KERA CROSS 第六弾『消失』|藤井隆 インタビュー

藤井隆がKERA CROSSに初出演
「KERAさんの物語はオリジナリティの塊」

「演出の河原(雅彦)さんの言葉をお借りしますが、『消失』はKERAさんが、KERAさんのもとに集まった劇団の皆さんと稽古をしながら書き進めていった戯曲です。当て書きに次ぐ当て書きで、その場で起きた面白かったことも取り入れられたりもして出来た。それを別のチームでやるなんてとんでもなく大変だと思います。でもどうやら河原さんはこのメンバーで『よし、いける』と思ってくださっている。僕はその言葉を信じて、みんなで力を合わせて稽古します。本当に楽しみです」

そう語るのは、KERA CROSS 第六弾『消失』に出演する藤井隆。「KERA CROSS」とは、劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の戯曲を、才気溢れる演出家たちが異なる味わいで新たに創り上げる連続上演シリーズ。
新シーズン第一弾となる今回は、KERAが主宰する劇団ナイロン100℃の代表作のひとつ『消失』が上演される。2004年に初演、2015年に再演され、2017・2018・2022年には韓国版(イ・ウンヨン演出)も上演された人気作だ。演出は、KERA戯曲は3度目の挑戦、KERA CROSSには2度目の参加となる河原雅彦が手がける。

「濃密で濃いし、膨大な戯曲。自分はこれとどうやって対峙するんだろうと考えて怖くなっちゃったりもしました。だけど河原さんに話を聞いたら、どうやら自由にやるみたいなんです。『せっかく新しいメンバーでやるんだから』って。それは決してなにかを軽んじるということではなく、『押しつぶされるのではなく新しい気持ちでやろう』ということだと思っています。河原さんがそういう気持ちなのであれば、我々はついていくだけです」

藤井がKERA戯曲を演じるのは初めて。しかし客席で観てきたそう。

「KERAさんの書かれる物語は、いつの時代にもフィットしながらフィットしていない、というか。オリジナリティの塊だなって思います。僕は観劇するとなんだか自分の時間とは違うところにいるみたいになって、ボーっとしちゃう。それをつくる側は大変だと思うんですけど、観客としては3時間とか4時間の夢を見せていただいたような感覚になります」

そんなKERA戯曲で藤井が初めて演じる役は、入野自由が演じる弟と二人で暮らす47歳の兄。

「台詞の中に『世の中と折り合いのつかなそうな二人』という言葉があるのですが、それは絶対に大事にしたいなと思っています。ちょっと世の中からは外れたところにいる二人で、しかもその大きな理由はお兄さんにもあるんだろうなという雰囲気を出せたらいいなって」

演出の河原とは、愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』(2019年)ぶりのタッグ。演出家
としての印象を尋ねると「とっても細やかでやさしいですよ」と笑顔を見せた。

「稽古で見てくださっていることをすごく感じました。時間がかかるときは待ってくださるし、良いときは褒めてくださる方です。僕はなにくそタイプというよりは褒められて伸びるタイプなので、おかげでどんどんいけました」

ここ15年ほど舞台出演を欠かさない藤井。舞台の魅力を尋ねると素敵な答えが返ってきた。

「僕は、仕事は呼んでもらってなんぼだと思っているところがあって、だから呼んでもらえることが嬉しいし好きだしすごく大きいんです。その中で舞台は、今ちょっとずつちょっとずつ現場に自分を知ってくださっている方、良いとしてくれる方がいてくださるようになっている。こんな心強いことはないです。そしてそういう人たちがいる場所は、嬉しい場所でもあります」

インタビュー・文/中川實穗
Photo/村上宗一郎
スタイリスト/奥田ひろ子
ヘアメイク/柳美保

※構成/月刊ローチケ編集部 11月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】

藤井隆
■フジイ タカシ
芸人としてデビューし、現在はタレント、俳優、司会者と幅広く活躍。人気長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」の司会を務める。