京の年中行事「當る卯歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」が開幕!

『義経千本桜 すし屋』 左から中村鴈治郎の梶原平三景時、中村獅童のいがみの権太

12月4日(日)、京の年中行事「當る卯歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」が開幕!

冬晴れとなった「吉例顔見世興行」の初日。古式ゆかしいまねき看板が来場する観客をお出迎え、賑々しく開催となった。昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染症への予防対策を講じ、三部制にて、各部二時間半程度で上演する。本年は全席数の約98%を販売しているほか、客席での飲食も解禁となり、幕間にはお弁当を広げる観客の姿も見られた。

第一部の幕開けを飾ったのは、義太夫狂言の名作『義経千本桜 すし屋』。顔見世に24年ぶりの出演となる中村獅童がいがみの権太、中村鴈治郎が風格ただよう梶原平三景時を演じる。日頃の非道な行いにより勘当の身の権太だが、母親を騙して金をせしめる始末。褒美欲しさに訴人する姿に怒った父親は思わず権太を刺すが、実は勘当の許しを請う機会を伺っていた。善心に立ち戻り、死に臨む権太の本心が描き出される場面では、鬼気迫る権太の演技が光り、多くの観客も胸を打たれた様子だった。

続いては、中村扇雀親子による勇壮な舞踊『龍虎』。迫力のある音楽とともに、龍虎が現れ、死力を尽くして戦う。荒々しい毛ぶりで観客を圧倒し、最高潮に達した二頭の聖獣の戦いに、思わず客席も息をのんだ様子。終盤、月光の中で両者が静かに舞う場面では、緩急と視覚美に富んだ演出で観客を魅了し、情愛と勇壮さを見事に描きだした俳優陣の演技に、客席から惜しみない拍手が送られ幕となった。

第二部の序幕は『封印切』。中村鴈治郎演じる亀屋忠兵衛と、中村扇雀演じる傾城梅川は深い仲だが、身請けの金が工面できない。そこへ梅川に横恋慕している片岡愛之助演じる丹波屋八右衛門が現れ、八右衛門の口車に乗せられ公金の封を切ってしまう。死を覚悟した忠兵衛と梅川の悲劇的な結末に、客席からは嘆息が漏れた。

続く『松浦の太鼓』は、忠臣蔵外伝の名作。片岡仁左衛門演じる松浦鎮信は未だ討ち入りが果たされない赤穂浪士に業を煮やす一方、討ち入りの合図の太鼓の音を聞くととたんに上機嫌。天衣無縫な松浦侯の演技に、客席からも笑みがこぼれる。一方討ち入りの様子が語られる場面では、見る人の心を打ち、大きな拍手で終幕となった。

第三部の幕開けは、『年増』。中村時蔵演じる元深川芸者のお柳が、ほろよい気分で芸者の頃を懐かしむ。過去の旦那の浮気相手との大喧嘩を、江戸の粋な風情で魅せ華やかな幕となった。

続いては、顔見世初上演となる『女殺油地獄』。片岡愛之助演じる油屋の息子・河内屋与兵衛は、放蕩三昧で勘当されてしまう。しかしなお息子を気遣う両親の情に触れた与兵衛は、片岡孝太郎演じる同業の油屋の女房・お吉に金の工面を迫る。雰囲気も一変、油まみれになりながらも揉める両人の緊迫した演技に、客席も一気に張り詰めた空気に。圧倒的な力演の数々に、観客から万雷の拍手が送られ、幕切れとなった。

本年の吉例顔見世興行は今月25日(日)までの上演。12日(月)、19日(月)は休演。