~浅丘ルリ子 トーク&シネマ~『1960年代日活映画☆浅丘ルリ子』 合同取材オフィシャルレポート

日本映画史を代表する⼥優・浅丘ルリ子の出演映画とトークを合わせて楽しめる「~浅丘ルリ子 トーク&シネマ~『1960年代日活映画☆浅丘ルリ子』 」が、2024年5月13日(月)・14日(火)、東京・有楽町I’M A SHOWで行われる。この企画では、膨大なフィルモグラフィーの中から、『銀座の恋の物語』『憎いあンちくしょう』『夜明けのうた』『愛の渇き』という日活映画全盛期の4作品が上演される。 開催を前に、浅丘ルリ子による合同取材会が行われた。


――浅丘さんが出演された日活映画を楽しみながらトークも聞ける貴重なイベントとなっています。この企画を聞いた時にどう思われましたか?

すごくびっくりしました。演じることはできますが、自分の言葉で喋るのは苦手なんです。トークショーはすごく久しぶりですから、何をお話ししたら良いのか……。でも、なかなかみなさんに会う機会がありませんから、お目にかかれるのはすごく嬉しいです。


――1960年代、多くの作品に出演されており大変忙しかったと思います。

私だけじゃなく裕さん(石原裕次郎)や(小林)旭さん、高橋英樹さんや渡(哲也)さん、みんな忙しかったですから。自分の時間は全くなく、4つくらい台本を抱えていました。日活自体がすごく盛り上がっていて、次々に新しい作品を作らないといけなかった。あの時代にやらせていただいたのが嬉しかったです。忙しいのに撮影が終わると銀座まで出かけて夜中まで飲んでいました。そうすると次の日の撮影に小林旭さんと石原裕次郎さんが遅れて来る。堪忍袋の尾が切れて「いい加減にしてよ!」と怒ることが何度かありました(笑)。


――当時の日活映画の魅力、今回上演される4作品を手がけた蔵原惟繕監督作品の魅力を教えてください。

蔵原さんも私も洋画をたくさん見ていたので、求められる女優像がなんとなくわかりました。例えばお腹が痛いときは、すごく我慢してちょっとだけ顔を歪めるようなお芝居をする。蔵原さんとは本当に心が通じたと思いますし、だからこそこんなにいい作品を作っていただけたんだろうと思います。どんなに忙しくても監督がいつも見てくださっていると思うと安心できました。もちろん共演者もみんないい人でしたから、忙しくて大変な日活の時代を幸せに過ごせたんだと思います。


――半世紀近く様々な作品に携わってきた浅丘さんですが、日活はどんな存在ですか?

私がデビューしたのは『緑はるかに』というカラー映画。中原淳一先生が挿絵を描かれている『緑はるかに』という新聞小説の主役募集に、映画が好きなこともあって応募しました。なぜか中原先生がずっとそばについてくれていて、私の長い髪を皆さんの前でばさっとお切りになったんです。先生が「この子じゃないとダメ」とおっしゃったこともあって主演をさせていただきました。その経緯もあって、ずっと日活で映画に出ていました。その中で蔵原さんが「あなたは何かを持っている」「わかり合える物がある」と言ってくださり、素敵な作品を考えていただきました。


――今回はラインナップされている作品の見どころや魅力を教えてください。

『銀座の恋の物語』はこのお話をいただいて改めて見ました。ストーリーに富んだ作品で、やっぱり素敵な映画だったと感じました。『憎いあンちくしょう』は、一人で九州に行ってしまう裕次郎さんをオープンカーで追いかける役。免許を持っていなかったので、慌てて教習所に行きました。運転に慣れていないので、ガソリンスタンドにバックでぶつかり、次はカメラマンがのぞいているところにぶつけてしまって。大変でしたが面白い映画になりました。『夜明けのうた』は岸洋子さん、浜田光夫さんと松原智恵子さんとご一緒して、皆さんに喜んでいただけた作品です。『愛の渇き』は全編着物で、若い男の子に恋をする変わった映画でした。全部蔵原さんの作品で、「次はどうしよう」と色々考えてくださったので私も助かりましたし、非常にやりがいを感じました。


――デビューの時いきなり髪を切られたり、運転させられたり、はちゃめちゃな時代ですが、一番思い出に残っている辛いことはありますか?

『憎いあンちくしょう』はオープンカーですから東京から九州まで私が運転しなきゃいけなかったんです。最終的に車を見るのも嫌になりましたけど、若いうちに色々な経験ができてありがたかったと思います。


――逆に楽しかったことはなんでしょう。

たくさんありますね。忙しいのにみんなで銀座に飲みに行ったり、私の家が撮影所から5分だったのでみんなが来たり。両親がみんなによくしてくれるので、みんな何度もうちに泊まりに来ていました。


――楽しみに待っているファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

今回は私が出演している映画の前や後に生のトークショーをやらせていただきます。若い時の映画と今の私を見ていただけたらと思います。トークショーと言っても少ししかお話しできませんが、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。

 

取材・文:吉田 沙奈

 

■浅丘ルリ子プロフィール

©石塚康之

井上梅次監督作『緑はるかに』で映画デビュー。石原裕次郎との共演や小林旭の「渡り鳥」シリーズなど日活黄金期の数多くの作品でヒロインを演じ、「男はつらいよ」シリーズではマドンナ・リリーとして4作品に出演、多くのファンを魅了。1979年初舞台。その後、様々な演出家のもと舞台出演を続けている。これまでに、ゴールデンアロー賞、ブルーリボン賞主演女優賞、毎日映画コンクール田中絹代賞、日刊スポーツ映画賞主演女優賞、菊田一夫演劇賞など多くの映画・演劇賞を受賞。近年の出演作はテレビ朝日「やすらぎの刻~道~」(20)、BSプレミアムドラマ「生きて、ふたたび 保護司・深谷善輔」(21)、映画『男はつらいよ50 お帰り寅さん(20)は出演映画159本目となる。2011年旭日小授章受章。