写真左から） MINATO、KOSHIN
スマホアプリ「マンガボックス」にて好評連載中のコミック「ラストアンコール」が、ダンスボーカルグループ「BUGVEL」のKOSHINとMINATOをW主演に舞台化。死神でありながら霊を救うために暗躍する海をKOSHIN、不本意ながら海を手伝うことになった探偵の大牙をMINATOが演じる。彼らにとって初めての舞台となる本作「ラストアンコール ～死者の夜明け～」。果たしてどのような想いで作品に挑むのか。KOSHIN、MINATOの2人と、演出を務める田邊俊喜に話を聞いた。
――キャストのお2人にとっては、初舞台、初主演となります。ご心境をお聞かせください
MINATO もうまずは、めちゃくちゃありがたいことですし、めちゃくちゃ嬉しい気持ちでいっぱいです。でも同時にやっぱり不安もあって、初めての経験なので、僕たちにできるのかという気持ちも最初はありました。何度も練習などを重ねていく中で、チームになって教えてくださるので、今はどんどん不安はほどけてきています。お芝居って、大きな声で滑舌をよく話すのがスタート地点と思っていたんですよ。僕は普段、そこまで大きな声でしゃべらないしハキハキとしゃべったり演技をしたりというのは難しいんだろうなと、ずっと思っていました。映画やドラマは大好きで、よく見ているんですけど、人の気持ちを動かせるほどの演技って本当にカッコいい。そこに挑戦できるのは、本当にありがたいと思っています。
KOSHIN 本当にありがたいお話をいただけたと思っています。これだけのキャストさんがいらっしゃる中で、僕たちが主演という立ち位置でやらせていただけることには、すごくプレッシャーを感じています。これから本稽古に入って、皆さんの力を借りながらにはなりますが、主役という立場に、海という役の名前に恥じないように頑張りたいです。今回のお仕事が、自分にとっても成長になると思うし、舞台の役者としても成長できるはず。僕らはBUGVELとして世界に立ちたいという気持ちも、この経験でもっと大きく成長させたい。そうなれるように頑張っていきたいです。でも、お芝居にはすごく難しいイメージはあります。小学校の時の劇でも人の前に出て、ゆっくりとしゃべって、人に気持ちを伝えなければいけないということがとっても難しかったんですね。だからこそ、主演という立場にはすごく重圧を感じています。
――田邊さんはこのフレッシュな2人を演出していくわけですが、お2人の印象はいかがですか？
田邊 ワークショップという形で、本稽古に入る前から2人とは会っているんですけど、その前にBUGVELのライブを拝見させていただいたんですよ。
KOSHIN・MINATO ありがとうございます！！
田邊 そしたら本当に、それぞれ自分たちの表現というものをしっかりと持っていらっしゃったんですね。それだけしっかりした自分がある人が、自分じゃない役を演じるということはすごく難しいことだとは思うんですけど、すごく前のめりに、積極的にトライしてくれている姿を見ると、僕自身も熱くさせられます。この2人としか作れない作品に向かっていけるんじゃないかという、確かな手ごたえを毎回感じています。2人は本当に一生懸命で、真摯なんですよ。お客さまに向けて、生の舞台だからこそという部分、この世界の中での表現の在り方みたいなところの突き詰め方が素晴らしいので、本当に楽しみにしていただきたいですね。
MINATO なんか緊張しますね（笑）。
KOSHIN そんな言葉を言ってもらえると思っていなかったので、嬉しいです。
田邊 やっぱり、アーティストとして活動しているので、体を使って表現するときの見せ方に関しては、舞台だけで育ってきた俳優のみんなにも2人からたくさん盗んでほしいと思ってるくらい。BUGVELで活動している2人が舞台にトライしてくれたからこそ見つかるものもあると思うし、それがグループに戻った時にまた新しい表現になればいいな、とは思っています。言葉と体をリンクさせることって、とても難しいんですよ。日常生活ではあたりまえのことも、“表現”となると、段取りになってくるので。そのあたりのことも、2人は感情とか読解のこともちゃんと考えてくれるんです。この言葉を吐いている背景にどんな感情があるのか。どういう気持ちの流れだから、こういう行動をとっているのか、などを丁寧に時間をかけて向き合うことができる。忙しい中で、ワークショップという形でじっくりと時間を作ってくれたことは、本当にありがたいですね。
――本作はWEBコミックが原作ですが、物語の印象についてはいかがですか？
田邊 もう、めちゃくちゃ面白いな！っていう、すごく当たり前みたいな感想ですけど（笑）。すべてにおいて後悔なく生き抜くのは理想ですけど、なかなか難しいですよね。死というテーマがある中で、死が終わりではなく、ある種その人にとっては始まりっていう世界になっています。僕自身がものづくりをする人間として、ちゃんと後悔なく出会って、伝えたいことを伝えて、一緒に良いものを作ろうと向き合えて…この僕らの出会いがちゃんと意味のあったものになるようにしていく、という全身全霊でぶつかっている今の自分の行動や言葉は、この作品から教えられている部分だと思います。そういうテーマがお客様にもしっかり伝わるといいですね。観た後に、自分にとって大事な人にちょっとメッセージを入れてみようとか、電話してみようとか、そんなふうに思っていただけるように作れたら嬉しいです。
KOSHIN 物語はすごくおもしろかったんですけど、僕が演じる海は死神で…死神という立ち位置からは人を殺すことは普通でも、やっぱり世の中としては人を殺すってダメなことじゃないですか。だからこそ、“人を殺す”ということが、この物語ではどういう役割を担っているのかを考えることがすごく大事だと思いました。絶対にいけないことを敢えてすることで、何を救うことができて、どんなことを学べるのか。どういう悔いが残るから、どんな恨みを持っているのか。それを感じ取っている海という存在がいることと、人を殺してしまうという残虐さが相まって、魅力的な存在に映るんじゃないか。そういう部分に注目しながら、作品を作っていけたらと思います。
MINATO 物語を読んで、本当に想像もしていなかった悩みがあるんだなと感じました。僕が生きてきた中で出会ったことのないような悩みをいっぱい抱えていて、新しい世界に出会ったような気持ちです。いろんな登場人物が出てきて、いろんな思惑が交錯し合って…何回も読むにつれて「だからこういうセリフを言ったんだ」とか、面白さに気付ける瞬間もあるんですよね。それを舞台化するのは難しいかもしれないですが、絶対にいいものにしたいです。
――役どころについては、どのように感じていますか？
MINATO 大牙は素直な人なので、その素直さは僕も理解できますね。死神の海と出会ったことで、難しい世界に飛び込んでいくんですが、めちゃくちゃ考えながら、すごく葛藤しながら突き進んでいきます。僕自身も今までの人生で葛藤もありましたけど、ここまで複雑な葛藤は無かったので、試行錯誤しながら演じていきたいと思います。大牙は死神と死んでいる人、生きている人のちょうど真ん中にいるんですよ。大牙が架け橋になっているというか、大牙にしか分からない部分がある。自分の行動ひとつで、重大な結果を招くことになりますし、絶対に葛藤していると思うんですが、1人で悩む人物なので、必死に答えを導き出していく姿を演じていきたいですね。
KOSHIN やっぱり海は死神として殺すという残虐性があるんですね。海は、殺そうと思えばだれでも殺すことができる役。そういう中で、亡くなってしまった方々の思いをちゃんと叶えるために動いている。ある種、正義の味方のようでもあり、悪のヒーローでもあるというか…。悪ではあるんだけれども、理解できる部分があって、その両面を皆さんにうまく見えるようにしたいですね。海にも共感できるというか、海の心に対して理解していただけるように演じられたらと思います。
田邊 本当に今の時点で、KOSHINにしかできない海、MINATOにしかできない大牙っていうのをすでに体現してくれているんですよ。あとはもう、時間をかけて深いところまで作っていくだけだと思っているので。それに、KOSHINの海は死神だけど“嫌われない”んですよ。それってすごく大事なことだと思っていますね。
――お芝居に挑戦してみて、現時点の手ごたえはいかがですか？
MINATO 難しいことの方が多くて、初めてだから仕方ないかも知れないですが…。難しさの中にも楽しさを見つけることができています。そして、1人で練習する時間というか、自分の中で考えて落とし込む時間の大切さに、めちゃくちゃ気づきました。そういう時間があるとないとでは、手ごたえがまるで違うんです。やっぱりお芝居には自信がないといけないと思うんですけど、その時間があることで自信がもてる。大牙は自信のあるキャラだから、より自信は持っていた方がいいですからね。
KOSHIN 本稽古の前に、ワークショップという形で3人だけの時間を作ってくれたことが本当にありがたかったですね。家でいろいろ考えて、これで行こう！って決めていても、田邊さんと話し合う時間の中でいろいろと変わっていって…そういう話し合いの時間があるというのが、すごくありがたいです。自分の中で正解だと思っていても、こっちだったんだ、こう変えると伝わるんだ、動きをこんなふうに変えたらかっこよく見えるんだ、というポイントが細かくわかってきて、それが全部合致して舞台というお仕事なんだなと感じています。それが今はすごく楽しいですね。
田邊 2人はすごく耳がいいんですよ。1度伝えたことをちゃんと飲み込んで、理解して表現を変えてくれるんです。ちゃんと勇気をもってトライしてくれるんですね。それに、今の2人の話で分かったと思うんですけど、2人ともいろいろなプランを準備してくれるんです。僕が言っていることが正解ではなくて、今はこう見えているよ、っていう事実を伝えている部分はあるので、ディスカッションの中で僕だけでも2人の中でも見つかっていなかったものが、3人で集まった時に、新しい海、新しい大牙が見つけられたらとは思っています。
――お互いのお芝居をどんな風にみていますか？
KOSHIN 大牙っていう役はやっぱり熱い役で、叫んだり、言い方ひとつで雰囲気を変えたりするんですよ。普段のMINATOくんは、ぜんぜん叫んだりしないし、ずっとローテンションな感じなんですね（笑）。だから、決まった時は本当に大丈夫なのかな？って正直おもったんですけど、何度かやっていく中で動作を変えたり、言い方を変えたりして、言われたことにすぐ対応しているのが本当にすごいなと思いました。今は、本当に大牙にぴったりだと思っていますし、負けていられないですね。
MINATO 海という役は、どちらかと言えばキザな感じで、飄々としていてカッコいいセリフもたくさん言うんですよ。大牙は男らしくガーッというタイプですが、海は冷静沈着にキメるタイプ。KOSHINはもともとアニメとかも好きなので、きっと鏡の前で一人で練習してきたんじゃないかな？と、勝手に思ってるんですけど（笑）、本当にキャラになり切っているというか、キャラが生きているんですよね。
KOSHIN ちなみに、鏡の前とかやったことないからね（笑）。
MINATO （笑）。でも多分、声優さんとかを結構知っているから、KOSHINの中にいろいろな材料があるんじゃないかな。だから、自分なりに研究した時に、声の作り方やセリフの言い方なんかが上手いのかな？と思っています。あと、ダンスがすごく上手いので見せ方とか角度はすごくわかってる。最高ですよ。
KOSHIN どうなんだろう？ 具体的に何かを想定してるわけじゃないけど、決め台詞みたいなものをいう時には、ちょっと雰囲気を真似したりはしているのかも。
――BUGVELが歌う主題歌「reason」は、メンバーのMAHIROさんが作詞作曲を手掛けたそうですね。楽曲についてもお聞かせください
MINATO この「ラストアンコール」のために、MAHIROが作ってくれたんですけど、本当にバシッとハマる曲になっていますね。今までのBUGVELとも全く違う楽曲になっていて、レコーディングでもみんなが歌い方を研究しました。そういう新しい楽曲に挑戦できることも新鮮でしたし、トラックも強めなので、個人的にはジャパニーズロックバンドみたいなイメージで歌いました。
KOSHIN 本当に、MINATOくんが言う通り今までのBUGVELとは全然違う感じの曲になっていますね。本当にMAHIROくんは天才だと思います！ すごく「ラストアンコール」の世界観が表現されていて、大牙と海のすれ違いも音楽で表現されているんですよ。舞台には、今まで僕たちのことを知らなかったお客さんもたくさん来てくださると思うんですけど、この曲でBUGVELを知っていただくきっかけになると思いますし、舞台としての印象とともに、この音楽もすごく立っているものになるんじゃないかと思っています。ただ、自分の声質的にこういう楽曲はとても難しくて、自分のものにするのには少し時間がかかりました。楽曲としては、バックコーラスの重みなんかにも注目して聞いていただきたいです。
田邊 いやもう、すごくかっこよかったし、大興奮ですよ！ 今3人の稽古でオープニングシーンとかも結構やっているんですけど、思わず歌ってしまうというか。お芝居としても、この楽曲なら流すことができるな、っていうすごくカッコいい曲なんですよ。舞台の中で、音で覚えるとか、においで覚えるとか、そういうことってすごく大事なんですけど、自然と口ずさんじゃうこの曲にはその力がありますよね。本当に、素敵な楽曲をありがとう！という気持ちです。
MINATO MAHIROは今、別の舞台に出演しているので、意見の交換とかもしていますね。セリフの覚え方とか、どういう気持ちでやったら覚えやすかったとか…。そういうことを教えてくれたり、心の強みになりますよね。ほかのメンバーも本番を楽しみにしてくれていて、見に行きたいって言ってくれています。
KOSHIN メンバーからは、頑張って！とかすごく応援してくれています。あと、先輩グループORβITのYUGOくんが、ある舞台でメインキャストをやっていて、いろいろアドバイスしてもらいました。友達とかにも舞台をやっている人とか俳優さんとかがいないので、YUGOくんの舞台の話や感想が聞けて、すごく嬉しかったです。
――今、新しいことに挑戦して大変な時期かと思います。忙しい中で自分らしくいられる時間はどんな瞬間ですか？
MINATO またMAHIROとの話なんですけど（笑）、ジムが一緒なんですよ。彼も今忙しくて、そんなに一緒に行けることはないんですけど、たまに一緒になるとジム後のサウナでめっちゃ汗かきながら話すのが、なんかいいですね。それがリセットというか、気持ちが改まって、よっしゃ行くか！ってなります。
田邊 実は僕もサウナなんですよ。どんなに頭が疲れていても全部リフレッシュできます。だから、今は週4くらいで行ってます（笑）。体の筋肉はほぐれている状態になって、何も考えずにぼーっとするんですけど、サウナを出て帰っているときに「あそこはこうできるな」とかアイデアが思いついたりするんですよね。
KOSHIN 僕は今、何か楽器をやりたいと思っていて、最近ギターの練習をしているんです。割とその時間が集中できますね。ほかのこととは集中の方向性が違うので、それがまたいい感じなんだと思います。聞くところによるとキャストの野口準さんもギターを弾くそうなので、教えてもらえたらいいな。
――最後に、公演を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします
田邊 これから本稽古が始まっていきますが、この主演2人と、素敵なキャストスタッフ一同で、全力で誠心誠意、この作品を作ってまいります。絶対に楽しんでいただける作品にしたいと思っておりますので、ぜひ劇場に遊びに来てください！
MINATO 今回出演させていただくにあたり、本当に皆さんに感謝して臨みたいと思います。1人じゃもちろんできないし、演技もまだまだですが、皆さんの思いを背負って…っていういい方はちょっとクサいかもしれないですが、皆さんの思いを胸に秘めて、真剣に臨んで頑張っていきます。ぜひ楽しみにしていてください。
KOSHIN 僕とMINATOの2人で、主演をさせていただきます。ほかのキャストの方々の方が僕たちよりももっともっと経験があるし、演技もうまいと思いますが、初めてでも負けないように、精一杯芝居をしていきたいと思います。いろんな場所で練習して、僕自身を磨き上げていきたいと思いますので、ぜひその成長ぶりを見に来ていただけると嬉しいです。待ってます！
インタビュー・文／宮崎新之
写真／村上宗一郎（田邊俊喜）
