2021年~2023年に「深作組ドイツ三部作」、「新ドイツ三部作」と銘打ち、ドイツ戯曲を立て続けに6作品上演した深作組が、新たに〈ドイツ・ヒロイン三部作〉第一弾として、この度、『ノラ‐あるいは、人形の家‐』を東京・表参道にある銕仙会能楽研修所と水戸芸術館の能舞台にて上演いたします。
『ノラ‐あるいは、人形の家‐』は、世界中の劇場で多くの名優たちによって演じ継がれてきたイプセンのリアリズム演劇の傑作「人形の家」の、マリー・フォン・ボルヒによるドイツ語訳を、深作組作品の翻訳で第16回小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞した大川珠季が翻訳し、現代を舞台に新たに翻案した作品で、本作品を演劇やオペラ、映像作品などで活躍する深作健太が、現代社会が抱える問題をえぐる鋭い視点でどのように演出するか注目が集まります。
主演のノラ役は、2022年に深作組「オルレアンの少女」で鮮烈な舞台主演デビューを果たし、昨年の深作組「未婚の女」でも存在感のある演技で好評を博した、アーティストとしても快進撃を続ける声優の夏川椎菜、クログスタ役には映像や舞台で活躍する川久保拓司、ノラの夫のトルヴァル役には、深作組には欠かせない宮地大介など素晴らしい出演者が集結しました。
能舞台で繰り広げられるドイツ劇がどのような化学反応を起こすのか、ご期待ください。
コメント
夏川椎菜
『ノラ‐あるいは、人形の家‐』、ノラを演じます夏川椎菜です。また深作組に参加できることをとても嬉しく思います!
「オルレアンの少女」のジャンヌ、「未婚の女」のウルリケと、どちらかといえば少女寄りの女性を演じてきましたが、今回演じるノラは(ライフステージ的な意味で)少し大人な女性になります。私自身が未だ経験していない、苦悩や感情をもっていると思うので、そこを「わからないから」と決めつけず向き合い続けたいと思います。アーティスト活動を通して、自分と向き合ってきた経験が活かされる場面も、大いにありそうだったので頑張ります!《ドイツ・ヒロイン三部作》のスタートダッシュヒロインとして、皆様の胸の中にノラをしっかり刻みつけます!!
深作健太
深作組のミューズ、ナンちゃんこと夏川椎菜さんとのコラボレーションも三作目。鮮烈な〈聖女〉役でのデビューに始まり、ついに今回は〈既婚者〉であり〈母親〉、演劇史上最大のヒロイン・ノラ役を演じていただきます。ふと稽古場で行き詰まった時、「深作組の作品って、役者がそのまま存在することが大切じゃないですか」と、共演者の皆さんに示唆を与えてくれる、頼りになる〈座長〉に成長したナンちゃん。そんな彼女と一緒に、大好きなイプセンの作品に挑める事は、演出家にとって何よりの喜びです。長い付き合いとなる素晴らしい役者の皆さん、スタッフの皆さんも揃いました。今回の大千秋楽は、御縁の深い水戸芸術館ACM劇場にて行われます。現代のノラが、どんな風に〈能舞台〉の上に現れるのか? ぜひ皆様、劇場で目撃してくださいませ。
現代のベルリン。クリスマスの三日間の物語。
優しい夫と一人娘に囲まれ、何不自由ない生活を送っているノラ。
夫のトルヴァルは年明けから、銀行の頭取への就任が決まり、人生の〈勝ち組〉である事が約束されている。しかしノラの瞳はどこか暗い。
ひさしぶりに再会したクリスティーネに、ノラはかつて夫が病気になった時、弁護士のクログスタから借金をして救った過去を打ち明ける。
実はノラはその際に、父のサインを偽造していた。
トルヴァルの就任によって解雇が決まった〈負け組〉のクログスタは、解雇が撤回されなければ、ノラの不正を暴露すると脅す。
クリスマスが終わり、運命の時が迫る――
「何千万、何億、何十億という〈女〉が、自分を犠牲にしてきた……」
現代のノラは、〈人形〉ではなくひとりの〈人間〉として、安住の地を旅立ち、どこへ向かうのであろうか?