公演間近!万能グローブ ガラパゴスダイナモス 10周年記念公演「ひとんちでさよなら」

★★公演間近★★

万能グローブガラパゴスダイナモス 10周年記念公演

『ひとんちでさよなら』

椎木樹人(出演)× 川口大樹(脚本・演出)ロング・インタビュー!

 

万能グローブガラパゴスダイナモス 10周年記念インタビュー メインPhP1020332

 2005年、福岡を拠点に旗揚げをした劇団『万能グローブガラパゴスダイナモス』。今年10周年を迎えた彼らの記念すべき公演が、いよいよ6月24日から28日まで福岡のイムズホールにて上演される。今回ローチケ演劇部では、旗揚げ当時から“ガラパ”に在籍している川口大樹 氏(写真右)と椎木樹人 氏(写真左)にインタビューを敢行! 一度聞いたら忘れられない劇団名の由来をはじめ、結成当時から現在までを振り返ってもらった。

 

長くて印象的な劇団名。その名前の由来は?

椎木「それ、聞きます(笑)?最初はノリで意味など全くなくつけたんです(笑)。当時、僕ら高校生だったんですが、お好み焼きをしながら名前を考える会議をしたんですけど、その時に川口さんが『韻を踏むと売れるという法則がある!』みたいなことを言っていて・・・」

 

川口「よくありますよね?スタジオジブリだと、タイトルに『○○の○○』って感じで“の”が入ったらヒットするとか。ダウンタウンやウッチャンナンチャンみたいに、“ン”で韻を踏んでいるみたいに」

 

椎木「そう。それで、じゃあ何にします?って話をしているうちに、なぜか“ガラパゴス”ってカッコいいね!という話が出て、(韻を踏んで)『ガラパゴなんとかにしよう!』となりまして(笑)。いろんな言葉を組み合わせていった結果、『ガラパゴスダイナモス』になったんです。その“ダイナモス”って名前をインターネットで調べてみたら、ジンバブエに『ダイナモス』というサッカーチームがあって、そこのメンバーがセクシーな奴らばかりで、彼らはファンから『グラマーボーイズ』と呼ばれているという記事を読んで、じゃあ初回公演の公演名は『グラマーボーイズ』にしよう!なんて流れにまで発展して」

 

川口「いきあたりばったりだよね(笑)」

 

椎木「そして、“万能グローブ”っていうのは、その頃“劇団○○”と付けるのがダサい!みたいなところがありまして。名前が長いとチラシに記載された時に目立つよね!と言って付け足したんです。今では、あまりに長いので『僕らのせいで改行が増えて困る』とか言われがちです(笑)。でも、結成から5年くらいした頃、あるプロデューサーから『意味をちゃんと考えようよ!』と言われたことがあって。『万能に独自進化をした』・・・なんだっけ?(笑)」

 

川口「ダイナモ(dynamo)は発電機の意味だから、発電するってことから・・・」

 

椎木「“発電する=進化した表現を創りだす”団体が、万能にいろんなものをキャッチしていく・・・だっけ?(笑)。それと、グローブはグローバルって意味あいもあるので、『演劇以外のいろんなものも含めてキャッチしていく団体ですって言え』って言われたんですけど、こんなの恥ずかしいから言ったことないです(笑)。あとは、5周年の時に劇団名が長いから変えようなんて話しも出たんですよ。縮めて『ガラパ』でよくないか?って。でも、もう後戻りはできない感じで今に至ります(笑)」

 

高校時代に…という話が出たが、二人は高校時代からの付き合い?

川口「そうなんです。大濠高校っていう、当時は男子校だった高校の演劇部で、僕が先輩で椎木が2つ下の後輩として出会ったんですよ。で、椎木が高校を卒業した時に自分で劇団をやるって誘われたので、じゃあ一緒にって感じで入ったんです」

 

椎木「でも、川口さんて変な人で(笑)、演劇部って2年生が中心で3年生はほぼ引退なんですけど、なぜか川口さんは大学一年生になったのに、よく部活に来てましたよね(笑)。大会前の稽古を見て顧問みたいにダメ出しとかしてましたもんね。夜は公園で練習していたんですが、そこにもずっといて(笑)」

 

川口「なんで・・・でしょうね?好きだった?愛着があったんでしょうねぇ」

 

椎木「その頃から川口さんは役者としていろんなところに出ていたから、脚本を書く人ってイメージはなかったんですよ。当初は、劇団の脚本は松野尾が書くと決まっていたんですが、彼がまだ高校卒業前で、1年間何もしないのはもったいないから1本公演をやろう!ってなったんです。でも、松野尾が高校でも演劇やっていて書けないから、ある仲間が『俺、脚本書きます!』って言ってきたんですが、その本が面白くなくて(笑)、『ちょっとな・・・どうします?』という感じの本だったんで、川口さんに『書いてみます?』と言ったら、『じゃあ、書いてみようかな~』と軽い感じで言って書いてきた作品が面白かったんですよ!そこから川口さんが脚本を書くようになって」

 

川口「人生初めて書いた脚本だったんですけど、あれがなかったら脚本・演出やってなかったでしょうねぇ」

 

椎木「下手したら、演劇辞めてたかもねぇ?大学時代の川口さんって、演劇に熱い感じではなかったしね。そんなこんなで、僕らの時代は高校卒業したら劇団結成して、大学卒業したら解散するって流れが多かったんですが、10年間も続いたって感じです」

 

川口「脚本・演出って重要じゃないですか?自分も、脚本を書くということが次第に楽しくなってきたので、先日・・・書類上で“福代表”みたいなのになりましたけど(笑)、椎木に代表を任せて自分は作品作りに集中できていて、なんとな~く気づいたら丁度いいところに納まった感じですかね」

 

二人の出会いとなった高校演劇部。では、二人が演劇をやろうと思ったきっかけは?

椎木「小学生の頃、子ども演劇会に入って演劇を見る機会があったんです。だから、中学生になったら演劇部に入ってもいいなって思っていたんですが、部活自体がなくて、バスケットを始めたんです。それで、中学ではバスケも勉強も頑張っていたから、学区で一番頭がいい高校を受けて、そこでもバスケは続けよう!なんて思っていたんですが・・・落ちまして。それで、大濠高校に行くことになるんですが、大濠高校ってめちゃくちゃバスケ部が強いんですよ。全国1・2位を争うような。で、ここでバスケやってもレギュラーになれないだろうから『バスケやめよう!』と思っていたら、部活動紹介があった時に『女子にモテます!女子と知り合えます!』とかふざけたことを言ってる演劇部が出てきまして(笑)」

 

川口「僕が3年の時ですねぇ(笑)」

 

椎木「当時、僕はすごく真面目だったから、『演劇はそんなんじゃない!こんな部活には入らない!』と思ったんです。で、他の部活を体験しに行く時に、演劇部の練習場が手前にあったからチラッと寄ってみたんです。そしたら、演劇部の部長が激アツな人で、『女子と知り合えると言っていたのは、男子校で演劇部に入るってなかなかないから、あれは餌撒きのひとつで、本当は大会にも一生懸命挑んでるし、お客さんを笑わせることをやっているんだ!』と言われて、『そうなのか!』と思った真面目な僕は、翌日から校門で新入生を勧誘するくらいになっていました(笑)。あ、でも実際に女子と知り合えますよって言ってたのは、年に一回、近隣の高校生を集めて劇団を作ることがあって、それでめちゃくちゃ女子を集めるんですよ。大濠公園花火大会の時も女子を集めて皆で行くとか。それでめちゃくちゃモテて楽しかったのもリアルな話です(笑)。そういうの、チヤホヤもされつつ演劇も・・・というのがなかったら、劇団作ろうと思ってなかったでしょうね」

 

川口「僕は、演劇を見たこともないのに何故か嫌いだったんです。ミュージカルとかお堅い芝居のように、客席に向かって大きな声で台詞をしゃべっているイメージがあったんです。でも、高校に入った時、演劇部の部長から劇団☆新感線の『轟天』シリーズを見せられて、もともとドリフターズやダウンタウンみたいなお笑いが好きだったから、こんなバカバカしいことを演劇でもやれるのか!?と思ったのが演劇に興味を持ったきっかけです。そこからいろいろ演劇のことを調べだしていた時に見た『劇団そとばこまち』の『マンガの夜』というシチュエーション・コメディがめちゃくちゃ面白くて衝撃的で、そこから演劇にハマったんです。それがなければ今はないでしょうね」

 

ヤフオクドームにある『福岡ソフトバンクホークス』V鷹モニュメント前で、 ガラパ10周年の成功を願ってv!
ヤフオクドームにある『福岡ソフトバンクホークス』V鷹モニュメント前で、 ガラパ10周年の成功を願ってv!

 

10年間いろんな作品を作り続けてきて、内容に変化は出て来たか?

川口「最初は、テーマを持たせることが嫌いだったんです。意図的にテーマを排除す  るような、ただ面白いだけ・くだらないことだけをやろう!と思って作っていたんです。でも3年くらいしてちょっと行き詰まって、テーマみたいなものを入れてみるか?と思ったらそこで上向いたんです。でも、6・7年目でまた迷走しだすんですよ。そして最終的に、10年目はただ面白いところに戻ろう!みたいな、原点回帰みたいな感じになってますねぇ。それは10年続けてきて、自分たちがやってきたことに少し自信が持てているのかな?って。3年目くらいの時期は本当にこれでいいのか?とか、賛否両論いろんな人たちからいろいろなことを言われますしね。どれが正解とかではなくて、自分がその瞬間その瞬間で信じているものを選ぶしかないんだなっていう、ある種“開き直り”みたいなことがやっと出来るようになったんです。そういう意味では旗揚げした当初に感覚は近くなっているかもしれないです。・・・結果変わっていないって?(笑)」

 

椎木「ただ、技術や経験値は段違いで増しているから、クオリティは最初にやりたかったことをいい形でやれているようになってると思いますね。周りの評価とか今は気にならなくなっていて、面白いと思っていい作品が作れたらそれでいいと、純粋な気持ちで作れています」

 

川口「何が自分たちの自信に繋がっているかって言ったら、一番はお客さんがたくさん来てくれているからですよね。面白くなかったらこんなに人が集まるわけはないと思えるようになったというか。いわゆる“演劇人”って、悪いことではないけど「演劇としてどうだ?」という芝居の見方をしますけど、僕はそこに向かって作ってはいなくて、面白いと思ってくれて自分たちを待ってくれている人たちに向けて作っているから、演劇人や他の劇団に褒められたいっていう思いはないですかねぇ」

 

椎木「結局、演劇が好きになっていないというね(笑)」

 

川口「そこも変わってないという・・・(笑)。いや、演劇嫌いな人ってたくさんいると思うんですよ。『“演劇”って、シェイクスピアとかミュージカルでしょ?』みたいに思っているような、面白いイメージを持っていない人が多いと思うんですが、そんな人たちに向けて作っていかないといけないなと思っているんです。演劇が嫌いだった高校生の僕が、『マンガの夜』っていう芝居を見た時に感じた面白さを届けていけるようになりたいですね。確かにその部分は変わってないですが、演劇に埋もれることなく来れたのはよかったなと思っています」

 

椎木「演劇というものを観に行ったことがないけど気になっているって人も多いと思うんですよね。そんな人が行くきっかけって、周りの友人とかが『ガラパっておもしろい劇団がいるから、観に行ってみない?』と誘われたら行ってみようかなって気になると思うんです。劇団を知ってもらうきっかけってそこが大事だと思うから、一歩踏み出す為には、僕らがいくらチラシを撒いても演劇を観たことがない人を呼べないので、面白いと思ってもらえるような作品を作って、『福岡ではガラパが演劇をブームにした!』と言われるようになる為にも、クオリティの部分でもさらに進化して成長していかないといけないなって思っています」

 

今作、『ひとんちでさよなら』はどんな感じになるのだろうか?

川口「10周年にあたってどんな芝居をやろうかなぁと考えた時に、自信のある球を投げようと思ったんです。それなら“家”だなって思っていて、“家”ということを先行して考えていたんです。以前上演した『ひとんちで騒ぐな』とちょっと関連させるかもしれないですけど、そこはあまり深く考えてはいなくて、家の持つ迷路感をモチーフにするということだけは共通するかもしれないですね。これもドリフターズの(『8時だヨ全員集合!』での“家”で繰り広げられるコント)の影響なのかな?刷り込まれているんでしょうね」

 

椎木「でも、ガラパってそういうところありますよね。宮崎公演の時に、子どものお客さんが純粋で、『違う!違う!』って演じている僕らに声をかけてくれたり(笑)」

 

川口「『志村、後ろ!後ろ!』みたいなね(笑)。家っていうのは自分の中では特別ですね。モチーフとして」

 

椎木「珍しいですね。家がモチーフにある作家って(笑)」

 

川口「家って、面白いですからね。床下や屋根裏部屋があったりして。映画『ネバーエンディング・ストーリー』でも屋根裏部屋が出てくるんですが、あの感じも鮮烈に覚えていて。かくれんぼとかも好きだったし、押入れとかも好きだったな~」

 

椎木「実家がマンションだったら、違っていたでしょうね(笑)」

 

川口「家って油断するじゃないですか。油断するから、人の家でも普通にスッと入れちゃうんじゃない?って。あ、そういえば昔、椎木の家に泥棒入ったことあったよね?」

 

椎木「そうそう、昔ビデオカメラが家から無くなって、家族は僕が無くしたと言うんですが、ある日、近辺で泥棒が出て僕の家にも泥棒に入ったと自供したからって警官が報告に来たんです。で、自分たちは全く気づいてなくて、親が『息子が無くしたと思ってました!』と言ったら、警官が『これで、息子さんの疑いは晴れましたね』って小粋なこと言ったということがありましたねぇ」

 

川口「 以前上演した『ひとんちで騒ぐな』は、まさにそのエピソードを聞いていたので要素として入っていたと思うし、ドリフのコント的なものから想像して作りました。設定は、勘当されていた主人公があることで実家に帰るんですが、自分の家だと思っていた家は売却されて人の家になっていて、2階にいる家主が主人公が家に上がりこんでいることに気づかない話なんです」

 

椎木「実は家って死角が多いんですよね。入り口がたくさんある家って多いですからね」

 

川口「で、お互いに気づかないまますれ違うから、お客さんは『あ、いま階段下りて遭遇したらヤバイ!』みたいな、『志村後ろ!』じゃないですけど、考えてみたらそんなシチュエーションって面白いんですよね。古典的だけど、この面白さは全ての世代に通じるなって。 “笑い”って今はシュールとかコアな方向に進んでいて、その方が高尚だとかアートみたいなことになっていますけど、単純に面白しろいよねってことがあってもいいんじゃない?って。演劇は難しいと思っている人がそれで笑ってくれたら痛快ですしね。みんなにも“家”はあるわけですから、ありえることかもしれないと想像しやすいですからね。なので、久しぶりにこのシチュエーションをやってみようかなと思ったんです。今回の“家”のイメージは、おばあちゃんの家だったりもします。僕のおばあちゃんの家が近々無くなってしまうんですが、子どもの頃お盆や正月によく行っていたから、それが無くなるのがすごく寂しいなと思って、そこの実家のことを考えながら書くことになるかなぁと思いますね」

 

椎木「これって初めてのことですよ。ガラパの芝居で実在の場所がモチーフになるのって。シチュエーションをがっちり固めているくせに、何かからイメージをセットに持ってきたりっていうのは、ガラパではなかったですからね。リアリティの部分でも、今回おもしろいんじゃないかなって思います」

 

まだ作品が書きあがる前に行われた今回のインタビュー。高校時代の懐かしい話に二人のトークはノンストップに!ここではまだまだ紹介できていないオモシロ・エピソードが披露できないのが残念な限り。そして、今回の作品が実際にどう仕上がったのかは、二人の会話を思い返しても気になるところ。高校時代の出会いから十数年の二人。老若男女問わず、ただ単純に“面白い!”と思ってもらえる笑いを追求した芝居作り。二人の強くて変わらぬ演劇への思いが、今回の話からも伝わってきた。そんな二人が率いる、10周年を迎えた“ガラパ”の今後の活躍に期待していきたい。

チケットは残りわずか!ローソンチケットにて発売中!! 演劇が好きな人も演劇が嫌いな人も、まずは彼らの作品に触れてみてほしい。

 

取材/ローチケ演劇部(延)

取材・文/ローチケ演劇部(シ)

 

【公演情報】

万能グローブガラパゴスダイナモス

『ひとんちでさよなら』

 

公演期間:6/24(水)~28(日)

※公演日時の、細は、下記『チケット情報はこちら』より

会  場:福岡・イムズホール

料  金:【全席指定】一般3,000円 ペア券5,200円

【当日座席指定】学生券(大学・専門学校・高校生以下) 1,500円

センパイ割(60歳以上)1,500円

Lコード:84768

※未就学児入場不可