今年9月、ミュージカル『ラグタイム』が日本演劇の名門である東京の日生劇場60周年イヤーを飾ることになった。本作は、「ライオン・キング」「キャバレー」といった名作による激戦の1998年トニー賞において、ミュージカル部門13ノミネート 最優秀脚本賞・最優秀オリジナル楽曲賞など4部門受賞。ドラマ・デスク賞ミュージカル最優秀作品賞・最優秀脚本賞・最優秀作曲賞の他に多数受賞した、ブロードウェイ発の驚異のミュージカル作品だ。その記念すべき日本初演で演出を務めるのは、今、次回作が最も待望される演出家の藤田俊太郎。
物語は20世紀初頭のニューヨーク。アメリカの移民の約9割がやってきたといわれる激動の時代。ユダヤ人、黒人、白人。それぞれのルーツをもつ3つの家族が固い絆で結ばれ、差別や偏見に満ちた世界を変えていこうとする姿を描く。そして、この物語の中心を担う3人を務めるのは、娘のためにラトビアから移民としてアメリカにやってきたユダヤ人ターテ役に、石丸幹二。新しい音楽“ラグタイム”を奏で、新時代の到来を目指す黒人ピアニストコールハウス・ウォーカー・Jr.役に、井上芳雄。正義感にあふれ人種の偏見を持たない、裕福な白人家庭の母親マザー役に、安蘭けい。現代日本ミュージカル界における「BEST=最高」と呼ぶに相応しい3人と言っても過言ではない、石丸幹二、井上芳雄、安蘭けいがミュージカル『ラグタイム』で夢の共演を果たす!
そんな発表に寄せて、石丸幹二、井上芳雄、安蘭けい、そして演出家の藤田から次のようなコメントが寄せられた。
まずはブロードウェイの初演で本作を観たという石丸幹二は、「深い衝撃は忘れられない。うねるような物語の壮大さ、そして、多彩なメロディーが飛び交う音楽の豊かさに、当時まだ30代半ばにもいかない私は、楽曲のひとつひとつが持つ強烈なエネルギーに打ちのめされ、音楽的に難しい曲が多いからこそ、『挑みがいがある、歌ってみたい!』と願いました。楽曲がもつエネルギーは、アメリカの異なる人種たちが、与えられた場で必死に生き抜こうとするエネルギーを表しているんだと、今、改めて音楽に触れ、ひしひしと感じています」と当時を振り返りつつ、本作の持つ力について語る。また、「井上芳雄さん、安蘭けいさんをはじめとする心強い仲間たちと共に、異なるバックグラウンドの者たちがひと所に共存する難しさ、大切さを描いていきます。まずは、冒頭の大合唱を聴いてください。さまざまな民族を演じる出演者全員が心を合わせて歌います」と意気込み。そして演出の藤田俊太郎については、「15年ほど前、蜷川幸雄さん演出の『コースト・オブ・ユートピア』で演出スタッフ時代の彼とご一緒したと記憶しています。その後、演出家として高い評価を得ている藤田さん、再会が楽しみです」と、再会への期待と喜びの思いを明らかにした。
また、井上芳雄は「出演のお話をいただいたときは、ブロードウェイミュージカルのあの傑作を、遂に日本でもやるのか!という、興奮と喜びがありました」と語るように、「是非とも参加させてもらいたいと思った」という。そして、共演者については「今回共演させていただく石丸さんは大学の同じ門下の大先輩。作品でご一緒させて頂くのは初めてなので、まずそれが何より嬉しいです。やっと共演できる!という喜びでいっぱいです。安蘭さんともミュージカルでの共演は初めてなので、ワクワクしています」と嬉しそうな様子。また、演出家の藤田とは『ラヴ・レターズ』以来だそうで、「ミュージカルでご一緒するのは初めてです。丁寧にこだわって作品作りをされる印象があるので、楽しみしかないです。同世代の演出家との出会いも、感謝です。僕自身も初めての役柄ですし、想像できないことに挑戦できる幸せを感じています」と喜びを語った。
初めてブロードウェイミュージカルを観に行った際、当時話題の『ラグタイム』を観劇しておらず後悔していると語るのは、マザー役の安蘭けい。共演の石丸と井上については「石丸さんとは3作目の共演です。役に対して真摯に向き合っている姿はとても尊敬できますし、舞台人としてもとても信頼している石丸さんと、また一緒に作品を創れる事がとても嬉しく光栄です。井上くんとは2作目ですが、前回はミュージカルではなかったので今回初共演のような感覚で、とても楽しみです。お二方の名前を聞いた時、とても豪華だし、これは凄い作品になるな!と思いました!私もその一員になれることが本当に嬉しいです!」と喜びを語った。また、演出の藤田とは、彼が蜷川幸雄演出の演出助手時代に初めて会ったそうで、「それから演出家としてデビューされてから何作か観させて頂いています。藤田さんの演出はどこか蜷川イズムのようなものを私は感じてしまいます。蜷川さんの世界観がミュージカルの舞台に合った時、とても嬉しく感じましたし奇跡を感じました!今回初めて演出を受けるのがとても楽しみです!今までなぜ日本で上演されてこなかったのか、不思議でならないミュージカルです。満を持して上演される『ラグタイム』カンパニーの一員として携われることを本当に光栄に思っています」と期待で胸いっぱいの様子。
演出の藤田俊太郎は、「世界中で上演を重ね、各国の劇場で大きな感動を与え続ける傑作ミュージカルの日本初演を演出できることに心から幸せを感じています。まさに2023年の「今」上演するのに相応しい多様な価値観を持つ、名曲揃いの壮大な作品に立ち向かい挑戦できることを誇りに思います」と初演に携わることへの喜びを語つつも、「史実とフィクションが見事に交錯した原作の小説を執筆したE・L・ドクトロウ、1998年のブロードウェイでの公演を創った素晴らしいクリエイター達に想いを馳せると胸が熱くなります。「ラグタイム」は、黒人音楽を基礎として19世紀末から20世紀初頭に従来とは違う、ラグした(ズレた)リズムのシンコペーション、時に裏拍の強調を特徴として生まれました。聞き慣れないのにどこか懐かしくて、普遍的な魅力を持っていると感じます。また同時に、出来事の裏に潜む、もう一つの真実を暴いているように美しく、官能的な音楽でもあると思います」と作品への解釈を述べた。また最後に、「魅力溢れる多彩なキャストの皆さんとご一緒できることに今から興奮しています。日本のミュージカルに力を尽くし、輝き続ける石丸幹二さん、井上芳雄さん、安蘭けいさんを心から尊敬しています。舞台の設定である20世紀初頭アメリカ合衆国へと一緒に旅立ち、共に強く生きたいと思います。『ラグタイム』は遠い国の遠い過去の話なのではなく、特に2020年以降を生きる私たちの現在形の作品なのだと感じています。決して悲しいシーンばかりではなく、未来への夢が詰まったエンターテインメントを是非、楽しんでいただけたらと思っています。お客様に心からの愛を込めて、劇場でお待ちしております」とコメントを寄せた。
本作のその他公演詳細などは、今後発表される続報を期待して待とう!