ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」 吉野圭吾 インタビュー


“心に何かを感じてもらえたら”
新たなフック船長に名優が挑む!

 

 夏の風物詩ともいえる舞台、ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』。初演から36年間にわたり多くの名優がステージを彩ってきた。この夏、新たにフック船長/ダーリング氏の2役を務めるのは、ミュージカル界に欠かせない存在の俳優、吉野圭吾だ。

吉野「10年以上前に観たことがあって、“いつかやってみたいな”と思っていたんです。当時演じていたのはどなたでしたか……古田新太さんかな。すごく達者な方で、“あぁ~、すごいな”と思いながら観ていた覚えがあります。なので、今回お話が来たときには“やった!”と思いました。特に演じる年齢を意識してきたわけではないですけど、今の歳でこの役が来たというのは、動けるギリギリな感じの年齢だからかな(笑)」

 

 2014年から演出・振付・上演台本を手掛けている玉野和紀とは、『DOWNTOWN FOLLIES』や『CLUB SEVEN』などで共演済み。

吉野「多分ですけど、僕が伸び伸びとフック船長を演じれば、それが正解なんだと思うんです。玉野さんはきっと僕だったらこうするだろう、と思う部分があって選んでくれたのだと思うので。でもそれ以上のことをしたいですね。どの出演者もそうだと思いますが、僕も演じるからには歴代のなかでいちばんいいフックだと思ってもらいたいし、絶対やってみせる!」

 

 熱い意気込みとともに、作品に対しての冷静なまなざしも持ち合わせる。

吉野「いかにネバーランドという世界を子どもたちに信じてもらえるかが大事。そのためにはフック船長はファンタジーの悪役であるということを忘れてはいけないなと。怖くやろうとすれば客席を恐怖のどん底に突き落とすことはできると思いますが(笑)、それではいけない。フック船長にはネバーランドの中での役割というものが絶対あると思うので。作品の色からはみだすことなく、ネバーランドの住人でありたいです。同様に、ダーリング氏にも家族内での役割があるんだと思っています。共演者たちとコミュニケーションを取って、しっかり家族になりたいですね」

 

 ピーターパンのライバルであるフック船長と、ウェンディたちの父親・ダーリング氏。戯曲には、この2つの役は同じ役者が演じるようにと指定されている。

吉野「きっと意図があるんでしょうね。共通点として、子どもたちから見る父親像とか、あるいは理想像なのかもしれない。演じていくなかでその意図を見付けていきたいです」

 

 そして、作品のなかに込められたメッセージを、子どもから大人まですべての人の心に響かせたいと語る。

吉野「単純に面白かった、というだけではない部分を感じてもらえたらいいなと思います。ちゃんと何かが残るミュージカルにしたい。キチンとお話を積み上げて、感動に辿り着けたら」

 

 永遠の子どもの国、ネバーランドにちなんで、子どものころに戻りたいと思ったことは?と尋ねてみると、ほほえましいエピソードを打ち明けてくれた。

吉野「昔に戻りたいとは思わないですね。でも、子ども時代にやり直したいことがひとつだけあって。小6のころ、初恋の女の子に渡したラブレターの『好き』という字をちゃんと漢字で書きたい! 当時、ひらがなで書いてしまったんですよ(笑)」

 

 インタビューの最後には、「僕も(ピーターパン役のように)空を飛びたいなあ~。ま、無理でしょうけど(笑)。代わりに、ロープにフックを引っ掛けて、シャーッて渡ってみたりしたいです。スタッフさんに今から頼んでいるんですよ。『フックを強化しておいてほしい』って。フック船長というからには、フックを使わないとね!」と茶目っけも。

 

 情熱的でユーモラス。そんな吉野ならではのフック船長が、ネバーランドで待っている。

 

インタビュー・文/片桐ユウ
構成/月刊ローソンチケット編集部 6月15日号より転載

 

【プロフィール】

吉野圭吾
■ヨシノ ケイゴ ’71年、東京都出身。劇団四季、音楽座にて数々の作品に出演し、以降はミュージカルを中心として活躍。自身の演出・構成によるライブも手がける。「宝塚BOYS」「傾く首~モディリアーニの折れた絵筆」で第34回菊田一夫演劇賞を受賞。

 

≫唯月ふうかインタビューはこちら

 

【公演情報】

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ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』

日程・会場:
2016/7/24[日]~8/3[水] 東京国際フォーラム ホールC
2016/8/17[水] 大阪・梅田芸術劇場メインホール

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