江戸川乱歩朗読劇 幻調乱歩2「自決スル幼魚永久機関」│工藤晴香 インタビュー

2022年に上演されたアメツチのオリジナル作品、江戸川乱歩の世界 朗読劇『幻燈の獏』。満州を舞台に、李香蘭が出演する新作映画「怪人二十面相」の制作が進む中で殺人事件が起きる物語だ。工藤晴香や永塚拓馬、椎名へきる、速水奨といったキャストによる上質な芝居とバンドネオンやギターの生演奏による音楽のコラボレーションが大好評を博した。そして、江戸川乱歩デビュー100周年となる2023年、前作に登場したオリジナルキャラクターをはじめとする個性豊かな登場人物たちが再び怪人二十面相と相対する。前作に引き続き出演する工藤晴香に、本作への意気込みや見どころを伺った。

――前作に引き続いてのご出演です。出演が決まった時の思いや意気込みを教えてください

前作がちょうど1年前でしたが、まさか今年またできるとは思っていませんでした。今回のお話をいただいた時、乱歩の違う作品をやるのかと思ったので、続編で引き続き同じ役ということにも驚きましたね。前作がすごく楽しかったので、またこのチームでできるのが嬉しいです。

――前作でご自身が感じた手応え、ファンの方の反響などはいかがでしたか?

普段は女性を演じることが多いので、少年役はやっぱり新鮮でした。ファンの皆さんも私が少年を演じていることを喜んでくださいましたね。

――シャオリンの魅力、役作りについて教えてください

ミステリアスな少年ですが、仲間といるときはすごく活発。大人の人と話しているときはちょっと口調や態度が違うんです。一体この子は何者なんだろうという魅力があると思います。あと、女の子みたいな顔をしているんですよね。私の中では、クラスに1人くらいはいた、ミステリアスでモテる美少年という印象です。役作りでは、無邪気なところは子供っぽく演じて、事件の核心に迫るシーンや重要な部分ではそんなに子供ということを意識せずに演じました。

――ネタバレにならない範囲で、シリーズ2作目となる本作の見どころ、演じるのが楽しみな部分を教えてください

前回のラストで、シャオリンの正体というか、もしかして……? というモヤっとした感じで終わったんです。今回は1作目である『幻燈の獏』の前日譚が描かれて、謎が少しずつ見えてくるので、楽しみにしてほしいですね。あと、今回は明智さんがついに出てきます。一体どんな感じなんだろうと思いますし、演じる方によっても変わると思うので楽しみですね。本番もそうですし、稽古でも見たいなって思います!

――この方との共演が楽しみ、このキャラクターとの絡みが楽しみというのも、ネタバレにならない範囲で聞きたいです

前回から引き続き出演される方もいますし、別の仕事でお会いしたことがある方もいて、皆さん楽しみです。欲張りなので、できれば全員と掛け合いをしたいです(笑)。今回どうなるかはわかりませんが、前回は自分が出ない公演に出演される方とも一緒にお稽古したんです。人によってキャラクターが全然違って面白かったので、今回も皆さんがどんなふうに演じるか楽しみだし、皆さんとお芝居で絡みたいですね。

――前回は生演奏やアンサンブルの皆さんによる歌唱など、音楽も魅力的でした。今作でも歌などは入るんでしょうか?

まだわかりませんが、前回も演出がすごく面白かったですよね。歌や効果音は録音を流すのかと思ったらアンサンブルやバンドの皆さんが実際にその場で音を出していて新鮮でした。今回もそういうのが見られるのか非常に楽しみにしています。

――コロナ禍も少し落ち着いてきて、自由度は高くなりそうですね

そうですね。でも、前回もそんなにやりづらさは感じませんでした。ただ、稽古が最低限でしたしマスクなどもしっかりしていて、皆さんの顔を見る機会が少なくて。今回はもっとお稽古もできるし、皆さんの表情を見られるのかなと思います。本番でも、私の出番がないシーンは楽屋のモニターで見られるので楽しみですね。ゲネプロがあったら客席からも見たいなって思います。

――覚えていたら、前回の公演で印象的な出来事を教えてください

たくさんあります! 一番印象的だったのは、昼夜公演があった日の夜公演で(シャオリンの)相手のセリフを読んでしまって。途中で「これ私のセリフじゃない!」って気付いて、焦りながらもアドリブで乗り切りました。相手の方も、自分のセリフを私に読まれちゃったけどアドリブで切り返してくれて。終わった後に謝りましたが、ご本人は稽古中にずっと注意されていたアクセントを本番でも直せなかったことに落ち込んでいて、私のミスは全然気にしていなかったのをすごく覚えています(笑)。何度か朗読劇をやったことはありますが、人のセリフを読んでしまったのは初めてで自分で驚きましたね。昼公演も見てくださった方の中には「アドリブ入ってたね」って気付いていた方もいれば「ナチュラルで全然わからなかった」という方もいて救われました。

――普段はアニメなどのお仕事が中心だと思いますが、朗読劇の面白さや魅力はどんなところに感じますか?

生というのもそうですし、演じる人によってキャラクターがガラリと変わり、なおかつ演じている声優さん・役者さんの表情が見られることです。アニメやドラマCDはキャラクターありきということもありますが、朗読劇は表情を見られるのが貴重だし大きな魅力だと思いますね。あと、兼役で1人が何役も演じたりするので、声やお芝居の違いを見られて旨みがいっぱいだと思います。

――今年は江戸川乱歩デビュー100周年ということです。乱歩にまつわるエピソードがあったら教えてください

池袋の立教大学にある旧江戸川乱歩邸に行ってみたいなとずっと思っています。書斎として使われていた蔵で、資料館みたいになっているんですよ。開放日は色々見ることができるらしくて、いつか行ってみたい東京のスポットの一つです。

――最後に、見にくるお客様へのメッセージをお願いします

公演は9月とはいえ、きっとまだまだ暑い日が続いていると思います。今回の作品はゾワゾワっとする要素がたくさん含まれていますので、ぜひ劇場に足を運んで、一緒にひんやりしていただきたいですね。それから、生の役者の細かい芝居と、照明や音響といった演出を味わえるのは劇場ならでは。ぜひ堪能していただきたいです。

インタビュー・文/吉田沙奈