待望の再演が決定!歌とピアノで紡ぐ
“ふたりのゴッホ”の物語
天才画家、フィンセント・ファン・ゴッホと、切れ者画商であり、そのビジネスの才で“ソルシエ(魔法使い)”と呼ばれた弟テオドルス(以下テオ)。この“2人のゴッホ”の愛憎や絆を描いた人気コミックが「さよならソルシエ」だ。昨年ミュージカル化され、“大人の2.5次元作品”として高い評価を得た同作の再演が決定!テオ役の良知真次、フィンセント役の平野良に話を聞いた。
役の上では平野演じるフィンセントが兄という設定だが、実年齢では良知のほうが1歳年上というこのコンビ。
良知 いざ稽古に入ったら年の差なんかは気にならなくて、何よりも居心地が良かったんですよ。僕ら二人は一緒の楽屋だったんですけど、全然しゃべらなくても気を使わないというか、自然な感じでいられるんですよね。
平野 確かに。なんだか家みたいな感覚で(笑)。
良知 楽屋で少しうたた寝してると、いつの間にか(平野が)隣で寝てたりしてね。その距離感がそのまま、ステージ上にも表れていたと思うんですよ。
頭脳明晰でクールだが才能溢れる兄に対し複雑な感情を抱くテオ、ひたすら絵に情熱を注ぎ続ける自由人のフィンセントは、兄弟といえども対照的なキャラクター。役作りには、それぞれ工夫を重ねたという。
良知 物語上でのテオの感情を心電図の波形に例えるなら、激しく上下しているんですよ。普段は周りに見せないその感情が、お兄さんが絡むと爆発しそうになる。脚本・演出の西田(大輔)さんからはあるシーンで「ここで感情を出したいよね?でも出さないで」とアドバイスを受けました。その部分は苦労しましたけど、あえて気持ちを抑えることで、より表面上はドライなテオに近づく感じはありましたね。
平野 フィンセントのような天才型の人って、何を考えているのかつかみにくいところがあるじゃないですか。なので初演では周囲に頼らせてもらって、稽古場でもわざとフィンセントみたいにマイペースな行動を取るようにして。悩みながら役作りしてましたね。よく覚えてるのが、ソロパートがある曲なのに僕がトイレに行っちゃってて…戻ったときに西田さんに「何してたの?」って聞かれたので、「あ、トイレ行ってました」って答えたときの、みんなのなんとも言えない残念そうな顔(笑)。そのときに、フィンセントは周囲の人から普段こういう風に見られてるんだろうなってヒントをもらったかもしれないです。
時に優しく、時に狂気をも感じさせるピアノ生演奏のみをバックに、生々しく胸に迫るようなキャストたちの歌声が好評だった同作だが、この“歌”が最難関だったのだそう。
良知 楽曲は1音1音まで計算され尽くされていてどれもすばらしいんですけど、歌がとてつもなく難しいんですよ。
平野 クライマックスのシーンで歌う『手を』という曲が特に、最初に聴いたときには技術的に高度すぎてわけがわからなかったです(笑)。でもできる限り(音楽の)かみむらさんの頭の中に流れるメロディを追いかけようと努力しましたね。やっぱりミュージカルですから、そこは大切だと思うので。
そして初演で舞台オリジナルキャラクターとして作品を盛り上げたポール・ゴーギャン役のKimeru、兄弟と敵対するパリ画壇界の重鎮、ジャン・ジェロームを演じた泉見洋平ら、魅力的なキャストたちも一部は続投となるそうなので楽しみだ。
平野 泉見さんはソロ曲もあるんですけど、クオリティが凄すぎて震えましたね。歌いだすとその場が帝国劇場になるような迫力でした。
良知 他にも稽古場のムードメーカーであり、トークショーではトラブルメーカー的なボドリアール役の窪寺さんだったり(笑)、サントロ役の合田さんはいるだけで絵になる渋みのある方ですし。そんな先輩方がにぎやかな雰囲気を作ってくださる現場なんです。
平野 何度も共演しているKimeruさんも稽古の時間があまり取れなかったなか、みんなと合流して稽古したら完璧でしたしね。
2人が「懐深く役者たちを見てくれる」と信頼を寄せる西田の演出のもと、新キャストも交えて送る再演の意気込みを語ってもらった。
平野 原作自体が面白いですし、スタッフやキャスト全員がとんでもなく高いポテンシャルを秘めたチームだと思うんです。舞台として“安心安全の元にプロがお届けしている”と言い切れる、そのくらいしっかり作ってある作品なので。お客様はただひたすら、劇場で楽しんでいただけたら。
良知 コミックは全2巻なんですが、休憩に入る場所も考えられているので、本当に原作の世界観を壊すことなく作られているんです。さらにその中に、回想シーンの演出が上手く組み込まれていて…2.5次元である以前に、ミュージカルとしてしっかり作られた作品なんですね。今回は劇場も変わりますし、また新たなものに取り組むつもりで向き合えたらと。前回観た方も原作ファンの方も、2度目の魔法にかかれるような空間をみんなで描けたらと思いますね。
インタビュー・文/古知屋ジュン
構成/月刊ローチケHMV編集部 1月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケHMVは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
ⓒ穂積/小学館フラワーコミックスα ⓒミュージカル「さよならソルシエ」プロジェクト
【プロフィール】
良知真次
■ラチ シンジ ’83年、東京都出身。舞台のほか映像作品、アーティスト活動、振付など幅広い分野で活躍中。ソロライブ「SHINJIRACHI LIVE」を1/15[日]・16[月](※追加公演)に開催。
平野良
■ヒラノ リョウ ’84年、神奈川県出身。ミュージカル『テニスの王子様』(’08~’10年)などで高い人気を獲得。出演中の「お気に召すまま」は2/4[土]までの東京公演後、2/26[日]まで大阪、香川、福岡で上演。
【公演情報】
ミュージカル「さよならソルシエ」
日程:2017/3/17(金)~20(月・祝)
会場:東京・シアター1010
原作:穂積「さよならソルシエ」(小学館)
演出:西田大輔
音楽:かみむら周平
出演:
テオドルス・ファン・ゴッホ役:良知真次 フィンセント・ファン・ゴッホ役:平野 良(W主演)
ポール・ゴーギャン役:Kimeru
ムッシュ・ボドリアール役:窪寺 昭 ジャン・サントロ役:合田雅吏
ジャン・ジェローム役:泉見洋平 他