白木屋の新之介役と聞いたとき、先ほどの“いい人”か“悪い人”かで言うと、悪い人なのかな?と思ったんです。お金持ちのちょっと嫌な役かな?と。でも、実際に台本を読んでみると、中村ゆりかさんが演じるつるをすごく大切に思っている男だとわかりました。若旦那ということで、しっかりと貫禄をもって演じたいです。脚本・演出のモトイキシゲキさんにもご指導いただいたんですが、早口になると若さが出すぎてしまうので、ひとつひとつのセリフをかみ砕いて、意識して貫禄を出せるように頑張りたいと思います。また、物語の中でひとつ覚悟を決める場面があるので、そこもしっかりと演じ切りたいです。

――稽古場の雰囲気はいかがですか?

ビックリするくらい、すごく雰囲気いい稽古場です!出演者の皆さんからたくさん学ばせて頂いています。そして皆さんとても優しくて。安寿ミラさんに、仕草や手振りなど、お芝居のいろいろなことを教えて頂きました。中村ゆりかさんとは一緒になる場面も多くて、兄弟のこととか日常会話をよくしています。小出さんからは、糖分をしっかりとるとセリフが飛ばなくなるよ、とアドバイスをいただいたりもしました。小出さんはラムネを食べて稽古に臨んでいて、僕も糖分をとって稽古を頑張ってみたんですけど…セリフを飛ばしてしまいました(笑)。

――先輩方からいろいろなアドバイスをもらえるような現場なんですね。個人的な稽古の必需品などはありますか?

ミントタブレットが好きで、それだけは絶対に持っています。ちょっとした気分転換したい時だったり、よしやるぞ!と気合を入れたりするときによく食べています。あとは、のど飴。いわゆる昔ながらのやつで、舞台もそうですがアーティストとしても活動しているので喉は大事にしたいですし、味も好きなんです。

――その2つが気持ちのエネルギーチャージになっているんですね。今回の舞台では「貧乏神と福の神」、「つるの恩返し」の2つをもとにしたお話となっていますが、どのようなところに物語の良さを感じていらっしゃいますか?

2つのお話を混ぜて1つのお話にしていると聞いたときは、驚きました。どういうお話になるんだろう?と思いましたが、命の大切さや恩を返すということの大切さ――それらをきれいに混ぜ合わせて完結させていて、とても素敵だと思いました。僕が役を演じていて思うのは、人を思いやる気持ちがやっぱり大事なんだな、ということです。新之介は心が広くて、すごく寛大で優しい人なんです。演じているからこそ、そこは強く感じます。昔ばなしですが、現代にも伝わる大切なことがたくさん詰まっていると思います。

――役を演じるうえで、一番大切にしているものは何でしょうか?

物語の中に「人に恩をもらって、人に恩を返すのが人の道」という言葉が出てくるんです。僕のセリフではないのですが、印象に残っていて。すごく納得できる言葉でした。この言葉を大切にし、感謝の気持ちを持ち、この作品としっかり向き合っていきたいと思います。

――現代の人があえて言葉にしていないような大切なことを再確認できるようなお話なんですね。大倉さんはダンスボーカルユニット「原因は自分にある。」としても活躍されていますが、今回の舞台出演にあたってメンバーはどういう反応でしたか?

杢代和人からは「なんか昔の人になったんだね?」とテキトーなことを言われました(笑)。多分、髪を切ったから、それだけでそういうことを言ってると思います。長野凌大からは「絶対見に行く!」と言われましたし、(武藤)潤や(吉澤)要人、(桜木)雅哉や(小泉)光咲も同じようなことを言ってくれて、やっぱり嬉しかったです。杢代だけちょっとテキトーだったけど(笑)、楽しみにしてくれているので、頑張りたいです。ちょうどファンクラブイベントが12月にあって、来年1月にはパシフィコ横浜でのワンマンライブも控えているので、ちょうど稽古とリハーサルが重なっているんです。それで、稽古を終えてから遅れてリハに入ることもあるんですけど、ほかのメンバーは次に進めるところを僕のためにわざわざ戻ってやってくれて…。すごくメンバーが支えてくれているので、しっかり頑張らないと、と思います。やっぱり、メンバーには甘えてしまいます。ふざけちゃうし、素の自分のままでいられます。メンバーに対しては失礼なことしかしてない(笑)。

――メンバーからもらえるパワーもものすごく大きいんですね。お芝居の面白さ、逆にむずかしさはどういうところに感じますか?

やっぱり、自分じゃない誰かになれるのはすごく面白いです。今回だと、昔に戻ることはできないけれど、芝居の中で昔の人になれるわけじゃないですか。そうやって別の人生を歩めるのはすごく特別な感じがします。でも、違和感なく話すことって難しいんですよね。今、こうやって話していることも、用意したセリフになった時、意識してしまうので難しくなる。そういうところはすごく繊細だなって思います。ちょっと不安になってしまう自分もいて、例えば映像のお芝居とかだと、オンエア前にすごく緊張してくるんです。自分がどう映っているだろう?という気持ちになって、緊張するんです。

――逆にグループでの活動だといかがですか?

ほんと失礼なことしかしないんです(笑)。それができる空気感だし、すごく心地よくて…。メンバーもそうだし、周りで支えてくれる方々やファンの皆さんも含めて、すごく心地がいい。今回、舞台に出演すると決まった際も、盛り上げてくださったり、楽しみにしてます!とコメントもたくさんいただきました。すごく励みになるし、グループって素敵だなって思います。

――今後、挑戦したいことはなんですか?

お芝居に関しては、いろいろな役に挑戦したいです。やっぱり経験するしかないのかな、と思っているので、いろんな役からたくさん吸収して、俳優としてもっと大きくなりたいです。サイコパスな役とか、普通じゃない役にも挑戦したいです。先日「Diner ダイナー」を観て感じたんですけど、登場人物みんな普通じゃないんです。僕がこれまで演じたことがあるのは日常の中の範囲なんです。その範囲を超えて、普通じゃないのにキャラクターとしてしっかり成立させるってすごく難しいと思うんです。だから挑戦してみたいです。

グループに関しても、もっともっとスキルアップしたい。1人でカラオケに行って歌の練習したり、ダンスも上を目指して練習しています。メンバーそれぞれ、歌に特化している人、ダンスに特化している人、トークに特化している人など、それぞれ個性があるんですけど、その中で僕はオールラウンダーになりたいです。いろいろ特化した人がいる中で、そういうプラスアルファができる存在がグループにいたら、グループ全体のクオリティが上がると思うんです。そういう存在になれるように頑張りたいです。難しいと思うし、時間もかかると思いますが、目指していきたいです。

――最後に、今回の公演を楽しみにしている人にメッセージをお願いします!

2つの昔ばなしが合体した物語ですが、温かい話と温かい話が合わさった物語なので、より温かな物語になることは間違いありません。そんな中で日替わりで芸人さんが福の神を演じるので、その面白さにも注目していただきたいです。そして、それぞれのキャラクターの心情を繊細に演じていこうと、モトイキさんはおっしゃっていて、そこは舞台ならではのダイレクトに伝わる感情があると思うので、ぜひ生で感じ取ってほしいです!劇場でお待ちしております!

11月17日(木)より東京芸術劇場 シアターウエストで開幕し、11月27日(日)まで公演が続く。

インタビュー・文/宮崎新之

PROFILE●大倉空人(おおくら・たかと)

2015年にスカウトされ所属。2019年CX『モトカレマニア 』にレギュラー出演し、俳優としてデビューを果たす。
現在は、ダンスボーカルグループ『原因は自分にある。』のメンバーとしても活動中。俳優、レポーター、歌手としても幅広く活動を広げる。
2022年6月4日公開映画『レッドブリッジ』『レッドブリッジ ビギニング』では、初めてアクションシーンを経験した。出演作として、NTV『ムチャブリ!わたしが社長になるなんて』(’22)『FAKEOTION -たったひとつの願い-』(’21)TX『警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜SEASON5』(’21)等。