声優として人気、実力ともに確固たる地位を築いている宮野真守。だがそんな彼にとっても、劇団☆ 新感線からの、しかも『髑髏城の七人』の捨之介役へのオファーは、想像もつかない出来事だったよう。
宮野「非常に驚いて、なぜ僕に? とまずは思いました(笑)。にわかには信じ難かったですが、今回の企画内容をうかがったときになるほどと。宮野真守をここにキャスティングするということに、多少なりとも可能性を感じてくださっている。それがとても嬉しくて。お話をいただいたときから足が震えるほど緊張してはいるんですが、それでもとにかく一歩踏み出してみたいと思ったんです」
そして宮野は、小栗旬による“Season花”で初めて生の新感線を体験することになる。
宮野「最初はただ単純に圧倒されていたんです。でも役者の皆さんが入り乱れて走り回っているのを見たときに、あれ? と。これ俺やるな、ドキドキ、みたいな(笑)。ただやっぱり僕は、エンタテインメント性に溢れたものにすごく惹かれてしまう性分。以前の『髑髏城の七人』も映像で観させていただき、歌あり、ダンスあり、大立ち回りあり、といった華やかなステージングに感性を刺激されていくうちに、最終的には中島かずきさんが書かれたお話の巧みさ、奥深さに引き込まれていって…。プレッシャーと同時に、期待感や高揚感といった楽しみがどんどん沸き上がってきました」
着流しに雪駄姿でフラリと現れる謎めいた男・捨之介。「今が客観性をもっていられる最後(笑)」と前置きをした上で、こんな男と分析する。
宮野「人としてすごく色気があるんですよね。それは飄々としているとか、明るいとか、アンニュイとか、不思議な魅力が合わさって彼をセクシーにしている。ただ捨之介が抱えているものの大きさが見えてくると、それこそが彼をそういった人物にしているのだと分かってきて。あとはここに僕の主観が加わり、宮野真守がやるからこその捨之介の人間性、みたいなものが見えてくることによって、新たな魅力を打ち出していけたらいいなと。だから、ただ捨之介の色気を追うのではなく、物語の筋の中にちゃんと存在することによって、僕の中から何がしかのものが出てくればいい。その“何がしか”が何なのかはまだ分かりませんが(笑)」
また今回は新感線にとって初めての挑戦がある。それはダブルチーム制を採用し、宮野と福士蒼汰がそれぞれ捨之介を演じるということ。
宮野「僕は正直ホッとしました。ある意味、一緒に背負っていく人がいるんだってことに。福士さんも僕も新感線は初めてで、そこに向かっていくプレッシャーというのは必ずお互い感じていくことだと思うんです。そういう人が自分以外にもいるというのは、不思議な安心感があって。そしてお互いを意識し合いながらやっていけたらいいなと思います」
座長として臨むこの「下弦の月」は、宮野真守という役者にとってもかつてない大きな挑戦だといえる。
宮野「宮野真守を知ってくださっている方には、確実に今まで見たことのない僕を見てもらえると思いますし、宮野真守を知らなかったという方には、ぜひアニメも見ていただいて、声優をやっている人間も新感線の舞台に立つんだって(笑)、興味をもっていただけたらいいなと思います」
インタビュー・文/野上瑠美子
Photo/村上宗一郎
※構成/月刊ローチケHMV編集部 9月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります