
2025年7月、舞台「Persona3 Lunation the Act」として、名作RPG『ペルソナ3』が新たな形で舞台に蘇る。これまで歌唱劇「Masquerade」シリーズとして展開されてきた舞台版が、今作ではストレートプレイという新たなアプローチで再“覚醒”。キャストも一新され、“もう一つの舞台『ペルソナ3』”が始動する。
今回、ボクシング部主将の真田明彦を演じるのは前川優希。作品との出会いや、キャラクターへの思いを語ってもらった。
――まずは出演のお話を聞いた際の心境を教えてください。
「ペルソナ3」自体は微妙に世代ではないんですが、実は「ペルソナ5」を知人のすすめでプレイしていて。それがめちゃくちゃ楽しくて、家に帰ってはすぐプレイするというくらいやっていたんですよ。そんな中、本作のお話をいただいて。自分がもともとプレイしていたゲームシリーズの舞台化に出演する機会ってなかなかないじゃないですか。だから、本当に嬉しかったです。
――ではもともと「ペルソナ」シリーズはご存知だったのですね。
僕はテレビっ子だったので、『Persona4 the ANIMATION』(「ペルソナ4」のアニメ)は観ていました。その前に放送されていた『ペルソナ 〜トリニティ・ソウル〜』(「ペルソナ3」を原案としたアニメ)は観ていなかったので、どういう話なんだろう? とずっと気になっていて。今作への出演が決まってから、「ペルソナ3」を知る周りの人たちには「けっこう暗めのストーリーだよ」とだけ言われて、「そうなの!?」と(笑)。ソフトは購入済みですがまだプレイできていないので、ここからやっていくのが楽しみです。
――前川さんが演じる真田は、拳で戦う無敗のボクシング部主将であり成績も優秀という人物です。演じるうえで共感できる部分や、挑戦になりそうな部分はどんなところでしょうか。
共通点で言うとあまりないように感じてしまうところが多くて。真面目で正義に篤いという部分は、僕自身としてはあまりないかもなと思っています。何かを守るために強さを身につけるという経験もないですし、ボクシングもやってきてないですし(苦笑)。そこは、近づけていくためにかなり努力が必要な部分かなと。
――配役解禁時には、「意外」というファンの声も多かったように思います。ファンの反響を受けていかがでしたか。
みんなザワッとしてましたよね(笑)。それは感じていました。僕はどちらかというと細身のタイプですし…。今日ビジュアル撮影で初めて真田くんの姿になったのですが、あまり経験したことがない役なのでドキドキしました。
――役作りではお芝居だけでなく、体作りも大事になってきそうですね。
いやぁ、そうなんですよ。やっぱり筋トレしなきゃ…ですよね。普段、全然筋トレしないんですよ(苦笑)。周りには筋トレ好きな方が多くて、最近の現場でも筋トレしている人たちがいるんです。そこに混ざってみようかなと思いつつ、いやいいか…と(笑)。いつか仕事が絡んできたらやろうかなと、どんどん筋トレを先送りにしていたんです。でもついに来たので、これはやらないわけにはいかないぞ、という感じですね。他の仕事との兼ね合いもあるので、本格的に筋肉をつけるのは稽古に入ってからになるのかな。1ヶ月ちょっとで間に合うのかな…という不安もありますが、頑張りたいと思います。
―――本作もそうですが、ゲーム原作舞台に出演する機会も多いかと思います。ゲーム原作舞台の醍醐味や難しさはどんなところに感じていますか。
多くのファンに愛されるっていうことは、それだけの理由がある。その要素を排除せず、大切にしようという部分は意識していますね。原作ファンのみなさんが、その作品やキャラクターに対して「こういうところが好きなんだな」と感じる要素を大切にしたいと思っています。でも同時に、それがゲーム原作作品の難しさでもあるなと感じていて。そこはすごく意識しながら演じていることが多いですね。
――ファンから愛されている部分を知る、というのは具体的にはどう探っているのでしょうか。
それはもう、自分でめちゃくちゃ原作ゲームをプレイするしかないなと思っています。原作ファンのみなさんと同じ目線で作品に触れて、「このキャラのここが好きなんだな」と感じ取る。そうやって愛されている要素を探していく感覚ですね。今作に関してはこれから知っていくことになりますが、例えば真田くんの真面目さや熱さにプレイ中にグッときたら、そこを大切に演じよう、といった感じです。
――ペルソナは心の底に潜む「もう一人の自分」が実体化させる特殊能力です。前川さんが発現させるとしたらどんなペルソナになりそうですか?
いろんなことを考えながら日々生きているので、いろんなことができるキャラクターなんじゃないかなとは思います。サポート系なんじゃないかな。回復ができて、さして強いわけじゃないけど攻撃もできて。「こいつがいてくれたらいいよね」って思ってもらえるような立ち回りをするんじゃないかな。
――不得手なことがなくて、なんでもこなせるという印象があるので、すごく想像できます。
いやいやいや、お恥ずかしい限りです。でも、たしかにできないことってあんまりないかもしれないですね。自分で言うのはあれですが(笑)。一点突破できる武器がある仲間がいたら、それをサポートしたくなるというか。普段もどちらかというと支えたいタイプなので、ペルソナも万能型のサポーターが発現する気がします。
――舞台デビューから来年で10年。学生時代から演劇を学び、コンスタントに舞台に立ち続けている前川さんが、心の底から舞台の醍醐味を感じる瞬間というのはどういう瞬間でしょうか。
舞台って熱いなって思う瞬間は何度かありましたね。本番もですが、どちらかというと稽古中に感じるかもしれないです。みんなでああでもないこうでもないと話し合っている瞬間は、一緒に舞台を作り上げているぞという感じがして、めちゃくちゃ嬉しいし楽しい時間だなと思います。どの作品でも、そういう瞬間はすごくワクワクしますし、何度やってもやめられないというか。そこにワクワクしてしまう生き物なんだな、と思いますね。
――その感覚というのは、役者の立場であっても、演出家の立場であっても感じている?
そうですね。ちょっとベクトルの違いはある気がしますが、稽古ってこういうことか、と思える瞬間が好きですし、舞台を続けていく源泉にもなっていると思います。
――ありがとうございます。では最後に、作品を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。
こうして新たな挑戦、新たなお仕事をお届けできるということを嬉しく思います。「ペルソナ3」は2度目の舞台化となりますが、前回シリーズとはまた違った仕組みで上演されると思うので、そういったところを楽しみにしていただきつつ、新しい演劇の形を楽しんでいただけたらいいなと思っております。ぜひ楽しみにしていてください! 前川優希でした!
取材・文:双海しお