「書を捨てよ町へ出よう」村上虹郎 インタビュー

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撮影 江森康之

藤田貴大演出の寺山作品で
注目の新鋭が舞台初出演

 

 河瀨直美監督の映画「2つ目の窓」で昨年、主演デビュー。先月オンエアのスペシャルドラマ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の主演でも注目を集めた新鋭・村上虹郎が、今年生誕80周年となる寺山修司作「書を捨てよ町へ出よう」で初舞台を踏む。同名の評論集、舞台、映画がそれぞれ別の作品となっている「書を~」をその集大成の舞台として編み直し、上演台本と演出を手がけるのは、演劇界気鋭の才能・藤田貴大(マームとジプシー)。注目のタッグは、藤田のアプローチから始まった。

村上 「『ある演出家が舞台を観に来てほしいと言ってる』と事務所の方に言われて観に行ったんです。それが藤田さんの舞台でした。最初はピンと来なかったというのが正直なところだったんですが、何回か観るうちにどんどん『面白いかも』って理解できるようになりました。そして会うたび藤田さんに、『一緒にやろうか』と言ってもらえて。ただ自分のなかでのスイッチが入ったのは、ビジュアル撮影をして、周りの人に『舞台やるんだ』って言いだしてからですね」

 

 本作には異ジャンルのクリエイターが参加し、宣伝美術を名久井直子(ブックデザイナー)、衣裳はミナ ペルホネンが手がける。彼らの濃密な世界観に寺山ワールドが透けて見えるようなビジュアル(宣伝写真)において、どこか所在なさげに、だが射抜くような目で真っすぐこちらを見据える村上の表情が印象的だ。

 ちなみに彼の母は、シンガーのUA。彼女が住む沖縄の実家(当時)に以前、藤田のカンパニーが遊びに来たことがあった。

村上 「藤田さんがクラムボンの(原田)郁子さんと仕事していて、郁子さんとは家族ぐるみで仲がいいので、たぶんそのつながりだと思います。僕はそのとき不在だったんですけど、そこで育った僕へのインスピレーションがあったのかな。藤田さんが、自分の何かを見つけてくれたのかもしれません」

 

 藤田に対しては、「意外に尖っている人。アタマ(髪型)は丸いんですけど、尖っている人ですね」。と、その印象を語る。藤田の演出のもと、寺山が若き日の自らを投影した主人公「私」を演じる。

村上 「でも藤田さんにはこの前、『寺山修司の話じゃなくて、村上虹郎の話にしようか』って言われて。正直、どうなるのかまったく分からない。初めての舞台に対して怖いとかもなくて、今は楽しみなだけです。『あの花~』で知ってくれた方が増えたかもしれないですけど、僕のことはこれまで印象として『なんかいるな』って感じだったと思うんです(笑)。映画って観るタイミングを逃しがちだし、CMも一瞬だから。そういう意味ではやっと、村上虹郎の芝居をじっくり観られると思ってくださる方もいるかもしれない。どれだけへたなのかも分かってしまうと思うんですけど(笑)、やっとスタートラインに立てるような気がします」

 

 寺山については特別、作品に触れてきたわけではないそう。

村上 「でも“言葉の錬金術師”って、なんてカッコいいんだって思ってます。身近な大人にこの舞台のことを話すと、寺山について語ってくれる人が多くて。何かを読むよりもそれを聞くほうがリアルな気がします。母親にも言ったら、『カルマ(業)だね』と言われました。『なんで?』って聞いたら、『私も寺山にどハマリした時期があったのよ』って」

 

 現在18歳。自分も寺山にハマる予感があるかと聞くと、

村上 「ありますね。むしろハマるべきなのかも」

 

 半世紀前のアングラの血が、彼らの世代にどう受け継がれるのか、目撃したい。

 

インタビュー・文/武田吏都
構成/月刊ローソンチケット編集部 10月15日号より転載

 

【プロフィール】

村上虹郎
■ムラカミ ニジロウ ’97年、東京都出身。カンヌ映画祭出品作「2つ目の窓」で主演デビュー。シャープな存在感が、多方面から注目を集めている。映画「ディストラクション・ベイビーズ」が来年公開。

 

【公演情報】

RooTS Vol.03 寺山修司生誕80年記念
「書を捨てよ町へ出よう」

日程:2015/12/5[土]~27[日]
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
料金(税込):全席指定¥4,800

 

プレリクエスト先着先行 10/16(金)23:59まで受付中!

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