舞台を中心に、年間を通して数多くの作品で活躍している中村誠治郎と藤田玲。2人は舞台「戦国BASARA」シリーズなどで共演しているものの、仕事で顔を合わせることは意外に少ないのだという。
中村 知り合ってから5年くらいなんですけど、そこからの付き合いは濃密ですね。
藤田 なんていうのか、ウマが合うっていうのかな。
中村 二人とも役者やりながら音楽もやってるし、ゲーマーでもあり。
藤田 ゲーム内でも会ってるもんね(笑)。
同じく俳優でもある根本正勝とのユニット、Ashでの活動も好調な中村、ロックバンド、DUSTZのフロントマンとして長く活動を続けている藤田。共通項の多い2人が共演する11月の舞台「カフェ・パラダイス」は、10月に放送されるドラマ「夜カフェ」とのユニークな連動企画だ。
未亡人の店主マリ(山田栄子)が切り盛りするカフェ「パラダイス」は、閉店後は音楽ダンスユニット、wonder×wonderの稽古場として開放されていた。マリの義理の息子で天性の音楽の才能を持つアツシ(中村)がかつて在籍していたwonder×wonderだが、現在は音楽に情熱を傾けるジュン(村田洋二郎)、アツシに代わりボーカルを引き受けたトモ(藤田)らがデビューを目指し頑張っている。そんな夢を追いかける若者たちが集うパラダイスは、ある小さな誤解をきっかけに揺れ始め、それが店に出入りする人間たちの人生をも揺さぶるような大騒動へと発展していく――。
ドラマはwonder×wonderの結成から現在のメンバーが集うまでのストーリーを追いかける流れで、これを見ると舞台の人物相関図や物語の背景がよりわかりやすい構成になっている。亡くなった父親への反発から不安定な音楽の道を捨て会社員になるアツシ、家族を養うために夢だった動植物の研究者を諦めたトモ。2人の演じる役どころに関して、たびたび出てきたキーワードは「共感」だ。
中村 自分がやりたいと思う仕事と、実際にやっている仕事のギャップに悩んでる人って、すごく多いんじゃないかと思うんですよ。そこは特に、来てくださる方々にも共感してもらえる部分じゃないかと思います。あと個人的には、今ちょうどAshのライブツアー中なんですよね。それが終わってからあまり時間を空けずに、自分とアツシを重ねながらアーティストモードで演じられるかなとは思いますね。
藤田 トモは研究者になりたいっていうのと、みんなでグループをやったり歌いたいっていう二つの夢を持っていて、そのせめぎ合いの中で自分と戦っている。これが好きでやりたいんだけど、他にも才能があってこっちのほうが生計を立てやすい…だとか、自分の夢に対して上手く気持ちのバランスをとれない人もいると思うんですよね。アツシとは違うパターンですけど、これはこれで共感できる人もいるんじゃないかと思うんです。俺自身としては役者活動と音楽活動の比率に悩んだことがあったり、若い頃に幼馴染と一緒にバンドを始めた感じなので、そういう意味では仲間と何かを作りたいっていう思いは自分とかぶるところがあって、やりやすいかなって思いました。
そしてこの作品での2人は、バンド形式ではなくダンスボーカルグループに扮して歌い踊るのも見どころの一つ。村田を加えた3人で聴かせる歌や、人気ダンスユニット、梅棒のメンバーを交えたダンスにも注目が集まりそうだ。
中村 イメージ的には某国民的ダンスボーカルグループをさわやかにしたような感じで(笑)。普段はバンドでやってるから、ドラマの撮影でパフォーマンスしたときには戸惑いがあったんですよ。最初は恥ずかしさが勝ってたんですけど、やっていくうちに「あれ? 気持ちいいな?」って。玲ちゃんが即興でハモってきてくれたりするシーンもあったんですけど、これが本当に楽しくて。監督が「これでいいかな」って言ってるのに「いや、もっかいやりましょう!」とか言っちゃって。
藤田 「よし、アゲてくぞー!」とかはりきっちゃってね(笑)。普段のライブだと勢いや流れに合わせて動くから、振付が決まってると、結構アタフタするんだよね。
中村 カッコいい系の役だから、はっちゃけるんじゃなくてカッコつけなきゃいけないんですけど、ライブのときとかまったくカッコつけてないからそれがまた気持ち悪くて…。
藤田 まあ、誠ちゃんは元がカッコいいからね。
中村 ああ、それはね…どうもありがとう(笑)。
藤田 (笑)。いただいた曲がバンドテイストの曲だったんで、バンドっぽくやるのかな?と思って撮影現場に行ったら「じゃあ振付やります」って聞かされて、「え、踊るんですか?」みたいになって。でも振付がある程度入ってからは、わりと楽しめましたね。
この2人や村田だけでなく、パラダイスの店員・小太郎役でwonder×wonderとつながっていく小野健斗、舞台版のみの新キャラクターとして出演する椎名鯛造ら、メインキャストには前述の〝BASARA”シリーズなどさまざまな作品で共演してきた“勝手知ったる”メンバーがそろう。
中村 ドラマの撮影は短いスパンだったんですけど、もう2か月くらい撮影続いてるかのような安定感がありましたね。ただ知ってはいるけど、役の関係性はこれまでやってきたものとは全然違ったんで、そこはお互い探り合いながらやってました。俺が知らない玲ちゃんがいたし、(村田)洋二郎と芝居してても役が違うと「ああ、こういう顔もするんだ?」っていうような、新しい発見がいっぱいありましたね。洋二郎もきっとそう思ってたと思うし。
藤田 今回の主要メンバーとは“BASARA”でバラバラに共演してたりするんですけど、本当に全然違ったもんね。
中村 だって“BASARA”じゃ殺し合いみたいなことしてましたからね、「なんだ貴様!」とか言って(笑)。
藤田 今回、舞台の方はまだ台本もらってないですから、もしかしたら殺陣から始まるかもしれませんしね(笑)。
中村 お客さんの中には、俺らといえばアクションのイメージが強くて、このメンバーで立ち回りっぽいシーンがあったら面白いんじゃないかって期待している方も多いんじゃないかと思うんですよ。だから、いい意味で期待を裏切りたいですよね。特に俺と玲ちゃんは音楽をやってるんで…。
藤田 まずは歌で魅せないとね。
中村 頑張ります!
藤田 もちろんお芝居で見せるのは当たり前なんですけど、Ashの誠ちゃんとDUSTZの玲が同じ歌をハモりあったりしながら歌うなんて、なかなかない機会なんで。
中村 前に一度一緒にライブやったことがあって、そのとき1曲だけコラボで歌ったんですけど、お客さんの反応がめちゃくちゃよかったんです。そういう意味では楽しみにしてもらっていいと思います。
藤田 しかも洋二郎さんも一緒に歌いますからね。
中村 洋二郎はこれまで一緒に出た作品では歌ってるイメージがなかったので俺らも意外でしたけど、芝居面で絶対引っ張ってくれる存在なんで、なんの不安もないですね。
藤田 本当に。頼れるメンバーです。
ドラマでのメンバーのテンションを目の当たりにした製作陣が、そのイメージに合わせて舞台版に加筆しているとのことで、取材の時点では台本が完成していなかった「カフェ・パラダイス」。“まだ全体像が見えてないところもあるんですけど”と前置きしつつ、ドラマ~舞台へと連なる作品テーマについて2人が語ってくれた。
中村 「夢とは?」というのが全体のテーマとしてあると思います。現実と夢との違い、やるべきこととやりたいことの違い。そこに悩んでいる人が世の中の大半だと思うんですよね。ドラマの段階では「夢を追いかけたい」っていう風になると思うんですけど、実際にはそうじゃなくて、夢より現実のほうを向かなきゃいけないことのほうが多いじゃないですか。夢と現実のはざまで悩んでる人たちが「どうやって道を切り開いていくのか?」っていうところに共感できる部分を見出してもらえるんじゃないかと思うので、そこがメッセージとしては強いんじゃないのかな。
藤田 誰もが一度は目の当たりにする、人生の分かれ道を思い出したり、考えたりするようなシーンがあって…深いところまで読もうとすると、人生論に近くなってくるんじゃないですかね。欲しいものが全て手に入るわけじゃなくて、最終的には必要なものだけが手手元に残ったりするわけじゃないですか、人生って。そういうメッセージが裏にあったりするんじゃ、ないかなあと。
中村 人生は取捨選択ですからね。取捨選択ですよ。
藤田 それっぽいこと言いたかっただけでしょ?(笑)
中村 太字で書いて欲しいことを言ったつもりだったんだけど(笑)。
ドラマ~舞台の中心となる「パラダイス」は、登場人物たちにとっての憩いの場であり、夢につながるスタート地点でもある。最後に、ありがちな質問だが2人にとってパラダイスといえる場所とは?
中村 まったく同じことを他でも聞かれたんですけど(笑)、俺は速攻でマンガ喫茶って答えましたね。「週刊少年ジャンプ」とかマンガ誌を休みの日に一気にまとめ読みするのが至福の時間なんですよ。2.5次元作品なら、原作をひと通り読んでる計算になりますよね。
藤田 (「週刊ローチケHMV」の表紙を見ながら)俺のバラダイスはHMVとかの洋楽コーナーですね。あれこれ試聴してるとき、めっちゃ楽しいんですよ!
中村 玲ちゃん、(ローチケHMVに)寄せにいってない?
藤田 いや、ホントだよ! ジャケ買い派なんで、まずジャケットを手当たり次第見て「これかっこよさそう!」と思うものから聴いてます。「今はイギリスではこういう音がきてんだ?」とか、「リバイバルでこういう音がまた流行ってるんだな」とか、いろいろなジャンルの音を聴きながら考えるのが好きですね。
中村 ジャケのイメージと全然違うんだけど、何回か聴くとハマるっていうのは確かにあるよね。思い出したんですけど「パラダイス」といえばダーツバーですね。多いときは週に4回は行ってます。店員さんもお客さんもみんな知り合いだから気も遣わないし、ダーツしないでずっと周りの人としゃべったり、そこでセリフ覚えたり。
藤田 そういう場所は必要だよね。やたらお客さん少なかったりするんだけど、頼むからつぶれないでほしい…!
中村 俺、何回か行きつけの店で店番しましたからね。
藤田 俺もあるわ。店番頼まれてるときにお客さん来ちゃって「いらっしゃいませ~。奥の席、空いてますよ?」って…すごい脱線してますけど、俺ら内容の話してますっけ?
中村 したよ。人生は取捨選択だって。
藤田 そこに落とす!?(笑)
インタビュー・文/古知屋ジュン Photo/齋藤豊
構成/月刊ローソンチケット編集部 10月15日号より転載
写真は本誌とは別バージョンです。
【プロフィール】
■中村誠治郎
ナカムラ セイジロウ ’80年、福岡県出身。舞台「銀河英雄伝説」や「戦国BASARA」シリーズなど、多数の人気作品に出演している。
■藤田 玲
フジタ レイ ’88年、東京都出身。’03年に「仮面ライダー555」で俳優デビュー。以降、舞台や映像作品で幅広く活躍中。
【公演情報】
舞台「カフェ・パラダイス」
日程:2016/11/23(水・祝)~27(日)
会場:東京・銀座 博品館劇場
★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!