THE CONVOY SHOW vol.31『1960』 今村ねずみ インタビュー

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撮影:笹井タカマサ

 

 昨年11月に上演されたTHE CONVOY SHOW「1960」。全員が顔を揃えるディナーショーは定期的に開催していたが、劇場で行われるTHE CONVOY SHOWとしては6年ぶりだった。作・構成・演出を務めるリーダーの今村ねずみに、長いブランクの理由、そしてなぜ再開に踏み切ったのかをまず尋ねた。

今村「ブランクをマイナスには感じていないですし、たまたまなんですけど。結成以来、ずーっとコンボイとしてがむしゃらにやってきたので、ちょっとひと息つきたかったのかな(笑)。みんなもいろんな舞台に出たりして、グループというより個人としての志向が強くなった時期でもありましたよね。みんな僕に依存しているわけではなく、自立したメンバーなので。でもなかなか腰を上げない僕に対して、どこか歯がゆさもあったんじゃないのかな。『(THE CONVOY SHOWを)やらないんですかぁ?』みたいに、なんとなーく聞いてくるヤツもいました(笑)。で、僕の中にもずっと引っ掛かりがあったのは事実。『自分はどこに向かっているんだろう?』と自問自答する時期でもあって、『しょうがない。やろう』って感じでなんとなくというんじゃなく、『やりたい!』という気持ちに徐々になっていきました。みんなには一昨年のディナーショーのときに、『来年はTHE CONVOY SHOWをやる。絶対やる!』って宣言して。やると決めてから準備していくタイプなので、そこから格闘が始まりましたね。『その衝動はなんだ?』って、自分を探っていったというか」

 

 ひとつのドラマの中で、歌、ダンス、タップなど様々なパフォーマンスが繰り広げられるTHE CONVOY SHOW。今村が自分自身を深く探って書き下ろし、初演の好評を受けて4月から全国6箇所でのツアーで再演される「1960」は、平均年齢50歳を超えた彼らだからこそ描ける“オッサンたちの自分探し”というテーマに着地した。

今村「さっき言ったように、『自分はどこに向かっている?』というのがスタートとしてあるから、結局そうなっていました。僕の場合は昔からそうで、作り話であっても自分の感覚がないと書けない。確かにクドいし稚拙なところもあるんだけど、自分が思ったこと感じたことを信じて、いい加減じゃなくちゃんとやる。そこだけははっきりしています。“自分探し”って、言葉の響きからするとなんか綺麗事だけど、こんな厄介なことないと思いません? 自分のことって意外とわかっていないですよね。わかった風な感じはあるけど、絶対わかっちゃいないですよ」

 

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撮影:笹井タカマサ

 嵐の夜、今村演じる主人公にコンシェルジュ(瀬下尚人)から、1冊のノートが手渡される。そこには<お楽しみはこれからだ…1960>という謎のメッセージ。そんな彼の前に、タクシー運転手(石坂勇)、アジサシ(舘形比呂一)、DJ(黒須洋壬)、Barのマスター(トクナガクニハル)が次々と現れる。現実の彼らと役柄がシンクロするように物語は進み、特に同世代の観客には“あるある”な感覚もきっと芽生えるはず。

今村「同級生のヤツから、『定年間近の年なのに、お前まだ自分探しかよ』って言われました(笑)。だけど、『そんなことやってるヤツ、やっぱり観たいよ』って。自分探しなんて、どんな仕事をしていても絶えずいろんな瞬間で思うだろうし、それをオッサンたちが胸張って舞台上で表現していることに、何か感じてもらえるものはあるかもしれない。これまでもその時々のTHE CONVOY SHOWというのを打ち出してきたんですけど、去年の『1960』はみんなが50代を迎えた今のTHE CONVOY SHOWというのを、素直に表現できたんじゃないかと思います。『待ってくれていた人がこんなにいたんだ』というのも実感できて、すごく幸せに感じました」

 

 THE CONVOYは今年で結成30周年。「共に歩んできたメンバーは、どんな存在?」と尋ねると、「大好きだけど大嫌い。ときどきめんどくさい、みたいな(笑)」という照れ混じりの答えが返ってきた。

今村「でも、年を取っても一緒にいられるヤツがいるっていうのはすごい幸せなこと。いること自体がひとつの財産だっていうのは素直に思います。ああだこうだ遠回りしたけど、迷える中年男が行き着くところはやっぱり劇場だったんだなっていうか。そこで待っていて、一緒にやってくれるヤツがいた。“青い鳥”じゃないですけど(笑)。会ったこともないような人たちに媚びるより、まず『ありがとう』は身近な人に言えよ、言える自分でいろよ、みたいなことを『1960』をやって感じたのは事実ですね」

 そう言い、「この年になって恥ずかしいですけど」と、はにかむ姿がまた素敵だ。

 

 12年前には、日本武道館公演を含む全国ツアーで10万人を動員。だがその当時も、「武道館に入ろうとしたら係員に止められ、終演後はマッサージからの立ち食い蕎麦!」と笑う。

今村「やっぱり僕らはテレビに出てる人たちの知名度とは違うんです。僕らの舞台を観に来た人たちが『知ってるよ』ってスペシャル感を持っていただいたらそれでいいし、それしかない」

 

 舞台とは、ごまかしのきかない場。生で目撃する観客は、嘘偽りを見抜く。そんな厳しく神聖な空間で、ましてや彼らは肉体を駆使したパフォーマンスを、長年続けてきたのだ。

今村「長くやっていると、やっぱりモチベーションが大事になってきます。今日明日の問題じゃない。仕事があると、皆さん“何日から何日まで仕事”と手帳に書き込むだろうけど、仕事がない時期にも、やるべきことをどれだけ書き込めるかっていうのかな。若いときは、勢いでなんとかやれちゃったことも確かにありました。ひと晩寝れば体が戻るとか。でも年を取るとトレーニングもケアも必要で、問われるのはやはり普段の自分のあり方になってくる。年を取れば取るほど、自分と向き合う時間が大切になってきたなとしみじみ感じますね」

 

 6年のブランクを経て昨年復活したTHE CONVOY SHOWは、再演といえど2年連続での開催となる。では、この先は?

今村「自分にとっての一番のテーマはそこです。『1960』をやった。『で、お前どうだったんだ?』って問いが、自分自身に突きつけられている。この再演をやり終えて、『この先の展開、もちろんありますよ!』と言える自分でいたらいいなと思いますね」

 

取材・文/武田吏都

 

【公演情報】

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THE CONVOY SHOW vol.31『1960』

日程・会場:
2016/4/6[水]~17[日] 東京・天王洲 銀河劇場
2016/5/12[木]~14[土] 大阪・森ノ宮ピロティホール
2016/5/18[水]~19[木] 名古屋・アートピアホール
2016/5/25[水] 新潟・りゅーとぴあ・劇場
2016/5/27[金] 札幌市教育文化会館 大ホール
2016/6/3[金] 福岡・ももちパレス

作・構成・演出:今村ねずみ
出演:瀬下尚人、石坂 勇、舘形比呂一、黒須洋壬、トクナガクニハル/今村ねずみ

★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!