とことん笑いに振り切ったエンターテイメント
演劇に馴染みのない人にこそ観て欲しい!
脚本・演出家として数々の人気作品を手掛け、俳優としても活躍中の宅間孝行主宰の「タクフェス」に新シリーズが誕生! その名も「タクフェス春のコメディ祭!」の記念すべき一作目『わらいのまち』について宅間本人と、共に3兄弟を演じる永井大、柄本時生に本作への想いを語ってもらった。
――あたたかな笑いと切ない涙溢れる作品で人気の「タクフェス」。新たに「タクフェス春のコメディ祭!」を立ち上げた理由から伺わせて下さい。
宅間 1997年に劇団を旗揚げしてから途中、劇団のスタイルは変わってきたものの、20年の節目が2017年。ここまで自分がエンタメの世界に身を置いてこられたのは、兎にも角にもお客様のお陰だと思っています。それを証明すべく、新シリーズを始動することにしました。もう一つには、「タクフェス」では秋に1本しかやっていなかったので、年に2回の公演にして、秋は切ないシリーズを、春は“笑い”に特化した作品をお届けしようと。そのスタートは、僕にとって初のシチュエーション・コメディだった『わらいのまち』でいきたいと思ったんです。
――何の名所も特産品もない寂れた田舎町の温泉旅館「まつばら」を舞台に、町おこしをめぐって、人々の行き違いと勘違いが重なっていく騒動を描いた本作。宅間さんは“疫病神”と言われる「まつばら」の長男・富雄を、永井さんは旅館の主人の次男・信雄を、柄本さんは板前の三男・将雄役ですね。
永井 僕は初舞台が宅間さんの作品『夕』(08)で、役者をやっていく上で必要なことをたくさん教えて頂きました。以来、またいつかご一緒したいと思っていたのでとても嬉しいです。前回から約9年が経ち、年を重ねた今の自分なりに宅間さんとコミュニケーションできることがあるかなと思っています。
柄本 僕は宅間さんの作品に出演するのは初めてです。
宅間 お父さん(柄本明)とは仕事でご一緒していて、時生君の話は聞いてるよ。
柄本 ええっ!
宅間 親子でご飯食べていたら写真週刊誌に撮られたって。
柄本 ありましたねぇ。なぜか僕が親父に結婚報告したと勘違いされて。でも、あの記事を見て、あの日が親父の誕生日だったと気付いたんです。
永井 本当に!?
宅間 最低だなあ。日本が誇る名優なのに!
柄本 …いや、親父から電話がかかってきて「ご飯食べよう」と言うから、てっきりただの食事だとばかり…
――これは稽古場でも何か起こりそうですね(笑)。
永井 いやあ、楽しみです(笑)。
宅間 でもあのご両親の息子さんですからね。大いに期待しています。
柄本 親の七光りってすごい!
全員 (爆笑)。
――作品の話に戻ると、『わらいのまち』は「東京セレソンデラックス」の3作目『JOKER』(01)がもとになっているそうですね。
宅間 それを2011年に『わらいのまち』とタイトルを新たにシアタークリエで上演して。その時に東宝のプロデューサーの方に「クリエ史上一番お客さんが笑った」と言って頂いたんですね。
――その待望の再演でもあるわけですが、そもそも宅間さんがシチュエーション・コメディを書こうと思ったきっかけとは?
宅間 正直な話をすると、面白いシチュエーション・コメディがないと感じていたからですね。当時はまだ劇団も売れていなくて、するとお酒の席なんかで「もっと面白いものを作ってやる!」と息巻いたりして(笑)。そこで劇団の仲間から「じゃあ書いて下さいよ」と言われたのが始まりです。半ば意地で書いたところもありますが(苦笑)、それぐらいの気持ちで取り組まないとお客さんに劇場に来てもらえないし、自分もこの世界で生きていけない、と。とにかくハングリーでしたよね。
――永井さんはクリエの公演をご覧になっているとか?
永井 拝見しました。コメディは作るのも演じるのも難しいと思うのですが、本当に面白かったんです。人が勘違いしてすれ違っていくさまが見事に表現されていてメリハリがあって、「これこそ誰が観ても笑って楽しめる作品だ!」と感じました。その作品を今回演じるので身が引き締まりますね。
――柄本さんはコメディは?
柄本 舞台で本格的なコメディをやるのも初めてなんですよ。だから稽古場でいろいろ勉強させてもらおうと思ってます。
永井 演出家としての宅間さんは、ストレートに物事を言って下さるから、すごくありがたいよ。
柄本 そういうほうが僕もいいです!
宅間 時生はどちらかというと、笑いを取ったからって意外だとは思われないタイプだよね?
柄本 そうかもしれないですね。
永井 期待値が高い分ね。
柄本 そんな…どうしよう。
宅間 俺は全然心配してないよ。(永井)大はその逆。『夕』の時がそうで、あるドラマのプロデューサーの方が舞台を観に来て下さって「永井君、あんなイカツイ役をやるんだ!」と驚いていたから。
永井 ああいう役は初めてで、セリフの言い方一つも宅間さんがアドバイスして下さったからできたのだと思います。
宅間 でも大は頭の回転が早いし、役者としてのポテンシャルは皆さんが思っている以上に高いので、今回はそれを見せたいですよね。真面目な好青年のイメージが強いけど、一緒に飲んだりするともう突っ走ってめちゃくちゃ面白いですから。今はよそゆきの姿でしょ? だから俺はつまらなくって(笑)。
永井 あははは。でも宅間さんが言って下さったように、「コメディもいけるじゃない」と思ってもらえるようにしたいですね。
――すでに衣裳もぴったりのお三方が、どんな兄弟を演じられるのかも楽しみです。
柄本 僕は初めてのことばかりなのでいろいろ勉強したいですし、稽古に本番と自分がどう変化していくのかも含めて、めいっぱい楽しんでいきたいです。とにかく頑張ります!
永井 自分の中にある『わらいのまち』のイメージを一度リセットして稽古に臨みたいですね。その中で一から人を笑わせることだったり、考えながら稽古を重ねていけたら。そして最終的にはカンパニーが一丸となってお客様に笑いをお届けできたらと思います。
宅間 この作品にかぎらず、「タクフェス」が目指していることでもありますが、演劇に馴染みがなかったり、逆にアレルギーがある人にこそ観に来て欲しいですね。イベントに出かける感覚で遊びに来てもらえれば、本当に楽しい1日を過していただけるよう、精一杯作っていきますし、前回よりパワーアップしますので。ぜひこのお祭り騒ぎに参加しに来て下さい!
取材・文:宇田夏苗
【プロフィール】
■宅間孝行
タクマ タカユキ 1970年、東京都生まれ。’97年に劇団「東京セレソン」を旗揚げ。’01年「東京セレソンデラックス」と改め、主宰・作・演出・主演として活動。’12年に劇団を解散、’13年に「タクフェス」を立ち上げ、また原作・脚本を手掛けた映画『くちづけ』が絶賛を浴びるなど幅広く活躍中。
■永井大
ナガイ マサル 1978年、新潟県生まれ。主な出演作にドラマ『新撰組血風録』『軍師官兵衛』『ブラック・プレジデント』『恋仲』、舞台『放浪記』など。宅間作品への出演は’08年上演の東京セレソンデラックス『夕』以来となる。
■柄本時生
エモト トキオ 1989年、東京都生まれ。’03年に映画『すべり台』のオーディションに合格しデビュー。近年の出演作にドラマ『初恋芸人』『侠飯』、映画『超高速!参勤交代リターンズ』『聖の青春』など。
【公演情報】
タクフェス 春のコメディ祭!「わらいのまち」
日程・会場:
2017/3/30(木)~4/12(水) 東京グローブ座
2017/4/14(金)~4/16(日) 名古屋・中日劇場
2017/4/18(火)~4/23(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!