ライトに表現されたヘビーな世界。その先に何を感じる?
鈴井貴之がかつて主宰していた劇団「OOPARTS」(Out Of Place ARTiSt=場違いなアーティスト)。かつての“劇団”という形ではなく、生まれ変わった鈴井のソロプロジェクトとして始動したのが2010年。以降はコンスタントに舞台作品を発表し、今夏の「天国への階段」が4作目となる。本作のモチーフは、孤独死の現場を清掃し、遺品を探す“特殊清掃員”。
「テレビのドキュメンタリーでこの仕事を見たのが始まり。それ以来、孤独死の文献を拾い読み、一人で死んでいった人々のことを考えるようになりました。僕の舞台作品はこれまでも死を意識したものが多く、それは僕自身がどう死ぬべきかを常に考えているからだとも思います。思うように未来を描き、それに近づけようと努力する“生きる”ことに比べ、“死する”ことは突然であったりして、自分で選ぶことはできない」
その“死”の1パターンである孤独死は、現在日本で3万人を超える。
「事象的には一人で死んでいったのだけれど、その死は決して一人ぼっちではなかった。物語としては、そう思えるような救いを見出したい」
社会問題をはらむ一見ヘビーな世界観だが、「そういう事柄をライトに表現することが、今必要」と語る。
「笑った後に『ちょっと待てよ』と考えてもらえるような。笑いとは実は、危機へのバロメーターじゃないかと思うんです。たとえばいじめや差別に関する笑い。後で客観視して『これって笑うべきなのか?』とハタと考えたり。そういう笑いの奥に存在するダークな一面を掘り下げたい」
キャストは、3作連続出演のOOPARTS常連・藤村忠寿(HTB「水曜どうでしょう」でおなじみのTVディレクター)ら、自身を含む10名。
「藤村さんには役者としての模索期間を抜け出して、早く本来の道に戻ってもらいたいですね。それを傍観するのではなく一緒にやることで、元へ戻るスピードを加速させたい(笑)」
また同タイトルのレッド・ツェッペリンの代表曲は、「多感な中学生のときに衝撃を受けた曲」だそう。「今もこの曲がずっと頭にあって、本番でも使いたいと思っていますが、流れなかった際には許諾料が膨大で断念したとお考えください(笑)」
インタビュー・文/武田吏都
※構成/月刊ローチケHMV編集部 5月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケHMVは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
鈴井貴之
■スズイ タカユキ ʼ62年、北海道出身。バラエティ番組「水曜どうでしょう」で有名に。地元・北海道を拠点にマルチに活躍中。
OOPARTS vol.4「天国への階段」
日程・会場:
7/19(水)~25(火) 東京・サンシャイン劇場
8/4(金)~6(日) 大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
8/11(金・祝)~13(日) 北海道・道新ホール
8/16(水) 宮城・仙台電力ホール
8/19(土)・20(日) 長野・まつもと市民芸術館
作・演出:鈴井 貴之
出演:
永野宗典(ヨーロッパ企画)、畑中智行(キャラメルボックス)、
根岸拓哉、吉田悟郎、戸澤亮(NEXTAGE)、菊地美香、平田薫、東李苑、
藤村忠寿(北海道テレビ)、鈴井貴之
受付期間:5/15(月)12:00~21(日)23:59