タクフェス第12弾『夕-ゆう-』|宅間孝行 インタビュー

一番自信がない作品が
一番くらい人気のある作品に

宅間孝行が主宰する演劇プロジェクト・タクフェスの第12弾公演が決定。宅間作品の中でも人気の高い、好景気に沸く1980年代の長崎を舞台に描く、甘酸っぱい青春ラブストーリー『夕-ゆう-』を再演する。

「初演は2003年で、当時はドラマに出つつ、年3本くらいのペースで次から次へと追われるように新作を書いていました。基本的に、台本を書き終えて稽古初日を迎えたいタイプなんですが、この作品は初日にできていたのは最初の場面だけ。稽古をしながら書き進めていって、自分としては手応えのないまま走り出した作品でした。だから、こういう形の作品も受け入れてもらえるんだ、と学んだ作品でもあります。登場人物が愛されて、コメディの部分がしっかりと機能していれば、こうやって何度も再演を望まれるような愛される作品になる。一番自信がない作品だったのに、一番くらい人気のある作品になりました(笑)」

本作の再演は10年ぶり。なぜ今、このタイミングでの再演になったのか、宅間はその胸中をこのように語る。

「どの戯曲に対しても残していきたいという気持ちはありますし、特に『夕-ゆう-』のリクエストは多かったんですよ。ちょうど80年代のカルチャーが再注目されていて若干のブームになっているので、今なら若い人たちにも訴求できるんじゃないかな」

キャストには産後初舞台となる矢島舞美、Leadの古屋敬多ら、新鮮な面々が揃った。

「この話が決まってから、ドラマの助監督とかウチのスタッフとか『実は舞美ちゃんのファンで…』って聞くことが多くて。矢島さんは女性からの好感度も高いですよね。夕という役にはそういう要素がとても必要だと思うので、稽古で会うのが楽しみです。古屋くんは非常にナイスガイで好青年。昔、僕がやっていた元弥役を古屋くんがやってくれるわけなので、“身体つくっておいてね”と伝えていて、頑張ってくれているみたいです。僕と比べられるだろうけど、新しい像を2人で力を合わせてつくっていきたいです」

人気作を新たなキャストで紡ぐからこそ、演出などにも新たな要素を組み込んでいく。

「僕は切ない作品を作る時に、よくテーマ曲を1曲選ぶんですが、この作品は小田和正さんの『言葉にできない』なんです。でも、この曲自体が泣ける定番ソングみたいになってしまって、10年前の再演には使わなかったんです。でも、今回は井手麻理子さんにお願いして、カバーを使うことにしました。なぜこれを10年前に思いつかなかったのか(笑)。それ以外にもマイナーチェンジがいくつもありますし、全ての役、全員初挑戦です。再演を重ねた作品ではありますが、まったく新しい、生まれ変わった『夕-ゆう-』になるはず。ぜひ楽しんでください」

インタビュー&文/宮崎新之

※構成/月刊ローチケ編集部 10月15日号より転載

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【プロフィール】

宅間孝行
■タクマ タカユキ
タクフェス全作品の脚本・演出・出演。現在放送中のABCテレビ日曜22時〜「素晴らしき哉、先生!」の全話脚本、演出務めているなど幅広く活躍。