梅津瑞樹&陳内将インタビュー「これは面白いものになるだろうという確信がある」 三人芝居「6006(ロクゼロゼロロク)」

【左】陳内将 【右】梅津瑞樹

東映がプロデュースする三人芝居「6006(ロクゼロゼロロク)」が7月31日から上演される。本作は、昭和60年と令和6年に起こる二つの誘拐事件を描いたサスペンス・コメディ。滑稽なまでの狂気と駆け引きの中で描かれる三人の男たちの運命を、梅津瑞樹、陳内将、赤名竜乃介が紡ぎ出す。梅津と陳内に公演への想いを聞いた。

 

――本作は、作・演出を『悪夢のエレベーター』や『仮面ライダーリバイス』で知られる木下半太さんが担当しています。最初に脚本を読まれたときの率直なご感想を教えてください。

梅津 これはもう“面白い”が確定しているなと。余白が多い脚本だったので、きっと稽古を重ねることで、もっともっと面白くできるだろうと思いました。

陳内 確かに。普段、最初に脚本を読むときは、作品全体を読む場合と自分の役に焦点を合わせて読む場合があるのですが、今回は、自然と梅ちゃん(梅津)の視点で読んでいたんですよ(笑)。最近まで、別の作品で“相方”を演じていたということもあるのかもしれませんが、梅ちゃんの視点から見て、僕がどう動けば面白いんだろうと考えながら読みました。彼が笑ったら勝ちという意識がどこかにあって(笑)。


――面白い読み方ですね。今回、昭和と令和でそれぞれの役を演じますが、二役を演じることについてはどのように考えていますか?

陳内 同じように演じても面白くないと思いますが、きっと半太さんがうまく書き分けてくださると思います。(演じる役の)職業も違いますし、時代も違うので、素直に演じれば、おのずとそれぞれが出来上がるのかなと思います。

梅津 プロットの段階で、それぞれの役のマインドまですごく丁寧に描かれていたので、書かれていることに則って演じれば、違いははっきり見えてくるだろうと思います。

陳内 梅ちゃんのいいところが昭和と令和のどっちの時代でも見られると思いますよ。


――では、三人芝居ならではの難しさや面白さはどんなところにあると思いますか?

梅津 そもそも僕はこれまで、三人芝居をやったことがなかった気がします。四人芝居と二人芝居と一人芝居はあるんですよ。


――三人は意外とないパターンなんですね。

梅津 なかった気がする。

陳内 僕は一回あった。昨年、メインが三人っていう作品にも出演したことがありましたね。でも、少ないですよね、三人芝居。お笑い芸人でも、トリオは難しいところがあるみたいですよ。本当は二人で物語を進めることができるから、三人でやるためにあえて役を作ることもあると聞いたことがあります。もちろん今回は、お笑いではなく演劇なので、三人で拮抗してやれればいいのかなと思いつつ、物語上は、僕と赤名がコンビになるから梅ちゃんがちょっと寂しいかな。

梅津 いや、もう僕はそこで不敵に笑っていますから。

陳内 あははは(笑)。どうしてもこれまでの作品のイメージがあるから、僕と梅ちゃんがコンビっぽいけど、今回はそうじゃないというのも新鮮ですね。


――梅津さんは三人芝居についてはいかがですか?

梅津 三人だからどうこうとも思わないですが、確かに普段の会話でも三人というのは難しいとは思います。二人が話していると、もう一人がひとりになりがちですよね。ただ、今回はリアルな会話をするわけではなく、お芝居なので、実はそれほど人数は関係ないのかなとも思っています。むしろ、脚本家の方が大変ですよね。二人の会話で物語が進められるところにもう一人を足す必然性を持たせて、どうやってシーンを立たせていくのかを考えなくてはいけないのですから。


――なるほど。少人数のお芝居ならではの面白さが役者さんにはあるのかなと。

陳内 もちろん、自分が担わなくてはいけないシーンがおのずと増えるので、いい意味でプレッシャーにもなるし、見られている自覚は強くなるとは思います。

梅津 常にステージにいるという状態になりますからね。ただ、マインドとしては出演者が多かろうと少なかろうと変わらずに全力でやっているんですよ、常に。もちろん出演者が多ければ、自分のお芝居で持たせる時間は少なくなるので、そういう意味ではやりがいというのがあるといえるかもしれません。


――先日まで(舞台「あいつが上手で下手が僕で 決戦前夜篇」で)コンビ役で共演をしていたということもあり、お互いによく知っている間柄だと思いますが、共演をしていてどんなところに居心地の良さを感じていますか?

梅津 居心地の良さしか感じてないです(笑)。共演を重ねるにつれて、居心地の良さがどんどん増えていっていて、今ではすごく落ち着ける人です。「あいつが上手で下手が僕で」(以下、「カミシモ」)では、僕がボケで陳さん(陳内)がツッコミという役割はありますが、「ここは面白くできそうだな」と思って僕が何かをすると、どんなことも受け止めてくれる懐の深さを感じていました。至って真面目なシーンにおいても自分が投げた球をきちんと受け止めてくれて、それがまた返ってくるという心地良さもあって。舞台『紅葉鬼』で共演した頃からお互いの呼吸感みたいなものがすごく分かるようになったんですよ。それが安心感につながっていると思いますし、すごく信頼できる方です。

陳内 今の梅ちゃんの話を聞いていて思い出すのが、「カミシモ」の1stシーズンの読み合わせです。みんながそれぞれに(役を作って)持ってきたものを読んだときに、お互いに「もっと面白くできる」と感じたのか、特に会話をしたわけじゃないのに、次の読み合わせでは二人ともギアを三つ上げて読んだんですよ。そのときに「そうだよね! それだよね!」と楽しくて。そうした感覚の一致が、『紅葉鬼』や舞台『BIRTH』、「カミシモ」での呼吸感にも繋がったんだろうなと思います。


――もう一人のキャスト、赤名さんの印象や共演で楽しみにしていることはいかがですか?

陳内 竜乃介は『月の岬』という作品で初共演して大好きになった俳優です。『月の岬』は昭和35年頃を舞台にした作品ですが、竜乃介はまだ若いのにその世界観をしっかりと感じて演じていたので、きっと今回も「昭和」をとてもうまく表現してくれるんだろうと思います。僕とは一回り近く年齢差がありますが、フランクに話してくれて、後輩気質な人でもあると思うので、三人で楽しくやれるんじゃないかなと思っています。今回、彼は公演中に誕生日を迎えるんですよす。

梅津 じゃあ、誕生日は盛大に祝ってあげないとですね。僕は、まだビジュアル撮影のときにご挨拶させていただいただけですが、彼があの役をどう演じるのか今は想像して、楽しみにしています。


――お二人は、仲を深めるために、例えばご飯に行ったり、稽古以外でも交流を取りたいタイプですか?

梅津 僕はしないタイプです。

陳内 僕は結構します。コロナ禍もあったので、最近までなかなか出来ませんでしたが。

梅津 でも、僕、陳さんとはちょいちょい行ってますよね。

陳内 梅ちゃんと仕事をした人の中で、僕は(梅津と)ご飯に行った回数がかなり多い方だと思う。

梅津 めちゃくちゃ多いですよ。もしかしたら、一番多いかも(笑)。そもそも人と一緒にご飯を食べるということ自体が得意ではないんですが、陳さんとなら全然大丈夫なんです。

陳内 じゃあ、今回はみんなでご飯に行けたらいいね。


――ところで、木下さんがこの作品に向けたコメントの中に「現代を生きる人へ向けて『幸せとは何か?』という永遠の問いを投げかけられたらいいな」という言葉がありました。そこで、お二人にとっての「幸せ」を教えてください。

梅津 僕にとっての幸せかぁ…。

陳内 ガパオを食べている時はダメだよ。

梅津 あはは(笑)。それは幸せとまではいかない(笑)。幸せは、やっぱり目的を見つけて、それを成し遂げることだと思います。一日のいろいろなタスクを終えて、「ガパオが食べたい」と自分で注文して、それが届いて、今、ガパオにありつけているというのも、それはそれでそうなんですけど(笑)。目的と障害、それは演劇でも基礎的なことですが、不幸の先に幸せがある。障害を超えて成し遂げる。それが幸せです。


――それはつまり、「舞台でのお芝居」ということでもある?

梅津 そうですね。皆さんの前で披露するというのは、成し遂げられた瞬間でもあります。ただ、そこで終わらないのが演劇の面白さでもあって。一日限りではないし、長い目で見れば、その舞台だけでなく、僕らはまた違う舞台にも出て、どんどん先にいかなければいけない。そこが楽しいのかなと思います。


――改めて公演への意気込みや読者にメッセージをお願いします。

陳内 梅ちゃんと一緒に少人数のお芝居に参加させてもらえるということで胸が躍っています。梅ちゃんが言っていた「先に向かっていく」という言葉を借りるならば、「6006」が「9009」になって、3年後に1990年と令和9年というバージョンでまた続編ができたらいいなと願っています。そんな幸せにたどり着けるように、まずは「6006」を頑張りたいです。

梅津 稽古が始まっていないこの段階で、これは面白いものになるだろうという確信があります。あとは、それをより煮詰めることができるように、稽古を頑張っていけたらと思います。皆さまにはぜひご期待いただいて、博品館の床が抜けるくらいこぞってお越しいただければと思います。

 

取材・文/嶋田真己
スタイリング/小田優士
ヘア&メイク/橋本紗希(LaRME)