朗読劇「アルバート家の令嬢は没落をご所望です」|太田夢莉×陳内将インタビュー

電子版を含めたシリーズ累計発行部数は60万部を突破(2022年8月時点)した、WEB小説「アルバート家の令嬢は没落をご所望です」(原作:さき・KADOKAWA『角川ビーンズ文庫』)が、中屋敷法仁の演出で朗読劇化。9/3(土)から埼玉・ところざわサクラタウン ジャパンパビリオン ホールAにて上演される。自分がヒロインをいじめ抜く“乙女ゲームの悪役令嬢”であることを思い出したアルバート公爵家の令嬢・メアリは、悪役街道を突き進むと意気込むものの、ゲームのヒロインからの好感度が高く、嫌がらせをしても全て好意的に取られてしまう……。見た目は完璧なのに中身が残念なお嬢様メアリと、美形だけど口が悪い無礼な従者アディのドタバタラブコメディ。このふたりを演じるのは太田夢莉と陳内将。今回で朗読劇二度目の共演となるふたりのロングインタビューをお届けする。

──本作は、転生×没落がテーマの作品ですが、原作を読まれた感想はいかがでしたか?

太田 「新しいな」と思いました。“転生もの”って今すごく流行っていて、普通なら転生したらいい方向に行きたいと思うのに、「前世よりも没落してみよう」という発想が新しいなって。だから、「転生して没落の人生を選ぶ」という始まりからすごく惹かれました。

陳内 そうだね。新しいという意味では、転生してすぐに(転生して没落を選ぶという)その事実を身近な人に言っちゃうんだ!?ってところもすごいですよね。普通ならそういうのを隠して、心の中で、「俺の人生なんか30手前になっても全然鳴かず飛ばずで……」みたいな(笑)、物語ってそういうところから始まるのに、すぐ言っちゃうのも斬新でした。しかも、ゲーム以上に没落しようとしているのに、お嬢じゃない方の主人公(アリシア)は、ちゃんとハッピーエンドの方に向かっている。やっぱり人間ってそうだよなぁ……歯車がちょっとずれてもそう道は逸れないんだよなぁ……みたいな、そんな楽しさがある作品だなと思いながら読みました。

太田 かっこいいですね、今。歯車がちょっとずれても……って話。

陳内 いやいやいや、ちょっと勘弁してよ。早速イジってるでしょ(笑)。

──おふたりで話している様子や撮影している雰囲気を拝見していると、すでに息が合っていると感じました。メリアとアディの掛け合いも見どころのひとつになりそうですが、問題なさそうですね(笑)。

陳内 もうギャンギャンに掛け合いできたらなと思ってます(笑)。

──今回が2回目の共演ということで、どんな感じで演じていこうというイメージはできていますか?

太田 もうひたすらついていこうと思います。さっき別の取材でも陳内さんがおっしゃっていたのですが、メアリがけっこうこのまま突っ走っていくところを、アディが引き止めたりだとか、正しい方向に正したりしてくれる役割なので、私は、何も考えずに突っ走らせていただこうと思っています(笑)。

陳内 すごく楽しくなるイメージは今からできています。稽古も、前回共演した時は一日で6時間くらいしかできなかったんですけど、今回はもうちょっとできそうですし、ディスカッションの場もありそうなので、みんなで作り上げていきたいです。(高橋)健介くんもいるし、中屋敷さんだし、普通の朗読劇に収まらないと思います(笑)。

──おふたりが演じるのは、悪役令嬢として前向きに没落を目指す、才色兼備な大貴族の令嬢のメアリと、美形だが無礼で口が悪いメアリの従者、アディ。お互いの役について、どんな印象を持たれましたか?

太田 アディは、一般常識を備えているのに、急にワンコみたいになったりするところとか。そのギャップが……ワンコ系の人が好きなので、「可愛い!」って純粋に思いました。メアリが途中、アディの大切さに気づくところがあるんですけど、「確かにこんな存在が近くにいたらいいよな……私にもいてほしいな」って思いました。お世話もしてくれるし、多分、心もすごく支えてくれていると思うので、そんな存在が欲しいですね……。

陳内 自分が癒されたいって話になってるね(笑)。実は違う世界から来たんだよって1話で言われても受け入れられたのは、それまでとは違うメアリに惹かれたからなのかなとか思ったりもして。メアリが0歳の頃から従者として仕えて、10数年を経ていきなりキャラ変したのに、なんでそれを受け入れられるんだろう……というところもありますが(笑)、でも、令嬢として育ちながらも、中身は日本の庶民的な女の子で愛嬌の良さも持ち合わせていて、なんかそういうところに徐々に惹かれてるんだろうな……って。あと、コロッケが食べたくなりました(笑)。

太田 コロッケ食べたくなりますよね(笑)。

──朗読劇は、普通のお芝居とはやっぱり違うと思いますが、朗読劇の難しさや面白さはどんなところにあると感じますか?

太田 台本を持っているから安心できると思いきや、台本を持っているからこそのプレッシャーがあって。映像があれば違うのかもしれないですけど、朗読劇は基本「声」しかないので、本当にシンプルなことで1時間半や2時間、お客様に楽しんでいただくっていうのはすごく緊張感がありますね。でも、原始的であり、一番シンプルにお客様に伝わるので、実力が試されるし、役者としても鍛えられます。

陳内 演出が中屋敷さんだから、みなさんの知っている、座って読むスタイルの朗読劇には収まらないだろうなって。でも、中屋敷さんが作られる朗読劇に全力で乗っかることで僕自身も楽しめるだろうし、今回はそれを求められているだろうし。もちろん、読み手に徹する朗読劇も好きだし、それぞれの面白さがあると思っています。ただ今回は、役者に全力で振り切るタイプの朗読劇になるだろうから、みんなで中屋敷節を届けられたらなと思ってます。

──ほかにはない朗読劇になりそうです。では次の質問を。物語の舞台は「乙女ゲーム」の世界で、メアリが“開き直って”悪役街道を突き進むものの、いやがらせをしてもヒロインから好意的にとられてしまう…という内容ですが、これまでで、開き直ったことで事態が好転した経験はありますか?

太田 私は、「芝居」です。ずっとお芝居に対して苦手意識があって、やってみてもやっぱり怒られるし、怒られていることも恥ずかしいし。できない自分に対して劣等感もあったし、「なんでできないんだろう」って落ち込むこともありました。でも、お芝居の仕事を始めて、「だって1年目だもん。上手くできなくてもしかたないよ」って開き直って、怒られるのも当たり前だし、全部しょうがないと開き直ったら、稽古で言われたことにすごく落ち込むこともなくなって、いい意味で深く考えずにやれるようになったので、好転したなって思います。まだ心からお芝居が楽しいと思うことはできていませんが、できなかったことができるようになっていくのが楽しいし、もっとうまくなりたいです。もっと上に行きたい、できるようになりたいっていう意識が強いですね。精一杯楽しめるほど自分が芝居に対して余裕がないので、いつかは大好きと言えるぐらい楽しめるようになりたいなと思ってます。

陳内 僕は養成所の時に、自分としては、このオーディションは受けても受からないっていうか、きっと自分では受けないんだろうなみたいに思ってたオーディションがあって。教務の方から、「受けてみなよ」みたいなことを言われたけど、タイミング的なものもあって、躊躇してたんです。同時期、事務所に所属するためのオーディションみたいなのが別であって、それともタイミングがかぶってたから、今回は事務所オーディションを優先したいっていうような話をしたんですけど、「いや、もうなんとしても、もう受けるだけでいいからオーディションを受けてくれ」って言われて、その事務所オーディションみたいなのを後回しにしたんですよ。結果、それが転じて、僕、今の事務所にいます。あの時、別の事務所のオーディションを受けていたら違う人生だったんですよね。その時に受かったのが、D-BOYSがやっていた舞台のアンサンブルのオーディションだったんで、あの時自分の気持ちを貫いていたら、多分、今の事務所じゃなかったかもしれないし、役者も続けてないかもしれないしと思うと、うん……開き直って、舞台の方を受けて良かったな、と。

──人生ってどっちを取捨選択していくか、あんまりこうと決めない方がうまくいくことって多いですよね。

太田 そうですね。そればっかりになりすぎると周りが見えないので、芝居に限らず、決めつけすぎないように気をつけたいですね。

──ひとつ作品以外の質問になりますが、ローソンチケットの取材ということで、何か『ローソン』にまつわるエピソードがあれば教えていただけますか?

陳内 このシーズン、本当に感謝したいのが、メガサイズのアイスコーヒー。いろんなコンビニさんがありますが、ローソンさんのアイスコーヒーが一番デカいんですよ。去年の夏、映画の撮影中、毎朝買わせてもらっていたのですが、あれでたくさん水分をいただいていました(笑)。メガサイズのアイスコーヒーに、コーヒーフレッシュを2個ぐらい入れて飲むのが最高です。

太田 私は、以前出演していた舞台の時、昼と夜の間に食べる物として、『からあげクン レッド』と『生ガトーショコラ』を買っておいて、舞台本番が終わったら食べるっていうルーティンを決まりにしていました。長い公演の舞台だったので、毎公演それを楽しみに生きていました。特に、『生ガトーショコラ』はグルテンフリーで、体に優しい点もいいなと思って、かなり重宝しています。

  『からあげクン レッド』 いいよね。僕、まだあります。プライベートでドラゴンクエストウォークをやっているんですけど、ローソンとコラボをしていて、(主人公が)ローソンの制服を着てやってます(笑)。

──素敵なエピソードをありがとうございます! 最後に、朗読劇を楽しみにしている方にメッセージをお願いいたします。

太田 今までと違った朗読劇になっていると思うので、目でも耳でも楽しんでいただけたらいいなと思っています。そして、この朗読劇が大反響に終わり、アニメ化がされたらいいな……と思っていたりもするので、みなさんぜひ応援のほどよろしくお願いします。そして劇場に足を運んでくださったら嬉しいです。

 昨今落ち込むこととかもあると思いますが、そして、うちのお嬢は没落したがっておりますけれども(笑)。僕は従者としてお嬢が没落しないように頑張りますし、お客様の気持ちが没落しそうになった時にも、我々が笑顔にできるような作品になればいいなと思っておりますので、ぜひ笑顔になりに来てください。

インタビュー・文/佐藤則子
撮影:篠塚ようこ