LIVEミュージカル演劇『チャージマン研』佐藤昇・村上幸平 インタビュー

1970年代に放送された懐かしのヒーローアニメ『チャージマン研』。主人公の泉研が光の力で地球の味方・チャージマン研に変身し、地球侵略を目論むジュラル星人と戦う姿が全65話で描き上げられた。なぜ研が変身し戦うことになったのか一切明かされないなど視聴者を置いてけぼりにする物語展開をはじめ、ツッコミどころ満載の本作は“逆に新しい”と若者からの支持を得てこの秋、まさかの演劇化。原作アニメでジュラルの魔王を演じた声優・佐藤昇はこの40年を経ての人気沸騰に驚いたという。


佐藤
「『チャージマン研』のアニメ映像に生アフレコとオーケストラ演奏を乗せるイベントがこれまでに3回開催されていて、僕はVol.2と3の2回、参加させていただきました。若い方たちの間で今この作品が人気になっているというのを聞いて最初は驚きましたが、イベントも続いてもしかしたら舞台化もいつかあるのかなとは思っていました。動画サイトでアニメが話題にならなかったらなかった話でしょうから、すごいことですよね」


今回、舞台版で魔王を演じる村上幸平は、オファーを受けて作品を知ったそうだ。

村上「このお話をいただいたとき、僕はまだ『チャー研』を知らなかったんです。魔王でオファーをいただいていると聞いたので、【チャージマン研 魔王】で画像検索したんですが、“これか…えっ、これ!?”と二度見して…マジか、となりましたね(笑)。なぜ今この作品をやるんだろうと調べてみたらすごくおもしろそうだったので、ぜひ!とお引き受けしました」放送当時劇団に所属はしていたが、まだ演技経験はほとんどなかった佐藤が劇団の主催者に「ちょっと勉強してこいと言われて、訳もわからずやった」というこの作品。魔王の演技プランについても、佐藤自らかなり自由に作っていったのだという。

佐藤「魔王の声は、顔を見て合う声を探りながら作るという感じでかなり自由にやらせてもらいましたね。ディレクターからも特に指示はなかったです。僕が思うに魔王って、本来は悪い人じゃないんですよ。ジュラル星人のために地球に来たって…自分の民族を守るためというのは、人間と同じじゃないですか」

村上「確かにそうですね。でも、そもそもなんで魔王なんですかね? “ジュラルの王様”でも良さそうなところをあえて魔王の名を背負っているんだとしたらすごいですよね(笑)」
すっかり原作ファンになった様子の村上は、佐藤の貴重な話に大興奮。次々と質問があふれ出した。

村上「当時アフレコされているとき、絵は見ながら入れていたんですか?」

佐藤「真っ白の画面に入れろと言われたことは何度もあります。毎日放送されていたので、絵が追い付かなかったんじゃないかな」

村上「現場では、“この作品は普通とは違うぞ”っていう感覚はあったんですか?」

佐藤「アフレコ自体が初めてくらいの時期だったので、そういう雰囲気は感じなかったですね。1本通しではなく、ところどころポンポン撮っていった感じだったので、ドラマの流れもわからない状態で“やれ!”って言われやらされたっていうか…(笑)。そういう時代でした」

村上「このアニメ変だぞっていう違和感はなかったんですか?」

佐藤「今、冷静になって観るとこんなバカげたアニメはないんじゃないのと思いました(笑)。当時は普通にこういうものだと思ってやってたんですけどね」こうした一筋縄ではいかない原作を最大限にリスペクトした舞台版は、なんと主人公を演じる役者が4人いるほか、ロビーに飛び出た役者を観客が追いかけて鑑賞する場面もあるなど、超設定・超展開が盛りだくさんだ。

佐藤「きっと何かおもしろい演出があるんでしょうね(笑)。新宿FACEはプロレスなどもやっているところで、真ん中にステージがあったりと何でもできそうな空間ですし。いやぁ、どうなるんでしょうね〜」

村上「ただ、『チャー研』って本人は凄く真面目にやっているのがおもしろい、みたいなところがあるじゃないですか。そのテイストをどう表現していくのか今、考えています。笑かしにいくのか、笑われにいくのか。ともあれこれまでの舞台ではできなかったことができたらいいなと思いますね。ミュージカル要素もあるらしいですが、魔王はどんな歌を歌うのかも気になりますし。“テッ、テテテッ”っていうあのBGMを歌ってもいいんですけど(笑)」

佐藤「魔王の歌、ウケるかもしれないですね! 村上さんが魔王をどうおやりになるのか、観るのがすごく楽しみです。自由な発想でその創造性を反映していただければ、きっと楽しいものになると思います。アニメよりもさらに突き抜けたものを期待しています」今回の舞台版は、原作アニメのストーリーをちりばめたオムニバス形式になるという。何が舞台化されるか楽しみだというふたりに、印象に残っているエピソードを尋ねてみた。

佐藤「オーケストラで取り上げてくださった話は、印象に残るものが多いですよね。『頭の中にダイナマイト』が流行ってましたけど、ああいうのがウケてるんですね」

村上「“ボルガ博士、お許しください!”っていうやつですよね」

佐藤「ありえないことをやっちゃうっていうのがいいですよね。まっとうに収めようとした作り方をしていない、自由自在感がいいんじゃないですか」

村上「僕はやっぱり最終話ですね。『勝利!チャージマン研』っていう、タイトルでいきなりネタバレしちゃってるところも好きです。でも、アニメだといきなりビビビ~ッとされて、魔王もアーッ!ボワーン!ってやられて終わりじゃないですか。もし舞台版で最終決戦があるならば、ちゃんとしてほしいです(笑)」

佐藤「最後は大芝居できる演出にしてほしいですよね」

村上「ちゃんと研と戦いたいですね。でも、やると見せかけてやっぱり秒殺、でもいいですけど。ただ、あの断末魔はやらないとファンの皆さんは納得しないと思いますので…もしよろしければ、最後の魔王の断末魔を聴かせていただけないでしょうか?」

佐藤「いいですよ。(立ち上がって)ウワアアアアアアアーッ!(6秒間にわたって叫ぶ)」

村上「すごい! ありがとうございます!! 魔王の断末魔はかなり長いんですね」

佐藤「そうなんです。もしもここが舞台化されるときは、ぜひセリフを長く書いておいてもらってください(笑)」

 

取材・文/髙橋裕美