『大阪ぎらい物語』より：写真中央）藤山直美　©松竹

10月3日(火)に京都・南座で開幕した「錦秋喜劇特別公演」。本公演では、上方喜劇の道を女優として真摯にひた走る藤山直美を中心に豪華出演陣が登場！歌舞伎界から中村鴈治郎、中村扇雀を迎え、さらには数々の作品で藤山直美と共演を重ねてきた田村亮、大津嶺子らが顔をそろえ、これまでにない清新な顔合わせで、上方喜劇の名作『祇園小唄』と『大阪ぎらい物語』を色濃く描く。
10月29日(日)まで上演が続く本公演だが、このたび、舞台の見どころが分かる初日レポートと舞台写真、出演者たちからのコメントが到着！以下にてお届けする。

【舞台の見どころと初日の様子】オフィシャルレポート

幕開きは、ご当地・祇園のお茶屋を舞台に繰り広げられる恋物語『祇園小唄』。

上方喜劇は、歌舞伎を源流としてその芽が育ち、明治になって「喜劇」という名を以て誕生するに至ったもの。今回は、歌舞伎俳優の中村鴈治郎と中村扇雀が、昭和の時代から上演を重ねてきたこの人気演目に挑んでいる。

祇園の舞妓・清香と恋仲で、本業そっちのけで、お茶屋で遊び惚けている、薬問屋・竹田屋本家の若旦那・利兵衛（中村扇雀）。そこへ迎えにやって来たのが竹田屋分家の若旦那・卯三郎（中村鴈治郎）。久しぶりに茶屋へきた卯三郎は、つい嬉しくなり一杯、二杯……、と一緒に酒を飲み始め、楽しく踊りだす始末。

するとそこへ利兵衛の姉・お甲が怒り心頭で店へ現れる。「清香と結婚できるならまじめに働く」と懇願する利兵衛。お甲は結婚を認める代わりに、清香の心を試してみよと、嘘の心中話をもちかけるよう迫る。そして、清香と利兵衛のやりとりを、卯三郎は見届け人として記録していくが――。

ここでの二人のかけあいに、客席からは笑いがこぼれ出していた。果たして清香は心中を受け入れてくれるのか？こってりとした上方喜劇の雰囲気で満ちた、意外な恋の結末はぜひ劇場で！

続く二幕目は、藤山直美が主役を勤める『大阪ぎらい物語』。

昭和の喜劇王・藤山寛美の代表作の一つとして人気の名作喜劇で、父の当り役を女性に変え、直美が熱演。本作は、昨年大阪松竹座の上演で好評だった声に応え、新鮮な顔ぶれでの再演だ。

大阪・船場の木綿問屋を営むおしず（大津嶺子）は商売も繁盛し、順風満帆に見えるが、二人の子どものことが悩みの種。長男・新太郎（中村鴈治郎）は気弱なところがあり、おしずの弟・忠平（田村亮）を後見に商売の勉強をさせていた。そして妹の千代子（藤山直美）は、亡き夫の子で異母姉妹にあたる出来の良いおとみ（中村扇雀）に比べ、優しいけれどちょっと変わったところがあり、あろうことか店の手代に恋をし、結婚したいと言い出す。おしず、忠平に猛反対され、手代も地元へ帰されてしまうと、怒った千代子は車引きとして働く！と家を飛び出してしまった。一家総出で飛び出た千代子を探す中、車を引いてもどってきた千代子は、家に帰る代わりに……と様々なお願いをしていくことに――。

アドリブを交えた勢いある藤山演じる千代子の様子に、どっと劇場も盛り上がりを見せた。千代子のお願いによって次々と家族の問題が解決していき、最後の砦・母のおしずにもう一度、手代との結婚を願う。母と娘の愛情あふれるやりとりに客席は感動に包まれ、思い出の子守歌を歌う名シーンでは、ハンカチを片手に目をぬぐう観客の姿も。上方喜劇らしい人情味あふれる一幕だ。

笑いと涙の名作をたっぷり2本が楽しめる本公演。濃密な芝居に劇場は充足感に包まれ、初日の舞台は終演となった。

初日を迎えた出演者のコメントをご紹介！

藤山直美　コメント

「稽古場を経て南座での舞台稽古に入り、いよいよお客様にご覧いただく事に対して、身の引き締まる思いがいたします。誠心誠意、皆様に喜んでいただけるよう、舞台を勤めさせていただきます」

中村鴈治郎　コメント

「藤山直美お姉さまにどこまでもついて参ります！」

中村扇雀　コメント

「楽しみにしていた公演がいよいよ初日を迎えます。上方喜劇の血を引く（藤山）直美さんと、上方歌舞伎の血を引く私たち兄弟が、がっぷり四つに組んでの舞台。皆様、是非お見逃しのないように」

田村亮　コメント

「久しぶりの南座公演、嬉しいです。藤山直美さん、そして中村鴈治郎さん、中村扇雀さんも御一緒。今回も学ぶことが多いと思います。頑張ります」

舞台の見どころを凝縮！初日公演のダイジェスト映像を公開！！