舞台『劇場版モノノ怪 前日譚~二首女~』|新木宏典 インタビュー

劇場版との共鳴。語られざる前日譚の目撃者に

新木宏典が薬売り役として存在感を示す舞台『モノノ怪』。シリーズ最新作は、舞台『劇場版モノノ怪 前日譚~二首女~』のタイトルにあるように、劇場版アニメ三部作の前日譚を舞台オリジナルエピソードで描く。新木は過去2作品とは似て非なる別の薬売り、という難役に挑む。

「劇場版の世界観は規模が大きかったので、舞台化するにしてもハードルが高いなと思っていたのですが、前日譚と聞いて、その手があったか!と。そして何より、薬売りって複数人いるんだ、と驚きましたよね(笑)。劇場版で薬売りを演じる神谷浩史さんとお話する機会があって。神谷さんも中村健治総監督に細かく質問されたそうです。薬売りの人数や、その数字が持つ意味、その中で今回の薬売りは何人目の存在なのか。それらを汲んで神谷さんが薬売りを演じたと聞いて、設定としてそれだけ広がりを持つ作品であることに、改めて驚かされました」

シリーズ3作目ながら、新たな薬売りを演じることに対し、「あくまで劇場版の薬売りをゼロから作っていく感覚」だと穏やかに語る。

「これまでの2作品とは違う作品をやる認識で臨もうと思っています。そう考えると、役作りの難しさというのは、他の原作のある作品と変わらないのかな。過去2作品の薬売りは“静”を軸としていました。今度の薬売りは、ビジュアル撮影でお会いした中村総監督が“動”の薬売りだとお話されていて、そこが大きな違いになりそうだなと。劇場版を観て、薬売りにテレビシリーズ版では感じなかった陽気さや軽やかさを感じたので、そこをしっかり演じきりたいです。とはいえ、薬売りという役は待つしかないんですよね。薬売り以外の登場人物が物語を進めて、そのことで薬売りが斬るべきモノノ怪が現れ、最後に薬売りが退魔の剣を振るう。薬売りは舞台上でブレずに存在しながら、しっかりと立っていないといけない。そこは薬売りを演じる上で重要なことだと思うので、今回も変わらないのかな。ただ、劇場版の薬売りは“動”なので、軸のしなやかさや軸の持ち方は変わるんじゃないのかなと考えています。劇場版も完結前で物語が進んでいる最中なので、ゴールがない。逆算もしづらいので、どういった手がかりから役を手繰り寄せていくか。難しいところだなと思っています」

1作目・2作目と、登場人物が変わりながらも、多くのキャストが続投するのも本作の特徴。新木はこれを「劇団のよう」と表現する。

「カンパニーの雰囲気としては劇団に近いものがありますが、今回は旅一座の話なので、よりリアリティある劇団のイメージを皆で共有できるかどうかが大切になってくる。経験してきたキャリアも様々なので、今回はこの点がとくに大変そう。そして、薬売りは、僕以外の登場人物が作りあげた景色を観る側。ここが舞台『モノノ怪』の特色だなと思います。僕は作品の顔として存在しているけれど、物語を作っているのは僕以外の人々で、彼らが作り出す物語が面白くならないと成立しないんです」

新木は薬売りを「人として成長しなきゃいけない役」と位置づけ、三度目の成長を誓う。

「役者として、ブッダ的存在になり得る役というか。すべてを受け入れられる役者にならないとできない役。皆がどれだけ失敗しようが、僕が結末に持っていけば成立するように、そこに居続ける覚悟を持たないといけない。悟りを開いて、何があっても動揺しない存在でいないといけないなって毎回思いますね。稽古期間中は、ずっと薬売りについて考えているし、悩んでいそうな人がいたら時間を作って話を聞いたり。結果、寝る時間がなくなります(笑)」

インタビュー&文/双海しお
Photo/篠塚ようこ
衣装協力店/AT-DIRTY

【プチ質問】Q:気分転換やリフレッシュしたいときにすることは?
A:ストレスとなっている問題を解決しない限り、そのストレスを発散できない性格なので、解決するまで向き合います(笑)。ただ、向き合い続けると気力が減ってしまうので、そうしたら気分転換の効果があるとされている音楽を聴いたり、運動したり。リフレッシュというより、問題に向き合うための準備として取り入れています。

※構成/月刊ローチケ編集部 4月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
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【プロフィール】

新木宏典
■アラキ ヒロフミ
数多くの舞台作品に出演。近作はミュージカル『Fate/Zero』~A Hero of Justice~など。