日本テレビ開局70年記念舞台『西遊記』|戸次重幸 インタビュー

日本テレビ開局70年記念舞台として、2023年11月3日(金・祝)~2024年1月28日(日)に『西遊記』の上演が決定した。1978年に「日本テレビ開局25年記念番組」として制作され、堺正章、夏目雅子、西田敏行らの豪華キャストで一世を風靡した人気ドラマを、45年の時を経て新たに舞台作品として、マキノノゾミの脚本と堤幸彦の演出で創作する。本作で猪八戒役に挑む戸次重幸に話を聞いた。

──本日、メインキャストが勢揃いした製作発表が行われました。今のお気持ちをお聞かせください

僕は本番より稽古の方が好きなタイプなので、とにかく早く稽古したいな、という思いです。誤解を恐れずに言えば、お客様よりも先にまず僕が楽しませてもらいます。だってこの豪華キャストの方々が「これから作っていくぞ」というスタートから稽古場で見られるんですよ。皆さんがどんなお芝居をするんだろう、というワクワク感でいっぱいです。

──猪八戒役に対する思いはいかがでしょう

製作発表でも皆さんおっしゃっていましたが、今回「新しい西遊記」というのはひとつのキーワードかなと思っています。そんな中で、八戒が太っていない、というのも新しいと思うので、新しい部分を結構僕が担っているな、という自覚はあります。

──会見では、ドラマ版で猪八戒を演じた西田敏行さんにも言及されていましたね

僕が初めて北海道から出てきて東京で舞台をやったときに、その舞台を西田さんが観に来てくださっていて、飲み会も開いてくださったことが忘れられないんです。学生時代、僕と大泉(洋)でずっと猪八戒の真似とかしていたんですよ(笑)。その方と一緒に飲むことができて、夢のような一夜でした。それが30歳ぐらいのときで、やっぱり『西遊記』のことばかり聞いちゃいましたね。なので、大好きな『西遊記』に出演できることもそうですし、西田さんが演じた役を僕がやらせていただくということも、なんだかあまり現実味がないな、なんて今は思ってしまいます。

──立ち回りも見どころの一つとうかがいました

僕は日本刀の立ち回りは好きですし得意なんですが、猪八戒は鍬で戦うんですよね。ビジュアル撮影の時に持ってみたら、とてつもなくバランスが悪い武器だなと驚きました。日本刀は切っ先の方が軽いからバランスが良くて振りやすいんですが、逆に鍬は先端が重たいので、今まで自分が培った殺陣のノウハウが生きるのかどうか不安です。

──孫悟空役の片岡愛之助さんとは昨年の舞台『奇人たちの晩餐会』で共演されましたが、そのときの印象はいかがでしたか

まさに名は体を表すと言う通り、愛にあふれていて、我々役者のこともそうですし、お客様のこともすごく愛していらっしゃる方なんです。これはご自身でおっしゃっていたことなんですが、愛之助さんはオーディションでこの世界に入られているので、「役者になれた」ということに対してすごく感謝している方なんです。その思いをずっと持ち続けてらっしゃるんだな、と感じます。

──今回またご一緒できると聞いたときのお気持ちを教えてください

『奇人たち~』で共演していたときに、もう本作の話は決まっていたんです。でも、情報解禁するまでは言ってはいけないのかな、と思って公演中に僕の方からはその話をしなかったんですね。そうしたらカーテンコールに出る直前に、愛之助さんの方から「『西遊記』もまたよろしくお願いします」と言われて、「あ、言っていいんですね?」と思いながら「こちらこそまたよろしくお願いします」というような挨拶をしてからカーテンコールに出て行ったという(笑)。だから『奇人たち~』のときから、また長い付き合いになるとわかっていたこともあって、すごくフランクに話せる関係にもなりましたし、とにかく大変な舞台だったので戦友感が半端ないですね。だから「今回も共に戦って勝ちましょう」という感じです。

──愛之助さんが今作についてのインタビューで、戸次さんのことを「本当に信頼できる俳優」とお話しされていました

愛之助さんは、今回の出演者の中で共演経験があるのは僕だけみたいなので、何か頼ってこられたときには100パーセントで返そうと思っています。いやでも、愛之助さんはスーパーマンですよ。この公演期間中に、歌舞伎の新作をやるんですから。舞台の本番を縫ってドラマの撮影をするというのはありますが、舞台の本番を縫って他の舞台をやるってなかなかないですよね。それをやってのけちゃうんですから。愛之助さんに「ワーカホリックですね」と言ったら、「違うんです、勝手に入れられちゃうんです」なんておっしゃっていましたけど、断ろうと思えば断れるじゃないですか。だからやっぱり本当に役者のお仕事が好きなんだろうな、と思います。

──愛之助さんの孫悟空は、どんな感じになると思いますか

朗らかで陽気なんだけど頼れる男、という悟空像がもう目に浮かんでいます。今回の台本に描かれている悟空はちょっとハードボイルドな感じがして、それを愛之助さんがあのミステリアスな笑顔でやるんだろうな、と思うと楽しみでしょうがないです。僕、笑顔の裏に何かありそうだな、と思わせるような役者が大好きで(笑)。愛之助さんはその筆頭だと思っているので、ちょっとミステリアスでかっこいい悟空になるんだろうな、と思います。

──公演期間が長くて、まず11月3日(金・祝)に大阪で幕を開けてから、途中インターバルがありつつも、年明けて2024年1月28日(日)の東京大千穐楽まで公演が続きます

名古屋公演中に年をまたぎますよね。結婚してから初めて家族と一緒に年を越せないんです。それに気づいたとき、もう歯に衣着せず言いますが、ショックでしたね(笑)。なので名古屋の皆さんにはぜひ、傷心の戸次を慰めるためにも客席から盛り上げていただきたいと思います(笑)。

──初共演の方が多い中、どんな座組になるのか楽しみですね

とにかく人数が多いので、食事会のスケジュールをどう組んだらいいのかな、と悩んでいます(笑)。中井貴一さんが、『趣味の部屋』という舞台で共演したときにとにかくおごってくださったんです。「おごっていただいちゃってすみません」とお礼を伝えたら、「僕も先輩におごられてきたんだよ。僕がシゲ(=戸次)たちに今おごるのは先輩へのお礼だから、シゲも後輩ができたら、僕におごられたお礼を後輩にしてね」って言ってくださったんです。だから、貴一さんにさんざんおごっていただいた恩返しを僕はしなければならないと思っているので、今回の座組の若者たちとも食事会をしたいんですよね。でも、そもそも僕と飲みたくないと思っている子もいるだろうと思いつつ、一応誘うだけ誘ってみたいと思います(笑)。

インタビュー・文/久田絢子
撮影/山口真由子