「ヒストリーズ・ジャパン2016」 なるせゆうせい&森本亮治 インタビュー

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「漫才を観るように気軽に来てほしい」
“ためになる”舞台が早くも再演!

 

 古くは日本神話に登場する夫婦・イザナギとイザナミ。平安時代にそれぞれ女流文化人として名を馳せた紫式部と清少納言……。日本史の教科書でおなじみの人物たちが、歴史上の事件をネタに軽妙な漫才を繰り出す「ヒストリーズ・ジャパン」。昨年10月に上演されたこの舞台が、めでたく再演決定! 舞台「弱虫ペダル」やミュージカル「ヘタリア~Singin’in the World~」などの仕事でも知られるこの作品の仕掛け人・なるせゆうせい、そして初演から続投の森本亮治に話を聞いた。

なるせ「過去に手がけた作品がヒントになっている部分はあるかもしれないです。以前に歴史ものの4コマ漫画が原作の『殿といっしょ』(’12年)という作品をやったんですけど、これがギャグの要素もありつつ、しっかり史実に基づいた作りだったんですよ。それをやったときに、“観たときにただ面白いだけじゃなく、ためになるものっていうのは今後の演劇のキーワードになるんじゃなかろうか”と思ったりしたので。最近のものだと『ヘタリア』も舞台にさせてもらったときに、原作をそのままやるんじゃなく実際の歴史の流れが分かるような時代軸にしたほうが、観終わったあとためにもなるし、面白くなるんじゃないかというのはありました」

 

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 今回は初演時とはキャストの大半が入れ替わるが、初演時に中臣鎌足、柴田勝家といった様々な時代の人物に扮して会場を盛り上げたひとりが森本亮治。「仮面ライダー剣(ブレイド)」などでのイケメンキャラとは打って変わり、白塗りやアフロなど、はっちゃけたビジュアルでその人物のキャラクターを表現した。

森本「これまでにもそういうはっちゃけた部分を小出しにはしてたんですけど、なかなかおおっぴらに出せる機会がなくて(笑)。この作品で、コメディー寄りな演技にも幅を広げるいいきっかけをいただけたと思ってます」

なるせ「この作品では、普段から“人を楽しませたい”というようなコメディアン気質を持ってる役者さんを選ばせてもらったんですよ。特に森本くんに関しては、僕が脚本で参加した『弱虫ペダル』の稽古場で醸し出していた空気が、まさにコメディアンっぽかった。特に笑いを要求されてないようなシーンでも、いちいちギャグとかかましてくるし(笑)」

 

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 バラエティ番組「戦国鍋」などをきっかけにした歴史ブームは演劇界にも波及し、現在では様々な歴史ものの作品が存在するが、そのなかでもストレートプレイやミュージカル形式ではなく、“役者による漫才”というスタイルが異彩を放っているこの舞台。

なるせ「歴史をひも解いていくと、“コンビとかトリオみたいな組み合わせで考えられる人物って結構多いな”って思ったんですよ。森本くんにやってもらった中臣鎌足と中大兄皇子、蘇我入鹿っていうのは、大化の改新においてトリオで語られる人物じゃないですか? そういうふうに、歴史のなかで関係性の面白い人たちを切り取ったら、漫才とも相性がよさそうだなって。仲良しコンビもいれば、鎌倉時代の源 義経と源 頼朝兄弟みたいな、対立関係の人たちがいたり……歴史上の人物たちを演じてもらいつつ掛け合い漫才をやるって想定したら、話も膨らませやすくて」

森本「漫才なのでテンポをすごく意識したんですけど、僕個人でいうと普段が早口なので、初演のときにはさらにテンポが上がってしまい、普通の人の3倍速くらいでしゃべってたから『早すぎた!』っていう反省点はあるんですよね(笑)。時代背景なんかを説明するセリフは普通の芝居よりもセリフ量が多いんですけど、そこは飛ばすことができないので、そのプレッシャーはありました」

 

 そしてこの漫才が生み出す独特のリズム感と好相性なのが、劇中に挿入されるCo.慶応作のラップ。かつて「学校へ行こう!」(TBS系)の“お勉強ラップ”でも話題を呼んだ彼のラップを、様々な登場人物たちがセッション的に披露するシーンはインパクト絶大だ。

なるせ「作中で漫才をずっと続けるより、“途中で何かフックになるものが入るといいな”と考えたときに、彼の“お勉強ラップ”を思い出したんですよ。それで本人に相談したら、二つ返事で『やりましょう!』って言ってくれて。ラップの韻を踏むっていうスタイルが、歴史や漫才とも相性がいい気がしていたんですよね。彼ならではのアイデアをいろいろと盛り込んだものを作ってくれたので、いい化学変化が起こせたなって思ってます」

 

 すでになるせは昨年スタートしたこの「ヒストリーズ・ジャパン」を、息の長いコンテンツにしたいと意気込んでいる。

なるせ「演劇や歴史好きな方はもちろん、まさにいま歴史を勉強している若い子たちにもぜひ観てほしいんですよ。歴史に苦手意識のある方もいるとは思いますが、漫才を観に来るような気軽な気持ちで来ていただけたら。ゆくゆくは47都道府県それぞれの地域の歴史を作り上げてきた各地の伝記に残るような人物たちをピックアップして、できれば地方自治体だったり、その地域の方々も巻き込んで作品を作ってみたいという夢もあります」

森本「すごいなあ……僕、次の公演のメイクどうしよう?しか考えてなかった(笑)。再演ということでもちろん僕はセリフも入ってますし、ある程度は余裕があるので、今回から参加する人たちをバックアップできるように頑張ろうかと。で、本番では好き放題やらせていただきます(笑)!」

 

インタビュー・文/古知屋ジュン
Photo/加藤夏子
構成/月刊ローソンチケット編集部 3月15日号より転載

 

 

【プロフィール】

なるせゆうせい
■ナルセ ユウセイ(左)’77年、岐阜県出身。数多くの映像作品のほか、舞台「弱虫ペダル」(’12年~)、「ギャグマンガ日和」(’15年)などの脚本や演出などを手がける。

森本亮治
■モリモト リョウジ(右)’82年、大阪府出身。ドラマ「ごくせん」(’02年)でデビュー。ミュージカル「忍たま乱太郎」(’10年~’11年)土井半助役など多数の舞台作品でも活躍。

 

【公演情報】

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ヒストリーズ・ジャパン2016

日程:2016/4/12[火]~17[日]
会場:新宿シアターモリエール

★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!